意匠登録とは?

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意匠とは、デザインや形状、色彩などによって美しさや機能性を高めた製品や建築物などの外観デザインのことを指します。つまり、見た目の良さや使いやすさを追求することで、商品価値やブランド価値を高めることができます。意匠を知的財産権として保護するのが意匠権で、そのためには特許庁へ手続を行い、意匠登録する必要があります。

意匠の種類

意匠制度は様々な種類の意匠について多面的な保護ができるようになっています。

全体意匠と部分意匠

意匠には、全体意匠と部分意匠の2つの種類があります。全体意匠は製品や建築物全体のデザインやコンセプトを指し、部分意匠は一部分のデザイン要素を指します。全体意匠はブランドイメージやコンセプトを表現するために重要であり、部分意匠は製品のデザインや機能性において重要な部分をピンポイントで保護するために使われます。

画像の意匠

意匠には、画像の意匠という種類もあります。画像の意匠は、図案やイラスト、写真などのグラフィックデザインによる要素で、印刷物やWebデザインなどで広く使われます。画像の意匠は、視覚的な表現力に優れ、製品やブランドのイメージを効果的に伝えることができます。

建築物の意匠・内装のデザイン

意匠には、建築物の意匠と内装のデザインの意匠もあります。建築物の意匠は、外観デザイン、建物の形状や構造、素材によって表現される美観などを指します。一方、内装のデザインの意匠は、室内のレイアウト、色彩、照明、家具など、建物内部のデザイン要素を指します。どちらも美しさや機能性を高め、建物全体の価値を高めます。また、店舗の内装のデザインはブランド価値を構築するのにも有用です。

関連意匠

意匠法では、一つのコンセプトから多数のバリエーションが継続的に創作され、同一出願人から出願された関連する複数の意匠を関連意匠といいます。これら関連意匠は同等の価値を有するものとして保護され、各々の意匠について権利を行使することが可能です。

秘密意匠

3年を限度として登録意匠の内容を公開せず、秘密にしておく制度が秘密意匠制度です。秘密意匠によって他社に模倣されることを防止し、製品やデザインの独自性を守り、企業のイノベーションを支援することを目的としています。

意匠の重要性

意匠による製品の差別化により、自社製品の競争力の強化を達成できます。また、ブランドイメージの構築と消費者の認知度を向上させることが可能です。その効果は商標やその他の知的財産権との相乗効果があればさらに自社製品の商業的価値を高めてくれます。
意匠の保護は社会全体におけるクリエイティブな産業の発展と文化的貢献に寄与します。

意匠の保護/意匠の登録

個々の意匠は意匠登録することで意匠権が与えられ、法的な保護が認められます。

意匠登録の目的と効果

意匠登録の目的は、企業や個人が保有する意匠を法的に保護し、その権利を確立することです。意匠登録をすることで、製品やデザインの独自性を確保し、模倣品や偽造品の出現を防止することができます。他社の権利を侵害するリスクを低下させます。また、登録された意匠は商業的な価値を有し、ライセンス契約や売却によって利益を得ることができます。意匠登録は、企業のブランド価値の向上や競争力の強化にもつながります。
意匠権を有する者は、権利の範囲内で他者に対して使用、製造、販売、輸入、譲渡などを禁止することができます。また、侵害された場合には、損害賠償を求めることもできます。これにより、製品やデザインの独自性を守り、企業のブランド価値を高めることができます。意匠権は、保有者の権利保護と競争力の強化に不可欠な役割を果たします。

意匠登録の主な要件

意匠登録には以下の要件を満たす必要があります。

意匠に該当するか

意匠法で定義される「意匠」に該当する必要があります。具体的には以下の要件をみたすものである必要があります。
(1)物品、建築物又は画像と認められるものであること
(2)物品等自体の形状等であること
(3)視覚に訴えるものであること
(4)視覚を通じて美感を起こさせるものであること
(5)他の意匠との対比の対象となり得る一定の範囲を占める部分であること

今までにない新しい意匠であるか(新規性)

既に公表された意匠と同一または類似していない必要があります。つまり、その意匠に独自性があることが必要です。ただし、類似している部分があっても、その程度によっては新規性が認められることもあります。意匠の新規性は、その意匠が独自性を持ち、他の既存の意匠とは差別化されたものであるかどうかを判断する重要な要素となります。

容易に創作をすることができたものでないか(創作非容易性)

意匠を創作するために必要な創作力や知識、技能、経験などの要素が、通常の人々が簡単には持ち得ないほど高度であることを指します。つまり、普通の人々が考えつくようなアイデアではなく、ある程度の創造力や専門知識を要するものであることが求められます。この「創作非容易性」の要件は、意匠が特別な価値や優位性を持っていることを示すとともに、意匠法において意匠登録の対象となる条件の一つとなっています。

先に出願された意匠の一部と同一又は類似でないか

先に出願された意匠の一部を出願すると、その部分の範囲が違うため非類似になることがありますが、何ら新しい意匠の創作がないと判断されると登録を受けることができません。

意匠ごとに出願しているか(一意匠一出願)

1つの出願には1つの意匠しか含めることはできません。物品が複数ある場合(※組物の意匠は例外)や物理的に分離した部分からなる意匠(※ただし、1つの意匠としての一体性があれば1つの意匠とみなされます。)が該当します。

他人よりも早く出願したか(先願)

同一又は類似の意匠について二以上の意匠登録出願があったときには、最先の一の意匠登録出願人のみが意匠登録を受けることができます。

その他の不登録事由

日本若しくは外国の元首の像又は国旗を表した意匠、わが国の皇室の菊花紋章や外国の王室の紋章(類似するものを含む。)等を表した意匠、出願人と何ら関係のない特定の人物の肖像や個人情報等を表した意匠は登録できません。
他人の周知・著名な商標や、これとまぎらわしい標章を表した意匠は登録できません。
これら意匠は本来、特許法又は実用新案法によって保護されるべき技術的思想の創作である、といった理由で登録できません。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。