【図解・対策】中国の「横取り」商標問題とその対応方法

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中国で商標登録をしようとしたら、まったく同じ商標がすでに登録されていたのでなんとかして欲しい、というご相談をほんとによく頂きます。有名な日本ブランドの中国での「横取り」商標は、メディアでも取り上げられ話題となっています。中国の「横取り」商標問題とその対策に長く関わってきた弁理士として問題とその対策を解説します。

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「横取り」商標とは

「横取り商標」とは「冒認商標」もしくは「剽窃商標」と呼ばれることもある商標で、他人の商標をそっくりそのまま自分のものとして商標登録してしまうことです。たとえば、高値で買い取らせることを目的として日本などの外国ブランドの商標を登録することが中国では横行しています。

商標登録が基本的に早い者勝ちであるため、何の権限もない現地の企業や個人が海外の企業よりも先に外国ブランドの商標を登録することができます。商標登録は各国それぞれで登録を行わないといけないことから、中国の事業展開スケジュールに合わせて商標を登録しようとしていたら、先に現地の企業や個人に登録されてしまった、ということになります。

中国では安価で簡単にオンラインで商標登録出願できることも理由の一つです。

「横取り」商標の発見

まず、自分の商標が登録もしくは出願されていないか確認しましょう。「中国商標網(http://wcjs.sbj.cnipa.gov.cn/)」というサイトで簡単に検索することができます。たとえば、以下のような手順で簡単に検索が可能です。念のため似ている商標全てを検索します。

1. 中国商標網トップページにアクセスします

2. 「商标近似查询」をクリックします

3. 検索条件を入力します

①国际分类(国際分類):調べたい商品・サービスの国際分類を入力します。たとえば、被服だと「25」になります。日本と国際分類はほぼ同じなので、日本のサイト(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/t1201)で調べることができます。
②查询方式(検索方式):調べたい商標が漢字なら「汉字」、アルファベットなら「英文」を選択します。
③商标名称(商標名称):調べたい商標を入力します。

4. 検索結果が表示されます。

①国际分类(国際分類):25
②查询方式(検索方式):英文
③商标名称(商標名称):primeworks
で調べてみました。

※検索結果が多いような場合は違うタブから「商标综合查询」を選ぶと、商標(文字)から同一商標のみの検索が可能です。

商標が見つからなければ、誰よりも先に商標登録する必要があります。出願を検討しましょう⇒出願

「横取り」商標への対策

発見した商標のステータスを確認する

検索で自分の商標と同一または似ている商標を発見したら、そのステータスを確認しましょう。ステータスによって、説明する対策が変わってきます。

上記4.の検索結果一覧で、該当する商標のリンクをクリックするとその詳細画面が表示されます。

審査継続中

「商标状态图标」という欄に「LIVE/APPLICATION/Awaiting Examination」とあればまだ審査継続中というステータスです。審査が通った場合、異議申立という手続を行って、取り消す必要がありますので、経過観察(ウォッチング)の必要があります。⇒経過観察(ウォッチング)

異議申立期間中

「商标状态图标」という欄に「LIVE/APPLICATION/Published for Opposition」とあれば異議申立期間中というステータスです。審査が通って登録査定がでると出願公告されます。出願公告日(下の画面の「初审公告日期」)から3ヶ月以内であればだれでも異議申立が可能です。この期間が異議申立期間です。もし、異議申立期間が終了していなければ、その期限までに異議申立を行います。⇒異議申立

登録済み

すでに登録されている状態です。「商标状态图标」という欄に「LIVE/REGISTRATION/Issued and Active」とあれば登録済みというステータスです。登録の有効期間(下の画面の「专用权期限」)が表示されています。この商標登録を取り消すには無効審判、もしくは、不使用取消審判を提起します。⇒無効審判、⇒不使用取消審判

出願

商標は早いもの勝ちです。先に出願してしまうのが「横取り」商標に対する一番の対策です。検索で他人が登録・出願していなければ、できるだけ早く、海外の商標出願に慣れている特許事務所などに相談し、出願を検討しましょう。

また、異議申立や無効審判などで「横取り」商標の登録を取り消す場合でも、自分の出願をしておかなければ自分の商標登録は得られませんので出願する必要があります。

経過観察(ウォッチング)

審査継続中の出願に対しては、出願公告の後に異議申立を行う必要があります。定期的に自分で検索をして状態を確認してもよいですし、海外の商標出願に慣れている特許事務所などに依頼すれば経過観察(ウォッチング)を行って、異議申立のタイミングを連絡してくれます。

異議申立

出願公告日から3ヶ月間に、異議申立を提起して、この出願が「横取り」出願であるので登録査定は取り消されるべきであることを訴えます。中国ですでに商品を販売などして商標を使用している場合はその証拠(販売、広告に関する資料など)を提出します。中国ではまだ未使用でも、日本や近隣諸国で自分のブランドが知られていることを証明します。ロゴデザインの場合、著作権登録を行って、デザインが模倣されたことを主張するのも有効です。

無効審判

商標登録されてしまったものに対して、その商標登録は無効となるべき旨を主張して、商標登録を取り消します。主張、証拠は異議申立とほぼ同じです。登録から5年以上経過すると無効にできない場合がありますので、気を付けましょう。

不使用取消

登録から3年以上経過している場合、不使用取消が提起できます。不使用取消を申し立てると、商標権者は過去3年間において、登録商標を使用したことを証明する証拠を提出しないと登録が取り消されます。

まとめ

中国では実際多くの「横取り」商標が横行しています。中国当局は年々このような登録商標に対し厳しい方針を示しており、取り消すことができる事例も多くあります。簡単に諦めず、自分のブランドの商標登録にチャレンジしてみましょう。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。