韓国で商標登録を行うことは、ビジネス展開やブランド保護において重要なステップです。本記事では、韓国の商標登録制度の概要や手続のポイントを解説します。商標先行調査や出願の方法、審査の流れ、登録までの期間などについて詳しく紹介します。さらに、韓国における商標登録のメリットと重要性を明確にし、商標侵害対策や権利の保護についても触れます。韓国は東南アジアでのビジネス拡大において注目の市場ですので、韓国での商標登録について正確な知識を身につけましょう。
韓国の商標登録制度の概要
韓国の商標に関する法規則
韓国の商標に関する法規則は、商標法、商標施行令、商標施行規則、商標審査基準が重要です。商標法は商標の登録や保護に関する法律を定めており、商標の権利や侵害について規定しています。商標施行令、商標施行規則は商標出願や審査の手続きに関する具体的な規定を含んでおり、商標出願者はこれに基づいて手続きを進めます。また、これらの法規則は商標出願者が法的な要件を遵守し、商標登録を取得するために重要な役割を果たします。商標審査基準は商標の審査のための基準や要件について定めています。正確な法規則の理解と適切な対応は、韓国での商標登録を成功させるために欠かせません。
韓国商標法(D.R.CHOI International Patent Office)
韓国商標施行令(D.R.CHOI International Patent Office)
韓国商標施行規則(D.R.CHOI International Patent Office)
韓国の商標登録の手続の概要
韓国での商標出願手続きは、出願、方式審査、実体審査、出願公告、登録査定の手順で進みます。商標の有効期間は登録日から10年であり、10年ごとに更新することができます。さらに、韓国はマドリッドプロトコルに加盟しており、国際登録出願を利用して商標登録が可能です。これにより、他の加盟国にも商標の保護を拡大することができます。
商品・役務(サービス)が幅広く、区分数が多い場合や、韓国だけでなく他のマドプロ加盟国でも商標登録したいような場合は、マドプロ出願にコストメリットがあります。一方、韓国代理人を通じて手続をする場合は、区分数によって費用が変わりますので、現地の特許事務所などから事前に見積りをとっておきましょう。
韓国における商標登録のメリットと重要性
韓国における商標登録には多くのメリットと重要性があります。まず、商標登録によって独自のブランドイメージを確立し、商品やサービスの識別力を高めることができます。これにより競争力を強化し、市場での差別化を図ることができます。また、商標登録は商標権の法的な保護を受けるため、他者による商標の不正使用や模倣品の流通を防止することができます。さらに、商標登録は事業拡大や国際展開にも重要です。韓国でのビジネス拡大の拠点として注目されており、商標登録を通じて近隣諸国にも商標権を保護することができます。総じて、韓国における商標登録は企業の信頼性や競争力を高め、ビジネスの成功に不可欠な要素となります。
商標先行調査
韓国特許技術情報センターKIPRIS
商標先行調査は韓国で商標登録を考える際に重要なステップです。商標先行調査は韓国特許技術情報センター(KIPRIS)のウェブサイトを利用することで簡単に先行商標を調査することができます。韓国特許技術情報センター(KIPRIS)のウェブサイトは韓国国内の商標登録・出願のデータベースであり、無料でアクセスできます(特許・意匠の調査も可能です)。
韓国における特許検索方法―韓国特許技術情報センター(KIPRIS)(新興国等知財情報データバンク)
このデータベースを利用して類似商標や競合他者の商標権を調査し、自身の商標登録の可能性やリスクを把握することが重要です。先行調査を行うことで、重複や衝突を避け、商標登録の成功率を高めることができます。商標先行調査は商標登録を検討する際の基本的な手続きであり、信頼性と確実性を追求するために欠かせないものです。
韓国の商標登録手続きの詳細
韓国で商標登録するには、韓国特許庁に出願手続を行う方法(個別出願)と国際登録出願を行う方法があります。
個別出願とは
韓国の現地代理人(特許事務所、法律事務所)を通じて、出願を行います。直接、現地代理人に依頼することもできますが、通常は日本の特許事務所などに依頼すれば、提携する現地代理人を通じて行うことができます。
出願に必要な情報・書類
出願人の名称・住所
出願書類は韓国語で作成されますので、現地代理人日本語、もしくは英語表記を伝えれば問題ありません。
商標
ブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。韓国語、英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。
文字、図形、記号、立体的形状、色彩の組み合わせ、これらの結合、音声などの商標の登録も認められています。団体標章、地理的表示、地理的表示団体標章、証明標章、地理的表示証明標章、業務標章といった商標の登録制度があります。
指定商品・役務(サービス)
製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。1出願で多区分にわたる商品・役務を指定することができる1出願多区分制を採用しています。
所定の商品・役務の表記でない場合、補正を求められる場合があります。日本と同じように類似する範囲を類似群として管理しており、各類似群にコードが割り振られています。KIPRISのウェブサイトの右上にあるボタン「Goods & Services Name Search」から指定商品を韓国語と英語で検索できるツールを利用できます。
