タイの商標登録制度の概要や手続きの要点、商標登録の重要性について詳しく説明します。さらに、タイでの商標先行調査や拒絶理由への対応策、商標登録とビジネス展開との関連についてポイントを解説します。タイでの商標登録はブランド保護や競争力強化に不可欠な要素です。ビジネス展開において商標権の保護と正確な知識の持つことが成功の鍵となります。タイ市場でのビジネス展開に興味のある方にとって、タイでの商標登録は重要な一歩です。適切な戦略と専門家のサポートを活用して、成功を目指しましょう。
タイの商標登録制度の概要
タイの商標に関する法規則
タイの商標に関する法規則は、商標法、商標規則、商標審査基準(商標に関する審査・異議マニュアル)が重要です。商標法は商標の登録や保護に関する法律を定めており、商標の権利や侵害について規定しています。商標審査基準は商標の審査基準や要件について定めており、商標出願が審査される際の基準となります。これらの法規則は商標出願者が法的な要件を遵守し、商標登録を取得するために重要な役割を果たします。正確な法規則の理解と適切な対応は、タイでの商標登録を成功させるために欠かせません。
タイの商標登録の手続の概要
タイでは、主な商標登録出願手続は、出願、方式審査、実体審査、商標登録出願の公告、登録証の発行の手順で進められます。商標登録出願の公告後60日以内に異議申立てをすることができ、異議申立てがない場合または異議申立てが却下された場合に、登録決定され、登録料の納付とともに登録証が発行されます。商標権の存続期間は、出願日から10年であり、更新により10年間延長することが可能です。さらに、タイはマドリッドプロトコルに加盟しており、国際登録出願を利用して商標登録が可能です。これにより、他の加盟国にも商標の保護を拡大することができます。
タイにおける商標登録のメリットと重要性
ビジネス展開において、タイで商標登録をすることは重要なステップです。商標登録により、自社のブランドを保護し独占的な権利を確立することができます。タイ市場での競争力を高め、顧客の信頼を得るためには、商標登録は欠かせません。また、商標登録により模倣品や横取り商標などの問題に対処することも可能です。タイにおける商標登録は、企業の成長と発展にとって不可欠な戦略となります。正確な知識と適切な手続きを踏むことで、タイでの商標登録のメリットを最大限に活かしましょう。
商標先行調査
商標先行調査はタイで商標登録を考える際に重要なステップです。aseanTMviewを利用することで簡単に先行商標を調査することができます。aseanTMViewはタイを含むASEAN諸国の商標データベースであり、無料でアクセスできます。このデータベースを利用して類似商標や競合他者の商標権を調査し、自身の商標登録の可能性やリスクを把握することが重要です。先行調査を行うことで、重複や衝突を避け、商標登録の成功率を高めることができます。商標先行調査は商標登録を検討する際の基本的な手続きであり、信頼性と確実性を追求するために欠かせないものです。
知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)のウェブサイト
商標先行調査は知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)のウェブサイトでも可能です。タイ国内の商標登録・出願のデータベースであり、無料でアクセスできます(特許・意匠の調査も可能です)。
知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)のウェブサイト
タイの商標登録手続きの詳細
タイで商標登録するには、タイ知的財産庁に出願手続を行う方法(個別出願)と国際登録出願を行う方法があります。
個別出願とは
タイの現地代理人(特許事務所、法律事務所)を通じて、出願を行います。直接、現地代理人に依頼することもできますが、通常は日本の特許事務所などに依頼すれば、提携する現地代理人を通じて行うことができます。
出願に必要な情報・書類
出願人の名称・住所
タイ語で出願しますが、現地代理人に英語の表記を伝えれば問題ありません。
委任状
現地代理人(タイ弁護士など)に権限を委任する署名入りの委任状が必要となります。公証役場などで認証手続を執る必要があります。
商標
ブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。漢字や英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。
指定商品・役務(サービス)
製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分(国際分類)に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。1出願で多区分にわたる商品・役務を指定することができる1出願多区分制を採用しています。
包括的な指定商品・役務表記(例えば、「被服」「化粧品」など)は認められないため、商品・役務表記には要注意です。国際分類で認められている表記も補正を求められる場合があります。知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)のウェブサイトで所定の商品・役務の表記を検索できます。
