海外で商標登録するとは
海外で商標登録するとは、海外各国で、商標を管理する行政庁に商標を登録することを言います。商標を登録することにより、その国で商標権を取得することができます。
商標権は基本的にその国の中にしか効力は及びません。商標登録したい国がいくつかあれば、それぞれの国に商標登録する必要があります。
海外で商標登録した方がよいケース
海外で商標登録した方がよいのは以下のようなケースです。
- 商品を海外で販売・輸出する場合
- サービスの対象を海外に広げる場合
- 海外にウェブサイト・店舗・営業所をつくる場合
- 海外の工場で商品を製造する場合
海外の工場で製品を製造して日本国内で販売する場合でも、商標登録するのが望ましいでしょう。商標登録をしていない場合、他人の商標権に抵触する可能性がでてきます。その場合、工場の摘発、損害賠償、税関での輸出差止などの可能性がでてきます。
海外で商標登録する方法
海外で商標登録する方法は2通りあります。
1. 個別出願
個別出願とは、商標を管理する行政庁に個別に商標登録出願を行うことです。日本で特許庁に商標登録出願を行うのと同じ手続です。通常は、その国に住所を有する弁理士や弁護士の現地代理人を通じて行います。日本の特許事務所に依頼すれば、提携する海外の弁理士・弁護士を通じて手続を行ってくれます。
2. 国際登録出願(マドプロ出願)
国際登録出願(マドプロ出願)とは、1つの手続で複数の国に商標登録出願を可能とする国際的な枠組み(マドリッドプロトコル)を通じた、商標登録出願のことです。日本で手続を行う場合、特許庁に出願書類を提出するか、オンラインで出願することができます。日本の特許事務所に依頼すれば、手続を行ってくれます。
Madrid e-Filingによる国際出願手続(引用:特許庁ウェブサイト)
【解説】マドプロとは?海外で商標登録する効果と費用
【解説】海外の商標登録で、マドプロを選ぶか各国個別に出願するか?
3. メリット、デメリット
個別出願
メリット
- 現地の弁理士や弁護士から各国の法制度に合わせたコンサルティングを受けることができます。よって、方式的な拒絶理由通知(商品・役務の表記など)を受ける可能性が低くなります。
- 国際登録出願(マドプロ出願)より審査の開始が速くなります。
デメリット
- 国数や区分数が多いと国際登録出願(マドプロ出願)より費用が高くなります。
- 委任状や優先権書類などの必要書面が各国ごとに必要になります。
- 国際登録出願(マドプロ出願)より必要書面が多いことがあります。それに応じて費用も加算されます。
国際登録出願(マドプロ出願)
メリット
- 現地の弁理士や弁護士の費用がかからないため、費用が安くなります。特に国数や区分数が多い場合、割安になります。
- 審査期間が決められているため、審査の遅い国でも審査期間の見通しがたちます。多くの国は18ヶ月以内に審査することが決められています。
- 委任状や優先権書類などの必要書面が省略、簡素化されていることが多いです。
- 更新、名称・住所の変更といった管理手続が全ての国で、まとめて1回の申請で可能です。
デメリット
- 日本に登録もしくは出願がないとできません。日本の登録・出願が国際登録日から5年以内に失効すると国際登録も取消になります。
- 各国の審査の前に国際登録の処理があるため、その分(通常3ヶ月程度)審査が遅れます。
- 方式的な拒絶理由通知(商品・役務の表記など)を受ける可能性が、高くなります。
海外で商標登録するための準備
商標を決める
商標登録する商標を決めましょう。ロゴ文字・図形で登録するのであれば画像データを準備しましょう。英語のブランド名、商品名を登録するのであれば文字で登録すればよいでしょう。文字の場合、データは必要ありません。
その国でどのような態様で商標を使用するか考えてみましょう。登録の維持に商標の使用証拠が求められる国がありますし、登録と同じ態様で使用していないと不使用取消審判という登録取消手続を取られる場合がありますので、基本的には使用する態様で登録するのがよいと思います。
国際登録出願(マドプロ出願)の場合は、日本の登録・出願と同一の商標でしか出願できません。
商品・役務(サービス)を決める
商標を使う商品・役務(サービス)を決めましょう。商標登録を使う商品・役務(サービス)は、45の区分に分けられており、区分数によって費用が変わってきます。商品・役務(サービス)がどの区分に入っているかは国際的な取極めで共通化が進められていますので、日本のサイトで確認すればよいでしょう。特許事務所に依頼する場合は、商品・役務(サービス)を説明すれば区分は確認してくれるでしょう。
特許情報プラットフォーム/商品・役務名検索(引用:特許情報プラットフォーム)
国際登録出願(マドプロ出願)の場合は、日本の登録・出願の商品・役務(サービス)の範囲内でしか出願できません。
特許事務所を決める
出願を依頼する特許事務所を決めます。海外の商標出願について実績のない特許事務所も多くありますので、実績のある事務所を選択しましょう。費用は事務所によって変わってきます。事前に見積もりを出して費用を比較できます。
正式な依頼前に無料相談を行ってくれる事務所もありますので、問い合わせてみましょう。
商標調査
商標調査とは、出願する前に登録の障害となる先行商標を事前調査することです。商標登録が拒絶される可能性をある程度把握することができます。各国で調査を行う必要があるので、国数が多いとその分費用が高くなります。
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審査
審査とは、出願した商標と類似する先行商標がないか、など拒絶理由に該当しないかを行政庁の審査官が審査することを言います。審査を通過しないと商標登録されません。
審査で拒絶理由が発見された場合、諦める場合を除いて、応答する必要があります。商品・役務(サービス)を修正するだけですむ場合や、意見書という反論の書面を提出する場合があります。いずれにせよ、応答費用が発生します。国際登録出願(マドプロ出願)の場合は、新たに現地代理人を指定する必要があります。その際、委任状の提出が必要な国もあります。
登録
登録とは、審査で拒絶理由が見つからず、出願の内容が商標登録されることを言います。この時点でそれぞれの国において商標権が発生します。
国際登録出願の場合も国ごとに登録され、商標権が発生します。拒絶理由がない場合、登録の通知が来ない国もあります(たとえば審査開始から18ヶ月経過して通知がなければ登録とみなすとする国があります)。その場合は、依頼した特許事務所に確認するか、世界知的所有権機関(WIPO)のデータベースでステータスを確認しましょう。
WIPO/Madrid Monitor(引用:WIPOウェブサイト)
更新
商標権は10年単位で権利の更新が必要です。国によって、出願日から10年、登録日から10年の国があります。国際登録出願(マドプロ出願)は国際登録日(日本の特許庁に提出した場合、提出した日)から10年です。個別出願した場合は、各国に個別に手続が必要ですが、国際登録出願(マドプロ出願)の場合は、一括で手続が可能です。
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