商標早期審査・早期審理制度の対象が拡大されました


特許庁HPによると、平成21年2月1日より、商標の早期審査・早期審理制度の対象が拡大されました。所定の要件を満たせば、既に出願されているものについても対象となります。



1.早期審査・早期審理制度とは

 一般に、商標登録出願をしてから設定登録前まで、約半年~一年の期間を要します。
 早期審査・早期審理制度とは、この間の出願人の利益を保護するため、一定条件のもとで、通常より早期に審査・審理を行う制度であり、平成9年9月1日から導入されています。


2.今回新たに対象となったもの

 早期審査・早期審理制度を利用できるのは、「緊急性」を要する場合など、比較的厳しい要件が課されていたため、本制度を利用できる機会が限定されていました。

 今回、同制度の新たな対象として、「出願人又はライセンシーが、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願・審判事件」が、対象として追加されたため、従来に比べて同制度を利用できる機会が増えました。

(例)商品:商品「みかん」に、「プライムワークス」という商標をつけて販売している場合

 (ア)指定商品を「みかん」として出願
   →早期審査の対象となります。

 (イ)指定商品を「果実」として出願
   →緊急性の要件が認められない限り、早期審査の対象にはなりません。


 つまり、出願する際に指定する商品を、実際に販売している商品に限定することにより、通常よりも早く審査をしてもらえる可能性があるということです。 
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前置審尋が原則全件対象になります

平成20年7月10日付の特許庁HPの発表によると、平成20年10月以降に審理着手時期に至る事件については、原則全件に対して前置審尋が行われることになりました。

[対象]
原則として前置報告書が作成された事件の全件を対象に前置審尋が送付されます。ただし、早期審理事件は除かれます。早期審理事件については閲覧請求をして前置報告の内容を知り、上申書によって意見を提出するしかありませんので、ご注意ください。

[回答期限]
審判請求人は前置審尋に対して回答書を提出できますが、その提出期限(指定期間)は、60日(在外者については3箇月)です。

[回答内容]
回答書では、前置審査の報告書に示された理由に対する反論を争点として整理した形で示し、審判請求人の主張を明確化します。前置審尋は拒絶理由通知ではないため、補正の機会は与えられません。(補正ができるのは原査定が維持できず、新たに拒絶理由が通知された場合に限られます。)

ただし、この段階で補正案を提示しておくことはできます。「補正案が一見して特許可能であることが明白である場合には、迅速な審理に資するため、審判合議体の裁量により、補正案を考慮した審理を進めることもあります。」とのことです。

[回答後の審判合議体による審理]
前置審尋に対する回答書提出の指定期間経過後、前置審査での審査官の見解とともに、審査官の見解に対する審判請求人の反論を参酌して審判合議体による審理・審決が行われます。
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First Action Interview Pilot Program

米国特許庁が最初の拒絶理由通知前に審査官にインタビュー(面談)する機会を与えるファーストアクションインタビュー試験プログラム(First Action Interview Pilot Program)を2008年11月1日まで実施しています。

審査官によるサーチ結果をもとに出願人と審査官が審査の初期段階で対話し、潜在する拒絶の理由を解消する機会を設けることで、審査を促進し、可能ならば早期に特許査定を出すことをねらいとしています。

[推奨]
 早期権利化を求めており、かつ、審査官とのインタビューも実施したい場合は本試験プログラムの利用をお勧めしますが、そうでない場合は、応答期間が短い、インタビューが不成功に終わった場合、コストが余分にかかるといったデメリットがあるため、本プログラムの利用はあまり勧められません。本プログラムの利用にあたっては、下記のメリットとデメリットをご勘案されることをお勧めします。

[ファーストアクションインタビューの流れ]

1.出願人は本試験プログラムの適用が可能であるとの通知を受理する。

 以下の条件に当てはまる出願のみが試験プログラムの対象となっています。
(1)2005年9月1日以降の出願で、最初の拒絶理由通知を受けておらず、クラス709(コンピュータ、デジタルプロセッシングシステム、マルチ・コンピュータ・データ転送)に属するもの、または
(2)2006年11月1日以降の出願で、最初の拒絶理由通知を受けておらず、クラス707(データプロセッシング、データベース、ファイル管理またはデータ構造)に属するもの

2.ファーストアクションインタビューをリクエストする。

 出願人がFirst Action Interviewをリクエストしなかった場合は、通常の審査の流れに入ります(最初のオフィスアクションの通知を待つことになります)。

3.インタビュー前のコミュニケーション(Pre-Interview Communication)が届く。

 審査官が先行技術をサーチして、潜在的な拒絶の理由を通知します。(PCTの「見解書付きサーチレポート」のような形式のものです。)

4.出願人は「インタビュー前のコミュニケーション」に対して、1箇月以内(延長なし)にインタビューの実施/不実施のリクエストをする。

5-1.インタビューを実施しない旨のリクエストをした場合、すぐにファーストアクションインタビュー・オフィスアクション(1回目のオフィスアクションとみなされる)が通知され、1箇月以内(1箇月だけ延長可能)に応答しなければならない。