委任状
署名入りの委任状が必要となります。
国際登録出願(マドプロ出願)とは
国際登録出願(マドプロ出願)とは、1つの手続で複数の国に商標登録出願を可能とする国際的な枠組み(マドリッドプロトコル)を通じた、商標登録出願のことです。日本で手続を行う場合、特許庁に出願書類を提出するか、オンラインで出願することができます。日本の特許事務所に依頼すれば、手続を行ってくれます。韓国を指定国の1つとすることで、韓国への出願手続となります。
出願に必要な情報・書類
出願人の名称・住所
英語の表記が必須です。
商標
日本のブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。韓国語、英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。
指定商品・役務(サービス)
製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。
所定の商品・役務の表記で無い場合、補正を求められる場合があります。国際登録出願で認められる商品・役務表記はMadrid Goods & Services Managerで調べられます。韓国の審査で認められる商品・役務表記はKIPRISのウェブサイトで検索できます。
Madrid Goods & Services Manager
KIPRISのウェブサイト:Goods & Services Name Search
登録までの審査:審査の内容及び期間
マドプロ出願
マドプロ出願をした場合、出願書類を日本の特許庁に提出してから約6ヶ月程度で国際登録され(形式審査で補正などを指摘された場合、さらに2~3ヶ月要します。)、その後、韓国特許庁で、韓国での商標権の効力を認めるべきかどうかの審査が行われます。その審査期間は通常12ヶ月程で、遅くとも国際登録の出願から1年6ヶ月までに通知されます。
直接出願
現地の代理人を通じ、各国の特許庁に出願した場合、そのまま方式審査、実体審査が行われます。
指定商品・指定役務に関わる留意事項
ニース国際分類を採用しており、商品34区分、役務11区分があります。ですので、ほぼ日本と同じ商品・役務表記で問題は無いでしょう。また、日本と同じように類似群コードによる指定商品・役務間の類否判断を行っているので、類否の判断がわかりやすいと言えます。日韓の類似群コードの対応は以下のサイトをご覧ください。
日韓類似群コード対応表「ニース分類・IDリスト・MGS対応版(統合版)」の公表について(平成30年9月)(日本特許庁)
1区分につき指定商品・役務が20を超える場合は、超過の1商品・役務ごとに加算手数料が発生します。同一の類似群コードの指定商品・役務であれば、商標権の効力は及びますので、権利が重複する指定商品・役務を省くことも一策です。
絶対的拒絶理由:識別性が無いとの拒絶
韓国の審査では、絶対的拒絶理由、つまり、商標に識別力があるか(普通名称や記述的な表示にあたらないか)、ということが審査されます。商標に識別力があるか否かは、その表示が不特定多数に使用されているかなどの、その国での状況から判断されますので、日本では登録になっても、韓国では識別力が無いと判断される可能性があります。
相対的拒絶理由:他人の商標と抵触するとの拒絶
韓国の審査では、相対的拒絶理由、つまり、類似する他人の登録商標が存在しないか、ということが審査されます
拒絶理由通知への対応
拒絶理由通知を受けた場合、2ヶ月以内に意見書、補正書の提出が可能です。
審査期間
審査期間は12ヶ月程度です。マドプロ出願の場合は、国際登録が完了し韓国特許庁に通知されてから12ヶ月程度です。
拒絶査定に対する不服申立
拒絶査定に対しては、拒絶査定の送達日から3ヶ月以内に、特許審判院に対して拒絶査定不服審判を申し立てることができます。審判請求が認められた場合、出願は登録されます。一方、審判請求が認められなかった場合、出願人は特許法院に審決取消訴訟を提起することができます。
異議申立
第三者は、登録公告後2ヶ月の間に異議申立を提起することができます。
商標権の管理
商標権の登録と更新
異議申立期間内に異議が申立てられなかった場合、または異議申立てが却下された場合には、登録証が発行されます。
商標登録の存続期間は登録日から10年です。 商標登録の存続期間は10年ごとに更新できます。
商標の不使用取消制度
登録された指定商品または指定役務について取消請求を行う前の3年間に商標が使用されていないことを証明できる場合、第三者は不使用取消審判を請求できます。
商標侵害対策と権利の保護
商標登録を行った後も、商標侵害には注意が必要です。韓国では商標侵害に対して法的な保護措置があります。侵害が発生した場合は、民事訴訟や刑事訴訟を通じて権利を主張することができます。差止命令や損害賠償の請求などの対策を取ることで、商標権の保護が可能です。また、商標監視や定期的な商標調査を行うことも重要です。適切な対策を講じることで、商標の権利を確実に守ることができます。
まとめ
韓国で商標登録を行うことは、企業や個人にとって重要なステップです。商標登録によって独占的な権利を確立し、ブランド価値の向上と消費者の信頼を獲得することができます。しかし、韓国では模倣品や横取り商標の問題も存在し、これらに対処するために商標登録のメリットと重要性を理解する必要があります。商標登録手続きの詳細や出願資格、必要な書類や情報、商標先行調査の重要性など、正確な知識と適切な戦略が成功につながります。韓国市場でのビジネス展開やブランド保護を考えるなら、韓国での商標登録について詳しく理解し、専門家の助言を受けることが重要です。