First Action Interview Pilot Program

米国特許庁が最初の拒絶理由通知前に審査官にインタビュー(面談)する機会を与えるファーストアクションインタビュー試験プログラム(First Action Interview Pilot Program)を2008年11月1日まで実施しています。

審査官によるサーチ結果をもとに出願人と審査官が審査の初期段階で対話し、潜在する拒絶の理由を解消する機会を設けることで、審査を促進し、可能ならば早期に特許査定を出すことをねらいとしています。

[推奨]
 早期権利化を求めており、かつ、審査官とのインタビューも実施したい場合は本試験プログラムの利用をお勧めしますが、そうでない場合は、応答期間が短い、インタビューが不成功に終わった場合、コストが余分にかかるといったデメリットがあるため、本プログラムの利用はあまり勧められません。本プログラムの利用にあたっては、下記のメリットとデメリットをご勘案されることをお勧めします。

[ファーストアクションインタビューの流れ]

1.出願人は本試験プログラムの適用が可能であるとの通知を受理する。

 以下の条件に当てはまる出願のみが試験プログラムの対象となっています。
(1)2005年9月1日以降の出願で、最初の拒絶理由通知を受けておらず、クラス709(コンピュータ、デジタルプロセッシングシステム、マルチ・コンピュータ・データ転送)に属するもの、または
(2)2006年11月1日以降の出願で、最初の拒絶理由通知を受けておらず、クラス707(データプロセッシング、データベース、ファイル管理またはデータ構造)に属するもの

2.ファーストアクションインタビューをリクエストする。

 出願人がFirst Action Interviewをリクエストしなかった場合は、通常の審査の流れに入ります(最初のオフィスアクションの通知を待つことになります)。

3.インタビュー前のコミュニケーション(Pre-Interview Communication)が届く。

 審査官が先行技術をサーチして、潜在的な拒絶の理由を通知します。(PCTの「見解書付きサーチレポート」のような形式のものです。)

4.出願人は「インタビュー前のコミュニケーション」に対して、1箇月以内(延長なし)にインタビューの実施/不実施のリクエストをする。

5-1.インタビューを実施しない旨のリクエストをした場合、すぐにファーストアクションインタビュー・オフィスアクション(1回目のオフィスアクションとみなされる)が通知され、1箇月以内(1箇月だけ延長可能)に応答しなければならない。

 インタビューの実施を見送る場合でも、インタビューを実施しない旨のリクエストを庁に提出しなければ、出願が放棄されたことになりますので、ご注意ください。

5-2.インタビューを実施する旨のリクエストをした場合、審査官とのインタビューが開かれる。

 出願人(または代理人)は請求項の補正書案/意見書案を準備してインタビューに臨みます。複数の補正書案/複数の意見書案は提示することは認められません。

6-1.インタビューの結果、特許性について出願人と審査官の間で合意に達した場合、インタビューのサマリーが作られ、補正書/意見書がエンターされた上で、許可通知が出る。

6-2.インタビューの結果、特許性について合意に達しなかった場合、インタビューのサマリーとともにファーストアクションインタビュー・オフィスアクション(1回目のオフィスアクションとみなされる)が通知され、1箇月以内(1箇月だけ延長可能)に応答しなければならない。

[メリット]

 現行の規則では、出願人は最初の拒絶理由通知の前に審査官とのインタビューを求めることができますが、インタビューの求めに応じるかどうかは審査官の裁量であり、出願人が先行技術に対する特許性を示すことが求められます。本試験プログラムでは、審査官が先行技術調査をして拒絶の理由を示し、出願人にインタビューの機会を与えます。したがって、以下のメリットがあるといえます。

(1)出願人は先行技術調査が不要である。
(2)インタビューの機会が保証されている。
(3)インタビューの結果、審査官と特許性について合意できれば、早期に権利化される。

[デメリット]

(1)応答期間が1箇月(延長は1箇月限り)と短い。

 インタビューの結果、特許性について合意に達しなかった場合、ファーストアクションインタビュー・オフィスアクションが出され、1箇月以内に書面で応答しなければならならず、延長は1箇月しか認められません。
 通常のオフィスアクションでは、3箇月(延長3箇月可能)の応答期間があるのに比べて、応答期間はきわめて短いです。
 ファーストアクションインタビューをリクエストしてしまうと、サーチ結果だけをもらっておしまいにすることはできず、インタビューを実際にはしなかった場合であっても、ファーストアクションインタビュー・オフィスアクションを受け取りますので、応答期間はやはり1箇月(延長1箇月可能)に限られてしまいます。

