意匠登録とは?

意匠と商標

商標権と比較した意匠権のメリット・デメリット

ブランドや商品名・マークを保護する商標権に対して、意匠権は商品全体の形状やデザインなどを保護する権利です。形状などに関する商品の個性や特徴を保護することができ、商品全体の模倣品・類似品に対して有効です。
他方で、意匠権は、商標権と比較して保護期間が短く、最長で25年間しか保護されません。また、商品の形状やデザインに対する保護範囲が狭いことが課題となっています。

意匠権と商標権の知財権ミックス

意匠権と商標権は相互に補完的な関係にあり、両者を有効に活用し多面的なブランドイメージ・商品イメージの保護を図ることが重要です。両者を組み合わせることで、商品の見た目や名称、機能などの複数の側面から保護することができます。また、商標権と意匠権を持っていることは、ブランド価値を高め、競合他社に対する優位性を獲得するための有力な手段となります。したがって、知財権ミックスによる相乗効果は、企業の商品開発やマーケティングにとって重要な役割を果たすことができます。

意匠と特許

特許権と比較した意匠権のメリット・デメリット

意匠権は、特許権と比較して出願から登録までの審査期間が短いため、早い段階で商品を保護できます。また、意匠権は商品のデザインに対する保護が可能なため、ブランド価値を高めるという効果もあります。
他方で、意匠権は特許権に比べて保護範囲が狭いため、変更を加えた模倣品を有効に防げないことがあります。また、商品の形状やデザインに関する設計のアイデアやコンセプトは、意匠権による権利化が難しいことがあります。

意匠権と特許権の知財権ミックス

意匠権と特許権を組み合わせた知財権ミックスによって、商品や技術の保護範囲が広がり、相乗効果を生み出すことができます。特許権は技術的な発明を保護するための権利であり、意匠権は商品の形状やデザインを保護するための権利です。両者を組み合わせることで、同じ商品や技術に対して、形状やデザイン、機能などの複数の側面から保護することができます。また、特許権と意匠権を持っていることは、ブランド価値を高め、競合他社に対する優位性を獲得するための有力な手段となります。したがって、知財権ミックスによる相乗効果は、企業のイノベーションやビジネス展開にとって重要な役割を果たすことができます。

意匠の多角的保護

部分意匠

部分意匠とは、製品の特徴的な一部分のみについて登録および権利化することです。製品の特定の部分の外観や形状に対する保護が可能となります。これにより、製品の一部だけが模倣された場合でも、意匠権による防衛が可能となります。また、1つの製品の中で部分意匠を複数登録することで、保護のバリエーションを増やすことができ、より多角的な防衛が可能になります。これにより、模倣行為に対する防衛力が強化され、商品価値やブランドイメージを守ることができます。

関連意匠

バリエーションのデザインを保護する関連意匠によって、保護範囲を広くでき、模倣に対してより広範囲な防衛が可能になります。また、法改正により関連意匠の関連意匠も可能となり、より広範囲の保護が可能になるとともに、出願の時期的要件も大幅に緩和されたため、時間的にも保護の範囲が拡大されました。

権利化すべき意匠の検討

部分意匠と関連意匠を組み合わせた意匠戦略は、模倣に対して多角的かつ広範囲な防衛を可能にし、商品価値やブランドイメージの維持・向上が可能となっています。企業は、部分意匠や関連意匠を活用した意匠戦略を検討し、自社の製品デザインを積極的に保護することが求められています。
意匠戦略のためには、デザインに昇華された製品のデザインやそのコンセプトを言語化し、保護したい部分や創作のポイントを整理することが必要です。そうすることで、結果として関連意匠や部分意匠をどのように取得すべきなのかが明らかになります。

意匠権の活用方法

意匠権は、デザインや形状などの美的要素に対する権利を保護する制度です。製品やサービスの差別化やブランディングにおいて重要な役割を果たす意匠権は、企業や個人が持つ知的財産のひとつです。意匠権を活用する上での具体的な目的・方法について解説します。

他社への牽制

意匠権を持っている場合、同じようなデザインや形状を持つ他社の製品を販売することを阻止することができます。このような意匠権の保護により、他社が同様のデザインや形状の選択を躊躇するようになり、企業の競争優位性を高めることができます。さらに、他社が模倣するリスクを低めて自社の製品を改良することができ、製品の品質向上やイノベーションを促すことができます。このように、意匠権は企業の競争優位性を維持するために非常に重要な役割を果たします。

