意匠登録とは?

意匠登録までの流れ

意匠を決める

意匠登録の対象は、独創性や美的価値、産業上の利用可能性などに基づいて選定されます。特に、他のデザインとの差異や新規性が重視されます。また、商業的価値や市場需要も考慮され、製品自体やパッケージ、画面デザインなど様々な分野が対象となります。

意匠に係る物品(意匠の対象物)

意匠に係る物品には、製品の外観や形状、模様、色彩、パッケージデザイン、画面デザインなどが含まれます。家具、家電製品、車両、時計、アクセサリー、ファッションアイテム、コスメパッケージ、食品パッケージなど、さまざまな製品やデザイン要素が対象です。

意匠調査

意匠調査は、新しい意匠を登録する前に類似した既存のデザインが存在するか確認するために行われます。これにより、他の登録や保護されたデザインとの重複を避け、法的問題や競合のリスクを軽減できます。調査は、特許庁のデータベースを活用し、同様のデザインや登録状況を調べます。重複するかどうかの判断には専門家の支援が有効です。適切な意匠調査は、独自性や有効性の確保に重要な役割を果たします。

意匠登録出願

意匠登録を受けようとする場合、決められた内容を記載した願書に意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面(代用の写真、ひな形、見本)を添付して出願する必要があります。
オンライン出願と紙面での出願が可能です。オンライン出願する場合、電子証明書(法人の場合、法務省電子認証登記所の発行する電子証明書、個人の場合、マイナンバーカード)が必要です。インターネット出願ソフトをセットアップし、オンライン出願を行うことができます。

願書

願書には以下のような項目を記載します。
・出願人の氏名または名称、住所、国籍または居所:出願者の基本情報を記載します。
・意匠に係る物品:意匠の物品名を記載します。
・創作者の氏名または名称、住所、国籍または居所:意匠創作者の基本情報を記載します。
・出願日:出願日を記載します。
・優先権の主張:他国での同一意匠を出願していて、優先権を主張する場合に、その主張内容を記載します。
・意匠の説明:意匠に係る物品の全部または一部が透明であるなど、意匠の補足説明を記載します。
・意匠に係る物品の説明:意匠に係る物品の補足説明を記載します。

図面、写真、見本

意匠登録を受けようとする意匠を特定するため、図面、写真、見本を提出することができます。

図面の注意点

意匠を特定するため線図やCG図を作成します。出願にかかる図面は様式で定められた作図方法が求められます。各図同一縮尺で作成し、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図のうち、意匠登録を受けようとする意匠を明確に表すために十分な数の図を記載します。各図で整合性が求められます。

写真の注意点

図を記載した図面に代えて、写真を添付して意匠登録出願をすることができます。写真とする場合も、形状等の表し方は図面の場合と同じです。つまり、6面図等の各図それぞれを、図が表す面と同じ方向の面を撮影した写真に置き換えた表し方となります。

見本の注意点

一部の物品については、図面に代えて見本又はひな形を添付して意匠登録出願することができます。見本又はひな形により意匠を表すことができるものは、規則に定められた材質、大きさ等が制限の範囲内のものに限られます。また、提出された見本又はひな形は、出願図面を代用するものとして取り扱うため、返還されません。

新規性喪失の例外

意匠登録出願前に公開された意匠は原則的に登録できませんが、展示会や刊行物、ウェブサイトで公開後、特定の条件を満たして意匠登録出願する場合、新規性が喪失しないとの例外規定があります(意匠法第4条)。適用するには、公開日から1年以内に出願し、願書に特記事項欄に適用を明記し、出願日から30日以内に要件を満たす書面を提出する必要があります。また、出願人の意に反した公開である場合もこの規定が適用されます。

優先権

意匠登録出願の優先権とは、最初に出願した日本以外の国や地域の出願日を基準に新規性などが判断されるという制度です。最初に出願した国や地域の出願日から6ヵ月以内に日本に出願する必要があります。優先権を主張する場合は、先行出願に関する情報を出願書類に記載する必要があります。

審査

審査では、出願された意匠が上述した法律上の保護要件を満たしているかどうかが調べられます。出願書類の不備があれば指摘され、補正を求められる場合があります。審査を通った場合は登録され意匠登録証が交付されます。一般的に意匠登録出願の審査期間は、出願日から5〜7ヶ月程度です。

拒絶理由通知とは

意匠登録出願が審査で拒絶された場合、「拒絶理由通知書」が出願人に送付されます。この通知書には、拒絶理由、上述した保護要件が満たされていない旨が記載されています。出願人はこの通知書をもとに、意見書や手続補正書の対応することができます。出願人は、拒絶理由通知書に示された期限内に対応しなければ、拒絶査定となります。

意見書

意匠登録出願で拒絶理由通知が来た場合、出願人は拒絶理由に対して反論することができます。この反論する書面が意見書です。意見書では拒絶理由に該当しない理由、その説明や裏付け資料を提出することができます。審査官がその内容を認めれば、再度審査を行い、意匠登録が認められる可能性があります。ただし、意見書を提出しても必ずしも意匠登録が認められるわけではありません。意見書を提出する場合は、内容を十分に検討し、適切な説明や裏付け資料を用意することが重要です。

手続補正書

意匠登録出願の願書や図面に不備があることを理由に拒絶理由通知が送付されることがあります。不備が修正可能な場合には手続補正書を提出することができます。手続補正書によって図面の再提出などの対応が可能です。また、手続補正が複数回にわたる場合もあります。手続補正に応じて、修正が必要な出願書類の内容を理解し、審査官に確認するなど適切に修正を行うことが重要です。

登録料の納付

意匠登録出願が登録査定を通過し、意匠登録が認められると、登録料を納付する必要があります。登録料を納付することで、意匠登録が完了し、意匠権が発生します。意匠登録料の納付方法は、以下の6つがあります。
①特許印紙を購入し、意匠登録料納付書に貼り、窓口または郵送で提出する方法。
②特許庁に予納台帳を開設し、予納台帳番号と納付金額を記載した意匠登録料納付書を提出する方法。
③銀行から料金を納め、振込番号を記載した意匠登録料納付書を窓口または郵送で提出する方法。
④電子出願ソフトで「納付番号」を取得し、インターネットバンキングまたはATMから料金を納め、納付番号を記載した意匠登録料納付書を提出する方法。
⑤銀行口座を特許庁に登録し、付与された「振替番号」と納付金額を記載した意匠登録料納付書をオンラインで提出する方法。
⑥電子出願ソフトを使ってクレジットカード会社による「指定立替納付」であることと納付金額を記載した意匠登録料納付書をオンラインで提出する方法。

早期審査

意匠登録出願の早期審査とは、特別な手続きによって、優先的に審査を受けることができる制度です。①権利化について緊急性を要する実施関連出願、または②外国関連出願は早期審査の対象とすることができます。早期審査では通常の審査期間よりも短い期間、2~3ヶ月程度、で審査が行われます。

費用

意匠登録出願にあたって16,000円を特許庁に納付する必要があり、登録後は年ごとの登録料、第1年から第3年までは 毎年8,500円、第4年から第25年までは毎年16,900円を納付する必要があります。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。