(2)インタビューの結果、特許査定にならなかった場合、費用が余計にかかる。

 現地代理人費用をかけてインタビューをしても、審査官と特許性に関して合意が得られなかった場合、ファーストアクションインタビュー・オフィスアクションが出され、通常のオフィスアクションのように少なくとも書面で応答しなければならないので、費用が二重にかかります。

(3)インタビューの結果、特許査定にならなかった場合、余計なプロセキューションヒストリーを作ってしまう。

 インタビューで提出した補正書案/意見書案はエンターされず、無駄になる上、陳述内容が審査記録に残り、包袋禁反言を形成しますので、後で不利になることがあります。
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新たな拒絶理由での拒絶査定維持審決は不意打ち?

平成19年(行ケ)第10056号 審決取消請求事件 平成19年10月31日 知的財産高等裁判所)

[カンケツハンケツ]
拒絶査定不服審判請求時の補正を、新規な拒絶理由で事前通知なしに却下しても不合理ではない。

※「カンケツハンケツ」は、判決の重要ポイントに一言でインデックスをつけるために、プライムワークス国際特許事務所が独自に作成して提供しているものです。

[判旨]
 原告は、発明に該当しない(29条1項柱)という拒絶理由は、(拒絶査定不服審判請求時の限定的減縮の)本件補正により生じた拒絶理由ではなく、本件補正前から存在し、(審査段階で)見落とされていた拒絶理由であるから、特許法17条の2第5項(現特許法17条の2第6項)が適用され(て補正却下(159条1項において読み替えて準用する53条1項)され)るべきではない旨主張する。
 しかし、補正の却下を定めた上記規定において、原告の主張を裏付ける規定はない。
 原告は、本件補正を(仮に)行なわなかった場合、(補正却下がされることはないので)拒絶理由通知(50条)を発することなく、いきなり不意打ち的に「発明該当性の欠如」(29条1項柱)を理由として拒絶審決を行なうことが許されないこととのバランスなどともいう。
 しかし、上記各規定に照らしても、拒絶査定を維持する審決とその手続きにおける補正の却下において、出願人に対する事前の査定と異なる拒絶の理由の通知をする必要性については、取り扱いが異なるのであり、不合理であるとは必ずしも認められず、原告の主張は採用できない。
注意:(カッコ)書き説明は、筆者にて追加。
[解説]
 原告が平成18年8月24日に拒絶査定不服審判を請求していわゆる限定的減縮(17条の2第5項2号)とする本件補正(17条の2第1項4号)を行なったところ、特許庁は、同年12月18日に本件補正を却下した上で、拒絶査定を維持する審決をした。原告は、この審決を不服として本件訴訟で争った。
 本件補正後の本願補正発明は、審決において①特許法第29条第1項柱書きに規定する発明に該当しない、②特許法第29条第2項の独立特許要件(17条の2第6項で準用する126条5項)を充足しないとの二つの理由で補正却下された。このうち、①の発明該当性については、判決において「全体としてみると、自然法則を利用しているといえる」として、この限りにおいて審決は誤りを含むとされた。しかし、上記②の理由により補正却下した審決の結論に誤りはないとされ、審決が維持された。
 ここで、補正却下(53条)は、既に調査した引例等の審査資源を有効に活用し、迅速な審査を担保する趣旨の規定とされている。また、拒絶査定不服審判請求時等に加重される補正の内容的制限(17条の2第5項、6項)も、同趣旨に基づくとされ、審判においても続審主義により審査時の手続きは効力を有する(158条、159条)。
 原告にしてみれば、なんら補正をせずに審判請求した場合には補正が却下されることはありえず、「査定の理由と異なる拒絶の理由」(159条2項で読み替えて準用する50条)として、上記①の拒絶理由が通知されると期待できるとした(特許庁審査基準第ⅠⅩ部4.3.3.2)。さすれば、原告は、新たな手続補正の機会を得て(17条の2第1項1号)、庁対応することが可能であったとも考えられる。さらには、審査段階で上記①の拒絶理由を通知されていれば、何らかの対応措置を講ずることも可能であったのかもしれない。