知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)のウェブサイト
政府料金は、1区分あたり指定商品が5個までなら指定商品×1,000バーツ(約3,500円)で、それ以上の個数だと一律1区分あたり9,000バーツ(約31,500円)となります。
国際登録出願(マドプロ出願)とは
国際登録出願(マドプロ出願)とは、1つの手続で複数の国に商標登録出願を可能とする国際的な枠組み(マドリッドプロトコル)を通じた、商標登録出願のことです。日本で手続を行う場合、特許庁に出願書類を提出するか、オンラインで出願することができます。日本の特許事務所に依頼すれば、手続を行ってくれます。タイを指定国の1つとすることで、タイへの出願手続となります。
出願に必要な情報・書類
出願人の名称・住所
英語の表記が必要です。
商標
日本のブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。
指定商品・役務(サービス)
製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。
所定の商品・役務の表記で無い場合、補正を求められる場合があります。国際登録出願で認められる商品・役務表記はMadrid Goods & Services Managerで調べられます。タイの審査で認められる商品・役務表記は知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)のウェブサイトで所定の商品・役務の表記を検索できます。
Madrid Goods & Services Manager
知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)のウェブサイト
審査
商標出願の流れ:以下のようなフローで審査が行われます。
※国際登録出願(マドプロ出願)の場合、国際登録(要6ヶ月程度)の後、審査が行われます。
審査期間は、12~15ヶ月ぐらいです。
拒絶理由通知
商標登録出願する際には、拒絶されるリスクも考慮する必要があります。上述のとおり指定商品・役務の表記についても厳格な審査が行われます。指定商品または指定役務記述等に対する補正命令、権利不要求(ディスクレーマー)命令等が発出された場合、出願人は命令受領から60日以内に登録官へ応答することができます。
拒絶命令
タイでの商標登録において、拒絶される理由の多くは、①識別力がない、②他人の商標との類似、などです。日本の商標制度にも類似の拒絶理由が存在し、捉え方はほぼ同じと考えてよいでしょう。しかし、タイの審査は識別性の判断が非常に厳しいです。商標が日本語であっても審査官はその意味が識別性を有しているか否かの判断を行います。
識別性の不備、または先行商標と同一もしくは類似するとして拒絶命令が発出された場合、出願人は拒絶命令受領から60日以内に商標委員会へ審判請求することができます。
商標の独自性や識別力の強化、他の商標との差異化など、拒絶査定を回避するための適切な戦略が求められます。そのためには、出願前に商標先行調査を行うことが重要となります。
異議申立
第三者は、 当該商標登録出願が公告されてから 60 日以内に書面で異議申立てをすることができます。
商標権の管理
商標権の登録と更新
異議申立期間内に異議が申立てられなかった場合、または異議申立てが却下された場合には、登録証が発行されます。
商標登録の存続期間は出願日から10年です。 商標登録の存続期間は10年ごとに更新できます。
商標の不使用取消制度
登録された指定商品または指定役務について取消請求を行う前の3年間に商標が使用されていないことを証明できる場合、第三者は商標委員会に対して取消請求を行うことができます。
商標侵害対策と権利の保護
商標登録を行った後も、商標侵害には注意が必要です。タイでは商標侵害に対して法的な保護措置があります。侵害が発生した場合は、民事訴訟や刑事訴訟を通じて権利を主張することができます。いずれの救済方法による場合でも、タイでは正式な証拠開示制度がないため、事前に侵害の証拠を集めることが重要です。また、税関に対し水際措置を求めることもできます。
商標監視や定期的な商標調査を行うことも重要です。適切な対策を講じることで、商標の権利を確実に守ることができます。
まとめ
タイで商標登録を行うことは、企業や個人にとって重要なステップです。商標登録によって独占的な権利を確立し、ブランド価値の向上と消費者の信頼を獲得することができます。しかし、タイでは模倣品や横取り商標の問題も存在し、これらに対処するために商標登録のメリットと重要性を理解する必要があります。商標登録手続きの詳細や出願資格、必要な書類や情報、商標先行調査の重要性など、正確な知識と適切な戦略が成功につながります。タイ市場を拠点とする東南アジア市場でのビジネス展開やブランド保護を考えるなら、タイでの商標登録について詳しく理解し、専門家の助言を受けることが重要です。