キャラクターを意匠登録するには

キャラクターを意匠登録するには

はじめに:キャラクターと意匠登録の重要性

キャラクターは、その独自性と親しみやすさから、企業やブランドのシンボルとして重要な役割を果たします。商品やサービスの認知度を高め、消費者との感情的なつながりを築く力を持つキャラクターは、競争が激化する現代のビジネスにおいて、他社との差別化に大きく貢献します。しかし、人気キャラクターほど模倣や不正使用のリスクが高まり、企業のブランド価値を損なう危険性があります。そのため、キャラクターの保護は企業戦略において不可欠な要素です。

ここで意匠登録が重要な役割を果たします。意匠登録により、キャラクターのデザインや外観が法的に保護され、不正使用や模倣から守られます。これにより、企業は安心してキャラクターをビジネスに活用できるだけでなく、長期的なブランド戦略の構築も可能となります。意匠登録は、キャラクターの独自性を守り、ビジネスの競争力を高めるための強力なツールです。

意匠登録とは?

意匠とは、製品の形状、模様、色彩など、物の外観に関わるデザインを指します。つまり、製品の美的要素を保護するための制度であり、その外観が市場で消費者に与える印象に大きく影響します。意匠登録を行うことで、独自のデザインが法的に保護され、模倣を防ぐことができます。

意匠登録は商標や著作権とは異なります。商標はブランド名やロゴなど、商品やサービスの識別標識を保護し、著作権は音楽や文学、アートなど創作物に適用されます。一方、意匠登録は製品の外観に特化した保護です。

意匠登録のメリットとしては、デザインを独占的に使用できることが挙げられます。他社が同じデザインを使用することを防ぐことができるため、競争優位性を確保しやすくなります。また、保護範囲は、登録されたデザインと類似するデザインにも及ぶため、デザインに関連するビジネス全体を守ることが可能です。意匠登録は、製品やキャラクターの独自性を維持し、長期的なビジネス展開をサポートする強力な手段です。

キャラクターと意匠登録の関係

キャラクターのデザイン要素は、その形状や色彩、模様などに基づいて意匠登録することで法的に保護されます。例えば、キャラクターの独特な顔立ちや服装、全体のシルエットが意匠の一部として登録されれば、他社が類似のデザインを使用することが制限されます。この保護は、キャラクターの視覚的な要素に特化しており、模倣や不正使用を防ぐための強力な手段です。

さらに、キャラクターが立体物や製品として具体化された場合も意匠登録が可能です。たとえば、フィギュアや玩具、またはキャラクターをモチーフにした雑貨や家具などが意匠登録の対象となります。これにより、立体的なキャラクター製品に対しても法的な保護が与えられ、独自性を守ることができます。

実際のケースとして、人気キャラクターを模倣した製品が市場に出回ることがありますが、意匠登録されていれば、そのデザインを侵害する製品の販売を差し止めたり、損害賠償を請求したりすることが可能です。これにより、キャラクターのブランド価値を守り、ビジネスの信頼性を維持することができます。

キャラクターを意匠登録するプロセス

キャラクター意匠を登録するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。意匠登録の対象となるデザインには、新規性や創作非容易性が求められます。また、先に登録されている意匠と似ていないかが審査されます。

出願時には、特に「新規性」に注意が必要です。デザインを公に公開する前に出願しなければ、登録が拒否される可能性があるため、キャラクターを公開する前に意匠登録出願の手続きを行うのが望ましいでしょう。出願の前に公開した場合であっても、公開してから1年以内であれば、出願にあわせて特別の手続(「新規性喪失の例外」と言います。)をとり、登録できる可能性があります。

登録には、具体的でデザインが明確にわかる製品の図面や写真が必要となります。これに加え、書誌的な情報やデザインを説明する願書が必要になります。複数のデザインバリエーションを登録したい場合は、それぞれのデザインについて同様の提出物が必要です。正確かつ十分な資料を揃えることが、スムーズな意匠登録のための鍵です。