 一方、いわゆる門前払いとして補正却下される場合には、上記「査定の理由と異なる拒絶の理由」が通知されることはない。従って、「査定の理由と異なる拒絶の理由」に該当する新たな拒絶理由が発見されたとしても、その新たな拒絶理由が補正却下される理由に該当する場合(159条1項において読み替えて準用する53条1項)には、原告にしてみればいわば寝耳に水の拒絶理由により、審判段階で何ら対応する術もなく補正が却下されて、査定時の請求項に戻り、本件においては拒絶査定の維持審決となった。
 ここで、原告が主張するように拒絶査定時の特許請求の範囲において、上述の①の拒絶理由が見逃されていたというのであれば(この点については本判決で触れられておらず、特許庁は本件補正により新たに生じたものとしている)、審判段階等において新たに拒絶理由を通知(160条等)することも可能であったとも思われるが、拒絶査定維持の審決が早々に為されたことを考慮すると、原告に再度補正の機会を与える利益をも凌駕するような特許性が強く否定されるべき心証を、審判官の合議体が抱いたのかもしれない。
 審判において新たな拒絶理由が発見されれば通知されるので不意打ちはされないはずだという思いこみがあるなら、今一度、条文を再確認することをお勧めしたい。
 拒絶査定不服審判請求時の手続補正が却下される理由には、新規事項の追加(17条の2第3項)、シフト補正(同4項)、独立特許要件を満たす限定的減縮(同5項2号、6項)等補正の内容的制限(同5項各号)がある。
 特に、複数の拒絶理由通知やその対応により審査過程を経た後の審判請求時には、独立特許要件のうち進歩性(29条2項)にのみ注意を奪われる傾向があると思われるが、審査段階で通知された拒絶理由であるか否かに拘わらず、本件のように29条1項柱書きをはじめ様々な独立特許要件(29条、29条の2、32条、36条4項1号等、39条1項等)により補正却下される可能性があることにも注意したい(審査基準第ⅠX部6.2.1(4))。
 誤解を恐れずに言うならば、拒絶査定不服審判請求時の補正は“一発勝負”であるといえる。
(まとめ)
 審査段階においては、二回目以降の拒絶理由通知であっても「最初の拒絶理由通知」とすべき場合等(審査基準第ⅠX部4.3.3.2、 4.3.3.1(2)、4.3.3.3(1)等)、出願人に対して補正の機会が不当に制限されることがないように種々配慮されている(審査基準第ⅠX部4.3.3.3(3)、審査基準第ⅠX部6.1(2))。
 しかし、これらはいずれも審査段階における、出願人に不利な扱いとならない取り計らいとする特許庁の運用基準であり、もちろん条文上でこのように取り扱うとの規定は存在しない。また審査基準は、文字通り審査段階での基準であって、続審主義とはいえ審判段階での運用取り扱い基準を定めるものではない。
 判決では、審判請求時の手続補正においても未だ特許法29条2項の拒絶理由が解消されておらず、補正却下とすることは妥当であるとの判断がされている。出願人は、費用と時間と労力とをかけて、それなりの意気込みを持って審判請求したはずであり、その結果としての補正却下処分は、極めて不本意であったことは十分に推察できる。この点、米国のRCEとは異なり、審判請求においては対世効を有する権利生成の場面において、早期決着を図る利益を優先した制度としたものと考えられ、審判請求時の補正には特段繊細な注意が必要とされる。
 当然のことではあるが出願人側としては、特許庁からの手厚い手続き上の保護が手当されている審査段階において、特許性を見いだせるように最大限の努力をしたい。

弁理士 鎌田 和弘
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どこまでが公序良俗違反??