 インタビューの実施を見送る場合でも、インタビューを実施しない旨のリクエストを庁に提出しなければ、出願が放棄されたことになりますので、ご注意ください。

5-2.インタビューを実施する旨のリクエストをした場合、審査官とのインタビューが開かれる。

 出願人(または代理人)は請求項の補正書案/意見書案を準備してインタビューに臨みます。複数の補正書案/複数の意見書案は提示することは認められません。

6-1.インタビューの結果、特許性について出願人と審査官の間で合意に達した場合、インタビューのサマリーが作られ、補正書/意見書がエンターされた上で、許可通知が出る。

6-2.インタビューの結果、特許性について合意に達しなかった場合、インタビューのサマリーとともにファーストアクションインタビュー・オフィスアクション(1回目のオフィスアクションとみなされる)が通知され、1箇月以内(1箇月だけ延長可能)に応答しなければならない。

[メリット]

 現行の規則では、出願人は最初の拒絶理由通知の前に審査官とのインタビューを求めることができますが、インタビューの求めに応じるかどうかは審査官の裁量であり、出願人が先行技術に対する特許性を示すことが求められます。本試験プログラムでは、審査官が先行技術調査をして拒絶の理由を示し、出願人にインタビューの機会を与えます。したがって、以下のメリットがあるといえます。

(1)出願人は先行技術調査が不要である。
(2)インタビューの機会が保証されている。
(3)インタビューの結果、審査官と特許性について合意できれば、早期に権利化される。

[デメリット]

(1)応答期間が1箇月(延長は1箇月限り)と短い。

 インタビューの結果、特許性について合意に達しなかった場合、ファーストアクションインタビュー・オフィスアクションが出され、1箇月以内に書面で応答しなければならならず、延長は1箇月しか認められません。
 通常のオフィスアクションでは、3箇月(延長3箇月可能)の応答期間があるのに比べて、応答期間はきわめて短いです。
 ファーストアクションインタビューをリクエストしてしまうと、サーチ結果だけをもらっておしまいにすることはできず、インタビューを実際にはしなかった場合であっても、ファーストアクションインタビュー・オフィスアクションを受け取りますので、応答期間はやはり1箇月(延長1箇月可能)に限られてしまいます。

(2)インタビューの結果、特許査定にならなかった場合、費用が余計にかかる。

 現地代理人費用をかけてインタビューをしても、審査官と特許性に関して合意が得られなかった場合、ファーストアクションインタビュー・オフィスアクションが出され、通常のオフィスアクションのように少なくとも書面で応答しなければならないので、費用が二重にかかります。

(3)インタビューの結果、特許査定にならなかった場合、余計なプロセキューションヒストリーを作ってしまう。

 インタビューで提出した補正書案/意見書案はエンターされず、無駄になる上、陳述内容が審査記録に残り、包袋禁反言を形成しますので、後で不利になることがあります。
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米国特許庁敗訴-継続出願の回数制限と請求項数の制限

2007年11月に米国特許商標庁USPTOが導入しようとした、「継続出願の回数制限および請求項数の制限」に関する特許法規則改正(以下"Final Rules"と呼ぶ)に対して、米国特許庁を相手に同規則改正の施行を差し止める訴えが地裁に提起されていましたが、2008年4月1日付で判決が出ました。

判決の骨子は、
「米国特許庁は特許法規則を制定する権限をもつ」(35 U.S.C. §2(b)(2))という法の規定は、実体的な(substantive)特許法規則(の制定)にまで及ぶものではない。上記"Final Rules"は、その性質上実体的なものであるから、無効である(null and void)。

というものです。USPTOの全面敗訴であり、出願人にとっては朗報です。詳しくは、Patently-Oの記事を参照。

4月2日時点の情報では、USPTOのGeneral CounselのJames Toupin氏はCAFCに控訴するというコメントを発表していますが、判決が覆る可能性は低いと思われます。しかし、現在、米国議会で審議中の特許法改正では、米国商標特許庁に実体的な規則を制定する権限をもたせるように、法律を改正しようとする動きもあるようです。
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パリ優先権基礎出願の早期審査着手(JP-FIRST)

平成20年4月から、特許庁は、日本から海外へのパリルートの出願の基礎となる日本出願(パリ優先権基礎出願)を早期に審査着手する施策(JP-FIRST)を実施します。

パリ優先権主張の基礎出願のうち、出願日から2年以内に審査請求されたものが、他の出願に優先して審査着手されます。出願人からの手続きは一切不要で、特許庁が該当する出願を本施策の対象として選定します。目安として、審査請求と出願公開のいずれか遅い方から、原則6月以内に審査着手されるということです。特許庁の一次審査結果は世界に発信され、他国の特許庁で利用されます。

平成18年4月1日以降の出願が対象となりますが、PCT出願の基礎となる出願については既に国際調査報告により審査結果の共有がなされているため、対象外です。

なお、本施策の対象となる出願であっても早期審査を申請することができます。早期審査の着手時期は申請から平均3箇月と言われています。

本施策は、特許審査ハイウェイとも連動していきます。日本で早期に特許査定になった場合は、現在のところ、米国、韓国、英国およびドイツにおいて審査ハイウェイの申請が可能です(英国およびドイツの審査ハイウェイは試行段階)。

P.S. 戦略的には、日本出願の審査を外国出願よりも先に進めたくない(たとえば、日本での進歩性に関するネガティブな判断を他国の審査が始まる前に発信されるのは好ましくないなど)こともあろうかと思います。その場合は、出願から2年を経過して審査請求すれば、JP-FIRSTの対象から外れます。
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「ぱっと見!判決」はプライムワークス国際特許事務所の登録商標です。
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