アメリカ商標登録出願と登録後のフロー:5種類の出願のプロセス

アメリカでビジネスを展開する際には、商標登録が必要不可欠です。しかし、商標登録は複雑な手続きであり、タイムラインやプロセスを理解することが重要です。本記事では、USPTO(アメリカ特許商標庁)の情報をもとに、アメリカ商標登録出願のタイムラインと登録後のプロセスについて解説します。

商標登録出願のタイムライン

以下ののタイムラインは、商標出願の手順や期間、商標登録の維持に必要な手続きや期限を示しています。商標登録出願は法的プロセスであり、必要な要件や期限を満たし、料金を支払う必要があります。商標登録が必ずしも保証されるわけではありません。商標登録が成立した場合、維持に必要な法的要件や期限、料金の支払いが必要となります。

何を根拠とした出願か?

商標登録出願のタイムラインは、出願の根拠によって異なります。以下のように商標法の異なる条文に基づく出願根拠があります。

  • アメリカ領域内で使用中の商標(第1条(a))
  • アメリカ領域内で近い将来使用する意思のある商標(第1条(b))
  • 同一商標同一商品役務について6ヵ月以内に外国で出願している場合(第44条(d))
  • 外国で同一商標同一商品役務の商標登録をもっている場合(第44条(e))
  • マドリッド協定に基づく出願の場合(第66条(a))

アメリカ領域内で使用中の商標(第1条(a))

ステップ1:出願手続

商標を使用していることを理由に、商標登録出願を行います。出願にはUSPTOシリアル番号が割り当てられます。シリアル番号から商標ステータス・文書検索システム(TSDRシステム)で、出願状況を確認できます。約6〜9ヵ月後に、ステップ2に進むことができます。

ステップ2:出願審査

商標登録出願が形式要件を満たしている場合、担当の審査官に割り当てられます。審査官は、商標登録が登録要件をみたしているかを検討します。出願手数料は、出願が後に拒否された場合でも、一般的に返金されません。約1ヵ月後に、ステップ3aまたはステップ3bに進むことができます。

ステップ3a:商標の承認と公告

審査官が拒絶理由を見つけなかった場合(あなたの出願が全ての法的要件を満たしている場合)、商標登録がUSPTOの商標公報(TMOG)に掲載されることになります。TMOGは、オンライン上で週ごとに公開され、商標登録を一般に予告する役割を果たします。商標登録が承認されてから約1ヶ月後、商標はTMOGに掲載されます。

商標がTMOGに掲載されてから30日以内に、その商標登録によって自分のビジネスが損害を受けると信じる人は異議申立を提出することができます。異議申立は、連邦裁判所の手続きに似ていますが、商標審判部(TTAB)の審判官によって審理され、決定されます。異議申立によって商標登録が遅れる場合があります。もし異議申立されると、USPTOから通知があります。異議申立は複雑な手続きであるため、米国の弁護士を指定する必要になる場合があります。異議申立期間経過後、約3か月でステップ8に進みます。

ステップ3b:オフィスアクション

もし審査官がその商標登録を拒絶する理由を見出した場合、審査官はオフィスアクションの書面を発行し、その拒絶理由を説明します。あなたは、オフィスアクションが発行された日から3か月以内に回答する必要があります。3か月以内に、ステップ4aまたはステップ4bに進みます。

ステップ4a:応答手続

オフィスアクションに対して、3ヶ月以内に回答を提出しなければ出願が却下されてしまいます。よって、審査官の意見書に対し、適切に応答することが必要です。応答提出後は1〜2ヶ月後に、次のステップ(ステップ5aまたは5b)に進みます。

ステップ4b:応答せず出願が放棄される

オフィスアクションが発行された日から3か月以内に応答しない場合、出願は放棄されます。手数料を支払うことで、追加の3か月の延長をリクエストすることができます。応答期限が切れた後、放棄の通知書が送信されます。出願料は払い戻しされず、出願の処理が再開されず、商標は登録されません。この状況では、申立書を提出し、申立料を支払うことで、出願の処理を再開する必要があります。申立書は、放棄通知書が発行された日から2か月以内に提出する必要があります。放棄日から2か月後に申立書を提出した場合、申立書は期限切れとして却下され、新しい申請を新しい手数料で提出するしか選択肢はありません。

ステップ5a:商標の承認と公告

上記ステップ3aと同様に商標の承認と公告が行われます。異議申立期間経過後、約3か月でステップ8に進みます。

ステップ5b:最後のオフィスアクション

応答によってもすべての拒絶理由を克服できない場合、審査官は「最後の拒絶理由通知」(最後のオフィスアクション)を発行し、拒絶理由を最終的に指摘します。出願人は商標審判部(TTAB)に申し立てて、審査官の決定を不服とすることができます。また、拒絶理由を克服するためさらに応答を提出することもできます。場合によっては請願書を提出することができます。3か月以内に、ステップ6aまたはステップ6bに進みます。

ステップ6a:TTABへの申立、最後の拒絶理由通知への応答

あなたの出願を継続するには、TTABに控訴するNotice of Appealを期限内に提出する必要があります。また、最後の拒絶理由通知に対して応答を提出することもできます。しかし、控訴も応答もしない場合、出願は放棄され、商標は登録されません。この場合、出願料は返金されません。約1〜2か月後に、ステップ7aまたはステップ7bに進みます。

ステップ6b:応答せず出願が放棄される

上記ステップ4bと同様に応答しない場合、出願は放棄されます。

ステップ7a:商標の承認と公告

上記ステップ3aと同様に商標の承認と公告が行われます。異議申立期間経過後、約3か月でステップ8に進みます。

ステップ7b:TTABの審理

TTABに控訴した場合、控訴はTTABによって処理されます。

ステップ8:登録

あなたの商標がTMOGに掲載されてから約3ヶ月以内に、異議が申し立てられなかった場合、または、異議申立があったが却下された場合、商標が登録されます。商標が登録された後は、登録を有効に維持するために定期的に維持手続を行う必要があります。

ステップ9:第8条宣誓書

商標登録日から最初の6年間が終了する前、または6年目の期限切れから6か月以内に追加料金を支払ったうえ、第8条使用宣誓書または使用不可能な正当な理由にかかる宣誓書を提出する必要があります。この宣誓書には商標が商業上で使用されていることを証明する証拠を含めた文書が必要です。この宣誓書を提出しない場合、商標登録は取り消されます。

ステップ10:第8条宣誓書と第9条の更新手続

商標登録日から10年ごとの期限前1年間、または10年期限終了後6か月以内に、第8条使用宣誓書または使用不可能な正当な理由にかかる宣誓書と第9条更新申請書を提出し、該当する手数料を支払う必要があります。この宣誓書は、通常、商標が商業上で使用されていることを証明するための宣誓と使用証拠を含みます。この宣誓書を提出しない場合、登録は取り消され期限が切れます。

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    この記事を書いた人

    木村 純平

    木村 純平

    2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。