平成19年(行ケ)第10303号 審決取消請求事件 平成20年1月31日 知的財産高等裁判所

[カンケツハンケツ]
商標の使用態様によって他人の特許権等を侵害しても、直ちに公序良俗に反する商標には該当しない。

※「カンケツハンケツ」は、判決の重要ポイントに一言でインデックスをつけるために、プライムワークス国際特許事務所が独自に作成して提供しているものです。

[判旨]
原告は、審決には、本件商標の商標法4条1項7号該当性等の判断の誤りがあることなどを取消事由として主張している。
商標が商標法4条1項7号に該当するかどうかは、特段の事情のない限り、当該商標の構成を基礎として判断されるべきものであり、指定商品または指定役務についての当該商標の使用態様が他人の権利を侵害するか否かを含めて判断されるべきものではない。
本件においてこれをみると、本件商標は「iモード」を標準文字で表す構成からなる典型的な文字商標であって、本件商標の構成・内容から他人の特許権等を侵害するものということはできない。そうすると、原告の主張に係る本件商標の使用が原告の有する本件各特許権に抵触するという理由をもって、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するということはできず、この点の原告の主張は失当である。

[解説]
原告は、発明の名称を「数字のみを用いて総ての文字・記号を入力することが可能な入力装置とそれを用いたフィルム描写装置」とする特許(特許第3611580号)及びこれに関連する米国特許(米国特許第6,097,990号)についての特許権を有している。
これに対し、被告が有する登録商標『iモード』(登録第4602351号)は「移動体電話による通信,電子計算機端末による通信,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」を指定役務としており、原告は、本件商標『iモード』の文字を付した携帯電話の構成要素及び実施形態が原告の特許権を侵害するとして主張した。

商標法4条1項7号は、いわゆる公序良俗に反する商標の登録を排除する規定であるが、ここでいう公序良俗に反する商標とは、“他の法律によって、その使用等が禁止されている商標”、“一般に国際信義に反する商標”、“構成自体に問題がなくても、指定商品について使用することが社会公共の利益や一般的道徳観念に反することとなる商標”なども含まれる。

 つまり、原告は、被告登録商標の構成要素は『iモード』の文字のみではなく、移動体電話からインターネットに接続して操作ができることをも含めて構成として認定すべき旨を主張し、同時に当該登録が4条1項7号に該当するとして、無効審判を争ったわけです。


「商標とは、「文字・図形・記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合」(商標法2条1項柱書)であって、その使用態様を含めて商標の構成要素ないし内容を判断すべきでない事は規定上明らかである。」

知財高裁は、改めて商標の定義を確認し、原告の主張する本件商標の構成要素の認定にかかる主張を退けました。

「商標法29条において、(中略)、知的財産権相互の調整が図られていること等に照らすならば、指定商品又は指定役務についての商標の使用態様によって他人の特許権等を侵害することがあったとしても、(中略)、そのことから直ちに当該商標が、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものと判断すべきではないといえる。」

このように、知的財産法の構造の観点からも商標法4条1項7号の解釈が示された点で、興味深い判決でした。

弁理士 安田 麻衣子
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お花見@西郷山公園

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米国特許庁敗訴-継続出願の回数制限と請求項数の制限

2007年11月に米国特許商標庁USPTOが導入しようとした、「継続出願の回数制限および請求項数の制限」に関する特許法規則改正(以下"Final Rules"と呼ぶ)に対して、米国特許庁を相手に同規則改正の施行を差し止める訴えが地裁に提起されていましたが、2008年4月1日付で判決が出ました。

判決の骨子は、
「米国特許庁は特許法規則を制定する権限をもつ」(35 U.S.C. §2(b)(2))という法の規定は、実体的な(substantive)特許法規則(の制定)にまで及ぶものではない。上記"Final Rules"は、その性質上実体的なものであるから、無効である(null and void)。

というものです。USPTOの全面敗訴であり、出願人にとっては朗報です。詳しくは、Patently-Oの記事を参照。

4月2日時点の情報では、USPTOのGeneral CounselのJames Toupin氏はCAFCに控訴するというコメントを発表していますが、判決が覆る可能性は低いと思われます。しかし、現在、米国議会で審議中の特許法改正では、米国商標特許庁に実体的な規則を制定する権限をもたせるように、法律を改正しようとする動きもあるようです。
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パリ優先権基礎出願の早期審査着手(JP-FIRST)

平成20年4月から、特許庁は、日本から海外へのパリルートの出願の基礎となる日本出願(パリ優先権基礎出願)を早期に審査着手する施策(JP-FIRST)を実施します。

