商標登録のための費用

商標登録のための費用

はじめに

商標登録の重要性

商標登録は、企業や商品の独自性を保護するために重要です。商標はブランドの象徴であり、顧客に信頼を与え、競争力を維持するための重要な資産です。登録された商標は法的に保護され、他者による不正使用や模倣を防ぎます。また、商標権を持つことで、ライセンス契約やフランチャイズ展開などのビジネスチャンスが広がります。商標登録は、企業のブランド価値を高め、長期的な成功を支えるために欠かせない手続きです。

本記事の目的

本記事の目的は、商標登録にかかる費用について詳しく解説することです。商標登録を検討している企業や個人に向けて、各ステップで発生する具体的な費用項目を明確にし、予算計画の参考にしていただくための情報を提供します。また、費用を節約するための方法や、実際のケーススタディを通じて、費用対効果を理解する手助けをします。商標登録の費用に関する疑問や不安を解消し、適切な準備と計画をサポートすることを目指しています。

商標登録の基本プロセス

商標登録までには、商標調査、出願準備、出願手続き、審査、そして登録というプロセスがあります。まず、各ステップを以下に簡単に説明します。

商標調査

商標調査は、主に商標の識別性の調査と先行商標類似調査があります。これにより、将来的なトラブルを避けることができます。商標調査は、自社で行うことも可能ですが、専門の調査機関や弁理士に依頼することが一般的です。調査結果に基づき、商標が登録可能であるかを判断し、出願準備の第一歩となります。事前にしっかりと調査を行うことで、無駄な費用や時間を省くことができます。

出願準備

出願準備では、商標の具体的なデザインや表現を確定させます。次に、商品やサービスの分類を選定し、適切な書類を作成します。弁理士の助けを借りることで、書類の不備や誤りを防ぐことができます。また、必要に応じて商標調査の結果を考慮し、出願内容を微調整することも重要です。準備段階での徹底的な確認が、スムーズな出願手続きを支えます。

出願手続き

出願手続きでは、準備した書類を特許庁に提出する、商標の出願を行います。出願には所定の手数料が必要です。この手続きには、商標の文字、デザイン、使用する商品やサービスの分類、出願者の情報などを正確に記載することが求められます。出願後は、特許庁からの確認通知を受け取り、必要に応じて追加情報や修正を提出することがあります。適切な手続きを行うことで、次の審査段階へ進むことができます。

審査

審査では、特許庁が出願内容を詳しく確認します。商標の識別性や先行商標との類似性を評価し、法的要件を満たしているかを審査します。不備や問題がある場合、特許庁から通知が送られ、必要に応じて補正書や意見書を提出します。審査期間は数か月から1年以上かかることもありますが、このプロセスを経て商標登録の可否が決定されます。

登録

登録は、審査を通過した商標が正式に登録される最終段階です。特許庁から登録料の支払い通知が届いた後、所定の登録料を支払います。登録料の支払いが完了すると、商標登録証が発行され、商標権が正式に発生します。この商標権は、商標の独占的使用権を意味し、他者による無断使用を防ぐ法的保護が得られます。登録された商標は、指定された期間有効であり、定期的な更新手続きを行うことで長期の保護が可能です。

商標登録にかかる各費用

上記の各ステップに関する費用を説明します。

商標調査費用

事前調査費用は、商標登録を検討する際に必要な費用です。自分で行う場合や弁理士など専門家に依頼する場合があります。専門家に依頼する場合、手数料費用が発生します。自分で行う場合でも、無料の商標データベースを利用すれば費用はかかりませんが、有料のデータベースを利用した場合、その費用が発生します。

独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)では無料で特許庁が公開する商標データを検索することができます。

弁理士手数料費用は1区分あたり1万円~5万円という特許事務所が多いようですが、出願も依頼する場合、後述する出願費用に含めて調査費用自体は請求しないという特許事務所もあります。