キャラクターの意匠登録の活用

意匠登録が完了したキャラクターは、さまざまな形でビジネスに活用できます。まず、登録されたキャラクターのデザインを独占的に使用できるため、他社が同一または類似のキャラクターを使用することを防ぐことができます。これにより、ブランドの独自性が保たれ、競争力が強化されます。また、意匠登録によって得られた権利は、ライセンスビジネスにも活用可能です。キャラクターを他社にライセンス供与することで、新たな収益源を確保しつつ、ブランドの知名度をさらに拡大することができます。

さらに、意匠登録は模倣品対策としても有効です。市場における模倣品やコピー商品を法的に排除することで、消費者の信頼を守り、ブランド価値を維持することができます。必要に応じて、意匠権侵害に対する警告や訴訟を通じて権利を主張し、ビジネスを保護する手段も取れます。

意匠登録後は、キャラクターのデザインをより積極的に活用し、長期的なブランド戦略に組み込むことが重要です。

キャラクターの意匠登録のポイント

意匠は製品(物品)のデザインであること

意匠は製品(物品)のデザインである必要があるので、キャラクター図だけを意匠登録することはできません。したがって、キャラクターをデザインに利用したキャラクターグッズが意匠登録の主な対象となります。

また、製品(物品)に用いられる画像を意匠登録することができるので、キャラクターを利用した画像意匠の登録も考えられます。ただし、画像の意匠は特殊な要件が求められますので、よく調べるか弁理士などの専門家に相談するか依頼した方がよいでしょう。

画像の意匠登録事例集(引例:特許庁)

新規性の喪失

キャラクターの意匠登録に失敗する主な原因として、前述した「新規性の喪失」が挙げられます。キャラクターのデザインを公に発表した後に出願を行うと、そのデザインが新規性を欠くとみなされ、登録が拒否される可能性があります。このリスクを回避するためには、デザインを公開する前に出願を行うことが重要です。また、出願時に提出する資料が不十分であったり、デザインの特徴が十分に図面、願書で表現されていない場合も、審査で問題となることがあるため、資料の準備には細心の注意が必要です。

すでに知られたキャラクターを利用する場合

すでに知られたキャラクターを利用して新しいグッズ(製品)を作る場合、そのグッズが公開されている、もしくはそのグッズに似ている製品が公開されている、との事実がなければ新規性を失っているとは言えません。

しかし、すでに知られているキャラクターを表示するだけの製品(たとえば、キャラクターをプリントしたTシャツ、キャラクターのぬいぐるみ)だと、創作非容易性を満たしていないとして登録が拒絶されるおそれがあります。単なる転用ではなく、キャラクターを利用した新しいデザインと判断される必要があります。たとえば、下記の登録例ははさみのキャップの部分をキャラクターの形状にして、新しい製品のデザインを創作しているといえます。

意匠登録第1263322号意匠登録第1263322号
【意匠に係る物品】キャップ付きはさみ
(引用:特許庁)

海外での意匠登録

海外展開を目指す企業にとって、国際的な意匠登録も重要です。日本国内で意匠登録をしていても、他国では保護されません。そのため、キャラクターを意匠登録する場合、あわせて主要な市場での意匠登録を行い、グローバルにキャラクターを守ることがビジネス成功の鍵となります。国際登録には各国の異なるルールや手続きがあるため、専門的な知識が必要です。海外の出願手続は6ヶ月の優先権を主張できますので、そうすれば日本の出願後に公開しても6ヶ月以内であれば、新規性は失いません。

このような複雑な手続きをスムーズに進めるためには、専門家に依頼することが大きなメリットとなります。専門家は法律や手続きに精通しており、ミスを防ぎながら確実な登録をサポートしてくれます。

キャラクターの商標登録

新規性や非創作容易性をクリアできず、キャラクターの意匠登録が難しい場合は、商標登録を検討するべきでしょう。商標登録には新規性や非創作容易性は求められませんので、公開の有無に関わらず登録することができます。

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商標・意匠のことならどんなことでも、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。