パリ優先権主張の基礎出願のうち、出願日から2年以内に審査請求されたものが、他の出願に優先して審査着手されます。出願人からの手続きは一切不要で、特許庁が該当する出願を本施策の対象として選定します。目安として、審査請求と出願公開のいずれか遅い方から、原則6月以内に審査着手されるということです。特許庁の一次審査結果は世界に発信され、他国の特許庁で利用されます。

平成18年4月1日以降の出願が対象となりますが、PCT出願の基礎となる出願については既に国際調査報告により審査結果の共有がなされているため、対象外です。

なお、本施策の対象となる出願であっても早期審査を申請することができます。早期審査の着手時期は申請から平均3箇月と言われています。

本施策は、特許審査ハイウェイとも連動していきます。日本で早期に特許査定になった場合は、現在のところ、米国、韓国、英国およびドイツにおいて審査ハイウェイの申請が可能です(英国およびドイツの審査ハイウェイは試行段階)。

P.S. 戦略的には、日本出願の審査を外国出願よりも先に進めたくない(たとえば、日本での進歩性に関するネガティブな判断を他国の審査が始まる前に発信されるのは好ましくないなど)こともあろうかと思います。その場合は、出願から2年を経過して審査請求すれば、JP-FIRSTの対象から外れます。
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周知技術の濫用への戒め!?

平成18年(行ケ)第10281号 審決取消請求事件 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

[カンケツハンケツ]
容易想到性を肯認する際、審査/審判手続で挙げられていない文献を周知技術として挙示し、かつ、引用例として用いることは違法である。

※「カンケツハンケツ」は、判決の重要ポイントに一言でインデックスをつけるために、プライムワークス国際特許事務所が独自に作成して提供しているものです。

[判旨]
 審決が認定した「…」は,たとえ周知技術であると認められるとしても,特許法29条1,2項にいう刊行物等に記載された事項から容易想到性を肯認する推論過程において参酌される技術ではなく,容易想到性を肯認する判断の引用例として用いているのであるから,刊行物等に記載された事項として拒絶理由において挙示されるべきであったものである。
 しかも,本件補正発明1が引用例1に記載された発明と対比した場合に有する相違点2の構成は,本願発明の出願時から一貫して最も重要な構成の一つとされてきたのであり,出願人である原告が,審査及び審判で慎重な審理判断を求めたものであるのに,審決は,この構成についての容易想到性を肯認するについて,審査及び審判手続で挙示されたことのない特定の技術事項を周知技術として摘示し,かつ,これを引用例として用いたものであるから,審判手続には,審決の結論に明らかに影響のある違法があるものと断じざるを得ない。

[解説]
拒絶査定不服審判において、審査で引用されていない文献を「周知技術」として認定した上で、出願人に意見書を提出する機会を与えることなく、拒絶審決が出された。原告(出願人)は、拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由について、意見書を提出する機会が与えられなかったから、審判手続には、特許法159条2項で準用する同法50条の規定に違反する瑕疵があるとして審決の取り消しを求めた。

拒絶理由通知に引例として挙げることなく、「周知技術」を後出しして、拒絶査定/拒絶審決になることは、出願人にとって酷です。本当に周知技術ならば、納得しますが、周知性について争いたい場合もあるだろうし、当該特定事項だけを取り出せば周知技術であったとしても、クレーム全体としては進歩性が認められることもあります。このような場合、新たな拒絶理由通知をすることなく、拒絶査定/拒絶審決にすると出願人には不意打ちになります。

今回の知財高裁の判決は、出願人のこのような不利な立場を理解したものであり、勇気づけられます。understandとは、「下に立つ」ということであり、弱者の立場に立って物事を判断することの大切さを教えられます。

判示内容によれば、

(1)審査官/審判官が、周知技術とされる技術を、容易想到性を肯認する推論過程において参酌される技術ではなく、容易想到性を肯認する判断の引用例として用いており、さらには、
(2)周知技術とされているところの、本件発明と引用発明を対比した場合の相違点の構成は、本願発明の出願時から一貫して最も重要な構成の一つとされてきたのであれば、

その周知技術を、刊行物等に記載された事項として拒絶理由において挙示しなかった(不意打ちをやった)ことの違法性を問うことができると言えます。(条件(1)だけでもOKですが、条件(2)が揃えばなおよいです。)

