アメリカで商標登録及びその維持のためには、マドプロ出願・外国出願・外国登録に基づいた出願の場合、登録から5~6年の間及び更新手続時(登録から9~10年の間)、それ以外の出願(使用意思に基づく出願、使用に基づく出願)の場合、それに加え登録されるまでに商標の使用証拠の提出が要求されます。
どのようなものが商標使用証拠として満たされるかは、TMEP(審査手続商標マニュアル)に詳細が説明されていますので、今回は、そこにある注意点を紹介してみたいと思います。特に、商品商標について、ウェブページを使用証拠として提出する場合の注意点は参考になると思います。
https://tmep.uspto.gov/RDMS/TMEP/current#/current/TMEP-900d1e636.html
[toc]
ラベルとタグ
商品や商品の包装に付けられるラベルやタグは基本的に使用証拠として認められます。商品や商品の包装に付けられたラベルやタグを写真にとって使用証拠として提出するのが最も一般的です。
ディスプレイ上の表示
コンピュータプログラム、ビデオ、および映画等のコンテンツを商品とする場合、ディスプレイ上に表示された商標のスクリーンショットを使用証拠とすることができます。ダウンロード可能なコンピュータソフトウェアについては、インターネットウェブサイト上のダウンロード画面にある商標のスクリーンショットを使用証拠とすることができます。
カタログ
カタログは使用証拠として認められます。ただし、商品を注文するために必要な情報(例えば、注文フォーム、発注のための電話番号、住所、または電子メールアドレス)を含む必要があります。
商品を表示したウェブページ
ウェブページは、次の場合、商品商標の使用証拠として認められます。
(1)商品の画像または文言による説明を含む
(2)商品に関連する商標を表示する
(3)商品を注文するための特定された手段が提示されている
ウェブサイトは第三者のウェブサイトでも問題ありません
アメリカのデパート「macy’s」のオンラインショップで、「LACOSTE」の商品が販売されている例です。商品(ベッドリネンなど)の写真、その価格が表示されており、商品の情報に近接して商標「LACOSTE」が表示されていますので、この商標がその商品に関連した商標であると分かります。また、ページ右上には「shopping bag」のリンクがあり、商品を注文するための手段が提示されています。
使用証拠として不適切な例:商標と商品との関連性が明確である必要があります
この商標の指定商品は「公共事業および公共資産の管理のためのコンピュータソフトウェア」です。ソフトウェアに関する記述があるのですが、商標はその記述と離れたページ左下に配置されています。また、ウェブページ上に多数の他のマークが存在し、左側のサイドバーには、ソフトウェアに関連しないビジネスに関する記事やニュースへのリンクがたくさんあります。そうすると、商品と関連してこの商標が関連付けられて使用されているのかが不明確となってしまいます。
と言うわけで、このウェブページは商標の使用証拠として不適切と見なされました。
商品商標ではなく小売りサービス商標の使用と見なされる例1
商標「macy’s.com」がウェブページの上部に表示されていますが、小売のオンラインショップの多くがこの位置に商標を配置しますので、小売りサービス商標の使用と見なされる可能性が高くなります。さらに、他の商品商標と思われる商標(「Cuisinart」、「Club Room」、「Charter Club」、「Ralph Lauren Polo」)が同ページ内に表示されていることも、対象商標が小売りサービス商標とみなされる原因になります。
商品商標ではなく小売りサービス商標の使用と見なされる例2
ウェブサイトのURLに対象商標が含まれていると、商品商標とは認められず、小売りサービス商標と見なされます。
また、同一のウェブページ内に第三者の商標を含むフレーズ(「Tektroniの最先端トナー」または「Xerox / Tektronixトナーのリーディング価格」など)が表示されていると、小売りサービス商標の使用とみなされる原因となります。
商品商標の使用と見なされる例
商標「RING IN THE NEW YEAR WITH OUR RINGS」の使用証拠例です。商標はウェブページの左上ではなく、一番下に配置され、その後に「TM」が付いています。「TM」は「Trademark」の略で、全般的な商標を意味することもありますが、「SM」(サービスマーク)に対して、「商品商標」を指し示す語なので、対象商標が商品商標であることを認識させてくれます。
また、商標の中に「RING」という商品を示す語が含まれていることも商品商標と判断される要因になります。
注文に関する手段と認められるもの
注文に関する手段と認められるものには以下のようなものがあります。
- 「ショッピングカート」ボタンや「ショッピングバッグ」ボタンとリンク
- 注文のための電話番号の表示
- 注文のためのEメールアドレスの表示
単なる「お問い合わせ」のボタン、リンクは注文に関する情報とは認められません。
使用証拠と認められないもの
広告のパンフレット、価格リスト、プレスリリースなどのお知らせ、名刺、店舗の紹介、検索エンジンの検索結果ページ、ソーシャルメディアに表示されるオンライン広告バナーなどは使用証拠と認められません。さらに、社内業務を行うために使用される書類(請求書、送付状、保証書)や社名が入ったメモ用紙といった文房具などのグッズも使用証拠と認められません。
※上記記事の内容、画像はUSPTOのTMEP(審査手続商標マニュアル)からの引用です。https://tmep.uspto.gov/RDMS/TMEP/current
出願費用は?
直接出願の場合、現地費用(現地の特許事務所・法律事務所、特許庁に支払う費用)と日本の特許事務所の費用で25万円~、マドプロ出願の場合、トータルで25万円~の費用が発生します。
※上記費用はあくまで弊所を通じて行う場合の参考費用で、区分数、商標の種類、為替レートなどで変動します。是非お見積もりのお問い合わせをください。マドプロ出願の場合、同時に出願する国が多いほど割安になります。