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トランプ大統領で知財はどうなる?TPPの行方は?

執筆者 : 木村純平

whitehouse米国大統領選挙は世界の予想を裏切り、共和党のドナルド・トランプ氏が民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を破り、第45代大統領に就任することが確定しました。

トランプ氏と言えば、「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(アメリカを再び偉大に)」をトレードマークとして商標登録していることが知られています。米国特許商標庁のデータベースを見てみますと、この商標登録(登録第5020556号)には、Tシャツやステッカーなどの選挙グッズの他に、「Political campaign services, namely, promoting public awareness of Donald J. Trump as a candidate for public office(政治運動にかかるサービス、すなわち、ドナルド・トランプの公的職務の候補としての公衆の関心を高めるサービス)などといった特殊でおもしろいサービスも指定されています。

また、この商標登録を有しているのが、選挙戦のために作られた会社と思われる” DONALD J. TRUMP FOR PRESIDENT, INC.”(日本語に訳すと「“ドナルド・トランプを大統領に”株式会社」とでもすればよいでしょうか)となっているのも、人々の関心を集める技術で大統領にまで昇りつめたトランプ氏らしいネーミングです。

その他にも、トランプ氏は、トランプ氏個人名義で「TRUMP」「TRUMP TOWERS」など300件あまりの商標登録と出願を有しており、ビジネス界出身だけあって商標権をはじめとする知的財産権の価値を十分に知っている方だと思われます。

日本の知財政策への影響

ところで、トランプ大統領の誕生で、日本にとっては、外交政策などで大きな影響を受けることが懸念されていますが、知財の分野においてはどうなのでしょうか?過去のトランプ氏の発言から最も懸念されるのは、アメリカのTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱です。すでに複数のメディアでは、オバマ大統領が任期中の議会承認を断念したとの報道もなされています。

TPPとは一言で言うと、アジア太平洋地域の参加国間における経済障壁を無くして、1つの経済圏を構築しようとするものです。その中で、知的財産権も1つのトピックであり、「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」が衆議院を通過し、現在、参議院で審議されようとしています。個別の法律改正の主な内容は以下の通りです。

(TPP政府対策本部HP:http://www.cas.go.jp/jp/tpp/torikumi/index.html#seibihouan

  1. 著作権法
    • 著作物及び著作隣接権の保護期間の延長
    • 著作権等侵害罪の一部非親告罪化
    • 法定損害賠償又は追加的損害賠償に関する制度整備
    • 著作物の利用を管理する技術的手段(アクセスコントロール)に関する制度整備
    • 配信音源の二次使用に関する使用料請求権の付与
  2. 特許法
    • 特許権の存続期間の延長制度
    • 発明の新規性喪失の例外期間の延長
  3. 商標法
    • 商標の不正使用についての損害賠償

もっとも大きな改正は著作権法に関する改正です。著作物などの保護期間が現在50年のものが70年となり、著作権等侵害罪の一部の非親告罪化など、より著作権を強化する方向への改正と言えるでしょう。

また、上記商標法の改正により、商標権侵害が生じた場合、その侵害者の使用した商標が登録商標と社会通念上同一の場合、商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額(最低額)として請求することが出来るようになります。

(内閣官房「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の概要」:http://www.cas.go.jp/jp/houan/160308/siryou1.pdf

しかし、これら知的財産関連改正法案の施行日は、TPPが日本国について効力を生ずる日とされていますが、これは「2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えるか」、もしくは「2年以内にそれが終わらなかった場合は、12か国のGDPの85%以上を占める少なくとも6か国が手続きを終えれば」、その時点から60日後に協定が発効する仕組みになっています。

よって、米国のGDPはTPP加盟国の約60%ですので、米国がTPPから離脱した場合、TPPが発効する可能性は実質的に無くなってしまいます。

米中関係

また、トランプ氏は中国に対し、知的財産権の侵害を止めさせ、違法な輸出補助金を無くさせるとの政策も掲げています。したがって、中国の模倣品に対しては強い対抗措置が執られる可能性があります。トランプ氏は、中国で、商標「TRUMP」を現地の中国人に出願され、訴訟に敗訴した経験を持つとの話もありますので、ぜひとも中国の模倣品、冒認出願には強い態度で臨んでもらいたいものです。

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

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  • この記事を書いた人

木村純平

2013年日本弁理士会意匠委員。2008~2011年日本弁理士会著作権委員(2011年副委員長)。2006年弁理士試験合格。日本弁理士会(JPAA)、日本商標協会(JTA)所属。1975年生まれ。

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