「「…」との技術は,審決で認定したように周知技術であるとしても,審決は,特許法29条1,2項にいう刊行物等に記載された事項から容易想到性を肯認する判断過程において参酌するような周知技術として用いているのではなく,むしろ,審決の説示に照らすならば,実質的には,上記周知技術を容易想到性を肯認する判断の核心的な引用例として用いているといわざるを得ない。」

「本件補正発明1が引用例1に記載された発明と相違する「…」という構成は,本願の当初明細書においても,また,その後に提出された補正書等においても,出願人である原告が一貫して強調してきた最も重要な構成の一つであり,かつ,上記の本件審査及び審判手続においても明らかなように原告が強い関心を示して審査及び審判で慎重な審理判断を求めた構成であることが優に認められるところである。他方,本件審査及び審判手続では,審査官及び審判官が,この構成が進歩性を有するか否かに対し必要な関心と思慮をもって審理し,判断したかについては,既に検討したように,遺憾ながらその痕跡を窺い知ることは困難である。」

とまで裁判官が言ってくれているのを読むと、出願人にとっては本当に胸がすく思いですよね。

なお、周知技術を容易想到性を肯認する推論過程において「参酌する」のは許されますので、くれぐれも誤解なきようお願いします。その周知技術を容易想到性を肯認する判断の核心的な「引用例」として用いるのであれば、拒絶理由において引例として示さなければならないというのが今回の判決です。

弁理士 青木武司
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ビリヤード&ダーツ in 渋谷

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お食事会(イタリアン)

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置換することは容易か?-当業者の技術認識に焦点

平成19(行ケ)10148 審決取消請求事件

[カンケツハンケツ]
引用発明と周知技術の組み合わせは、その周知技術のもつ技術的意味が没却されるような適用の仕方であれば、動機付けがなく、阻害要因がある。

※「カンケツハンケツ」は、判決の重要ポイントに一言でインデックスをつけるために、プライムワークス国際特許事務所が独自に作成して提供しているものです。

[判決]進歩性がないことを理由に無効とした審決を取り消す
[主な理由]本件発明と引用発明の相違点の判断に誤りがある
[判旨]
出願当時の当業者において,マット加工面に熱と圧力を同時に加えるとマット加工の技術的意味が没却されると考えられていたことに照らすと,熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題を解決するため,引用発明に,周知例に記載されたマット加工技術を適用することについては,その動機付けがないばかりか,その適用を阻害する要因が存在したものというべきである。

[解説]
本件発明は,「熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題」を解決するため,2枚以上のOPPフィルムを積層したラミネートフィルムにおいて,そのうち1枚のOPPフィルムの少なくとも一方の表面にマット加工を施すことを採用した。

一方、引用発明も,「熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題」を解決するため,2枚以上のOPPフィルムを積層したラミネートフィルムにおいて,そのうち1枚のOPPフィルムの少なくとも一方の表面に離型性ワックスをコートする加工を施すことを採用した。

同一の技術課題に対して、本件発明は「マット加工を施す」のに対して、引用発明は「離型性ワックスをコートする加工を施す」点が相違しますが、特許庁は「マット加工」に関する周知例を挙げて、引用発明の「離型性ワックスコート加工」を「マット加工」に置換することは容易に想到できる、そして、置き換えることにより奏する効果も当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではないという審決を出していました。

しかし、周知例の「マット加工」は、静電気の蓄積に起因するフィルムどうしの密着を低減するための技術だったようで、「熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題」を解決するために「マット加工」を用いることは、自明のことではなかったようです。技術課題や解決方法に十分な理解を欠いたまま、周知技術による置き換えは容易と片付けられてしまっていたようです。

知財高裁の判断は、以下のようなもので、特許権者の立場を考えると、たいへん勇気づけられます。

「本件特許出願当時の当業者において,少なくとも,マット加工面は,熱と圧力が同時に加わることによってマット加工が消失する可能性が高いものと考えられていたものと認めることができ」、「本件特許出願当時の当業者において,マット加工面に熱と圧力を同時に加えると上記のようにマット加工の技術的意味が没却されると考えられていたことに照らすと,熱プレス成形によるフィルム同士の熱接着の問題を解決するため,引用発明に,周知例2又は3に記載されたマット加工技術を適用することについては,その動機付けがないばかりか,その適用を阻害する要因が存在したものというべきである。」

弁理士 青木武司
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