今回は、すこし前のものですが、商標権者とライセンシーの「隠された」関係について触れてみようと思います。以前から気になっていたテーマで、いち消費者としても考えさせられるものです。
「不二家は、フランス高級菓子・総菜ブランド「DALLOYAU(ダロワイヨ)」の日本国内における商標権等を取得しました」(株式会社不二家プレスリリース:1月4日付)
https://www.fujiya-peko.co.jp/assets/pdf/press20180104_1.pdf
どうやら「味は変わらない」ようですね
内容は「ペコちゃん」で有名な株式会社不二家が、フランスはパリの有名な食品会社DALLOYAU SAS(「ダロワイヨ」です。その歴史は1682年のヴェルサイユ宮殿にまでさかのぼるそうです!)が保有する商標「DALLOYAU」の日本における商標権、ドメイン及びノウハウ使用権をこの1月1日付で取得した、というものです。
こうした記事を見ると、「これまでのダロワイヨとは味が変わっちゃうの!?」という心配の声が出そうですが、実は不二家さんはダロワイヨが日本に進出した1982年から同社と協力関係にあって、これまでもパリのダロワイヨからレシピの提供を受けて洋菓子や惣菜の製造販売を行っていたそうです。同ブランドの商品はこれまでと変わらないということですね。考えてみれば、ケーキのような洋生菓子や惣菜は日持ちしないので日本で作っているのも当然ですよね。なので、これまでダロワイヨの商品を買っていた方は、引き続き「同じ味」を楽しめるということです。
中には同じ名前で別モノ、という場合も
一方で、アパレル分野では同じ名前でも「中身」が違う、というケースがありました。
英国の有名ブランドであるバーバリーが2015年に日本代理店の三陽商会とライセンス契約を解消したことが話題になったのを覚えている方も多いと思います。三陽商会は英国バーバリー社から日本におけるライセンスを受けて長年に渡り同ブランドの商品を製造販売していましたが2015年に契約解消されたのです。その理由として、英国では本国と日本との商品価格差(英国では一着20~30万円する高級コートを販売していたが、日本では(ライセンス品のため)半額以下で買えてしまった)や客層の違い(日本では高校生でも手が届くようなマフラー、靴下、ハンカチなどの小物が多く出ていた)などにより本国と日本におけるブランド戦略のズレが問題となっていた、などと分析されていました。
つまり、英国で売っている本家のバーバリーが製造販売するコート(本物)と日本で三陽商会が製造したバーバリーのコート(ライセンス品)は、同じブランドでも作っている人や品質、価格が違うわけです。ライセンス品のほうが安いとなると、やっぱりちょっと「格」が下がってしまうのかな、という気もします。ただ、三陽商会のバーバリーのコートは日本のメーカーが日本人向けに製造販売していたものなので、日本人にとっては体に馴染む「よい」商品だったのではないでしょうか。
ライセンシーから商標権者へ
他にも、海外ブランドの商標権を取得して既に日本におけるビジネスを成功させている例があります。靴の販売で有名なABCマート(株式会社株式会社エービーシー・マート)は1986年に英国のブーツブランド「Hawkins」(ホーキンス)の国内総代理店となった後、1995年には商標権を取得して日本主導で商品の企画・製造・販売を行っています。また、デッキシューズで有名な「VANS」についても日本で企画から販売までできるライセンスを受けていて、自社で企画・製造・販売をすることとでコストを抑えたり、自社企画の限定商品を販売したりして消費者の支持を受けているそうです。
他にも、バスケットシューズやテニスシューズで有名な「Converse」(コンバース)も日本の商社である伊藤忠商事が商標権を持っているなど、靴業界では海外ブランドの商標権を国内企業が持っているケースは割とよくあるようです。
このように、ブランドと商標権者、そしてライセンシーにはさまざまな関係があります。ここでは触れませんでしたがさらには並行輸入の問題もあり、有名ブランドのマークがついている点は同じでも、商品によってさまざまな「事情」があるかもしれません。消費者としては、こうした状況を把握した上で「本当に欲しい商品」を選ぶことができればいいですよね。
最後に個人的な話ですが、昔サンフランシスコのリーバイス本店で買った501がメキシコ製で、日本で買ったリーバイスと色落ちの具合が全然違っていてすごく気に入っていました。ボロボロになったので同じものが欲しいのですが、どうすればいいのやら。。。
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プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹
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