模倣品・類似品の排除

意匠権は、自社の製品やサービスを模倣した悪質な模倣品を排除するための法的手段として活用されます。意匠権を侵害した場合、法的措置を取ることができ、模倣品の製造や販売を差し止めることができます。このように意匠権による保護により、不当な競争行為を防止することができます。また、消費者に対しても、品質の低い偽物や模倣品との混同を防止し、安心して製品を購入することができるため、ブランド価値を維持・向上させることが可能です。

他社の権利侵害を回避

意匠権の取得は、自社のデザインや形状が他社の権利を侵害するリスクを低下してくれます。特に、似たようなデザインや形状を持つ製品を販売する競合他社が多い業界では、意匠権の取得が有用です。意匠権を取得することで、自社が独自に開発したデザインや形状に法的な正当性を与えることができます。このように意匠権を取得によって、法的トラブルを未然に防止することができます。

信頼性の向上・ビジネス機会の拡大

意匠権を取得することにより、自社のデザインや形状が法的に保護され、他社の権利侵害でないことを担保できます。これにより、顧客からの信頼が高まることが期待できます。また、他社が安価な模倣品を製造しても、それらの販売を差し止めることができるため、取引先の利益を守ることができます。意匠権を取得することで、企業は自社の競争力を維持し、ビジネス機会を拡大することができます。

特許の補完

意匠権は、外観の形状に関する権利を保護するための法的手段です。特許と比較すると、技術的特徴に関する権利を保護する特許よりも侵害の判定が容易であり、権利侵害の立証がしやすいというメリットがあります。特に、高度な技術が必要ではない製品については、特許を取得することが難しい場合がありますが、その外観の形状については意匠で保護が可能です。このような点から、企業は特許と併せて意匠権を取得することで、製品の権利侵害からの保護をより確実なものにすることができます。つまり、意匠権は特許の補完的な役割を果たすことができ、企業の知的財産戦略の一環として活用することができます。

ブランド形成

企業が製造する製品の外観やパッケージデザインなどが独自性を持ち、他社から模倣されにくい場合、それがブランド力を高めることに繋がります。このような独自性を意匠権で法的に保護することにより、類似品の出回りを防ぎ、ブランド力を向上させることができます。また、意匠権を取得することで、企業の商品が消費者にとって視覚的に認知しやすくなるため、ブランドイメージの定着や商品の差別化が図れることもあります。さらに、意匠権を活用することで、企業の商品ラインナップの中でも特に重要な製品に対して、ブランド力の強化やマーケティング戦略の展開につながるメリットもあります。企業は、意匠権を活用することでブランド力を向上させ、消費者の信頼を獲得することができます。

外国の審査・紛争でアピール

海外での意匠侵害訴訟や審査において、日本での意匠権取得は有利となります。日本の審査基準は厳格で、有効な権利を取得することができます。また、訴訟においても、日本での審査結果や参考文献を証拠として提出することができ、訴訟の有利な展開につながります。さらに、日本の意匠権を海外に広く出願することで、海外での侵害に対して強い牽制力を発揮することができます。このように、日本での意匠権取得は、海外での紛争解決においても有利であり、グローバル展開を考える上で重要な戦略の一つと言えます。

水際規制

意匠権を取得することによって、自社製品の外観が模倣された商品が海外から輸入された場合、税関に対して差止め申立てを行うことができます。差止めにより、模倣品の国内市場への流入を阻止し、自社の商品の独自性を保護することができます。また、差止めが認められた場合、模倣品の輸入業者に対して賠償を請求することも可能です。意匠権の取得は、自社製品のブランド価値を高めるとともに、模倣品の輸入差止め申立てなどの手段を得ることができるため、企業の競争力を向上させることができます。

意匠権を担保に融資

デザインの価値を客観的に測定することは難しいですが、意匠権を取得することで、金融機関はその権利を担保として融資が容易になります。企業の社会的信用にもつながる意匠権を活用することで、資金調達の柔軟性が高まります。意匠権は、製品やブランドの差別化を図り、競争力を高める上で欠かせないものであり、それを金融機関が認めることで、企業のビジネスチャンスも広がります。

創作意欲を活性化

意匠権は、企業の社内における創造性と創作意欲を刺激することにも役立ちます。意匠権を取得し、創造的なアイデアやデザインに対する保護を与えることで、社員は自信を持って創作活動に取り組み、積極的に新しいアイデアを提案するようになるかもしれません。また、意匠権を持つことで、他社と差別化するためのユニークなデザインを作り出すことが可能になり、競争力の向上につながるかもしれません。これにより、社内の創作意欲を高め、ビジネスの成長を促進することができます。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。