出願費用

出願費用は、商標出願の際に発生する費用です。主に出願書類作成、コンサルティングなどにかかる手数料費用と特許庁に支払う出願料から構成されます。手数料費用は、弁理士など専門家に依頼する場合に発生します。出願料は、商標登録出願を特許庁に提出する際に必要な料金で、商標の使用する商品や役務(サービス)の区分数に応じて決定されます。出願料は特許庁のウェブサイトで確認することができますが、3,400円+(区分数×8,600円)となります。

弁理士手数料は、弁理士会が特許事務所に行ったアンケート(引用:日本弁理士会)(以下「費用アンケート」とします。)では、1区分の場合5万円~8万円、3区分の場合12万円~15万円という額が最も多かったようです。区分数が増えると発生する作業も増えるので、弁理士などの手数料費用も区分数に応じて増額されることが多いです。

登録できなければ返金をうたう特許事務所もありますが、通常は作業に対する報酬として請求されますので、返金は行わないのが一般的です。

中間手続費用

中間手続費用とは、審査中に発生する費用のことを言います。審査官から補正指令や拒絶理由通知が送付される場合、その応答、手続補正書、意見書の提出などが必要になります。専門家に依頼した場合、その手数料費用が発生します。補正手続きは、登録申請の書類に誤りや不備があった場合に必要とされ、意見書は審査官の判断に対して反論する書面です。これらの手続きは商標登録を円滑に進めるために重要であり、専門家のアドバイスや支援を受けることが望ましいでしょう。

手続補正書も意見書も特許庁に支払う費用はありません。弁理士手数料は補正指令や拒絶理由通知の内容によりますが、手続補正書が3万円~5万円、意見書が3万円~10万円というところが多いでしょう。

登録費用

登録費用には、審査を通過した商標が特許庁によって登録される際に出願人が支払う登録料があります。この登録料の支払いによって、商標は登録され10年間存続する商標権が認められます。登録料は商品や役務(サービス)の区分数に応じて料金が異なり、区分数×32,900円です。登録料は5年分を2回にわけて納付することもできますが、合計金額は一括で納付する額よりも高くなります。その場合、登録料は区分数×17,200円です。特許庁のウェブサイトで確認することができます。

特許事務所に依頼する場合、登録料の納付手数料、成功謝金といった費用が発生する場合があります。費用アンケートでは1区分の場合4万円~6万円、3区分の場合8万円~11万円という額が最も多かったようです。出願の手数料と同様に区分数に応じて増額されることが多いです。

更新費用

更新登録料は、商標の有効期限が終了する際、更に商標権を存続させるために特許庁に支払う料金です。商標登録は一般に10年間有効であり、有効期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。更新登録料には、商品や役務(サービス)の分類数に応じて料金が異なります。更新登録料は特許庁のウェブサイトで確認することができます。商標の保護を維持するためには、定期的に更新手続きを行うことが重要です。期限を過ぎて更新手続きを怠ると、商標権は失効しますので、注意が必要です。

更新手続を特許事務所に依頼する場合、通常、手数料費用が発生します。費用アンケートでは1区分の場合4万円~6万円という額が最も多かったようです。区分数に応じて増額されることもあります。

商標登録費用の考え方

事前調査の徹底

商標登録を検討する際には、事前の調査によって後々の中間費用の無駄を避けることができます。また、審査の結果により登録できない場合、通常、出願時に発生した費用は返金されません。調査によって、出願時の費用が無駄になるリスクを抑えることができます。

自己申請 vs. 弁理士利用

自己申請の場合、費用は抑えられますが、商標法や手続きに関する知識が必要です。知識のなさから登録できなかったり、適切な範囲の権利が取得できない場合があります。弁理士に依頼すると、専門知識を活用して正確な手続きを行うことができ、リスクを抑えることができますが、その分費用がかかります。

見積り

商標登録にかかる具体的な費用を明確に把握するために、複数の特許事務所や法律事務所から見積もりを取ることが望ましいでしょう。見積りを比較し、サービス内容や費用対効果を考慮して最適な選択を行うことができます。

まとめ

商標登録費用の理解と適切な管理は、ブランド保護とビジネスの成長に不可欠です。事前の調査と計画を通じて、効果的な費用対効果を実現しましょう。

お問い合わせ・ご相談はこちら

商標・意匠のことならどんなことでも、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。