欧州連合(EU)で商標登録するとは?欧州連合商標(EUTM)登録のポイントを解説

欧州連合(EU)でビジネスを展開する際には、欧州連合商標を登録することは非常に重要です。商標登録により、自社のブランドや製品名を法的に保護し、他者からの模倣や混同を防ぐことができます。欧州連合商標登録をすることで、欧州連合(EU)加盟国全ての国において商標登録の効力を及ぼすことができ、自社のブランドや製品名の独自性と信頼性を高め、競争力を強化することができます。また、商標登録は法的な権利を提供し、侵害行為に対して法的手段を取ることが可能です。ビジネスの成功を追求する上で、自社のブランド価値を確立し、市場での存在感を高めるためには、欧州連合商標での商標登録は欠かせない重要なステップとなります。

欧州連合の商標登録制度の概要

欧州連合商標(EUTM)とは

欧州連合商標(EUTM)制度は、ヨーロッパにおける統一された商標登録システムを提供し、1つの登録でEU加盟国全体で保護を受けることができます。この制度は統一的であり、どの加盟国であってもEU商標出願に対する異議があれば、全体の出願が失効します。また、EU商標登録は全加盟国で権利行使が可能であり、その管理は欧州連合知的財産庁(EUIPO)によって行われています。

欧州連合の商標に関する法規則

イギリスの商標に関する法規則は、欧州連合商標に関する欧州議会・理事会規則2017/1001、欧州委員会委任規則2018/625、欧州委員会実施規則2018/626が重要です。欧州連合商標に関する欧州議会・理事会規則2017/1001は欧州連合商標(EUTM)の内容、要件、出願手続きを定めており、商標の権利や侵害について規定しています。欧州委員会委任規則2018/625、欧州委員会実施規則2018/626は、同規則と関連するルールや手続きについて定めています。これらの法規則は商標出願者が法的な要件を遵守し、商標登録を取得するために重要な役割を果たします。正確な法規則の理解と適切な対応は、イギリスでの商標登録を成功させるために欠かせません。

欧州連合商標登録の手続の概要

欧州連合商標登録制度は、出願から登録までの手続きが進められます。まず、出願手続き、方式審査、公告、登録という順序で進みます。商標権の存続期間は出願日から10年間であり、10年ごとに更新が可能です。さらに、欧州連合はマドリッドプロトコルに加盟しており、国際登録出願を利用して商標登録が可能です。これにより、他の加盟国にも商標の保護を拡大することができます。

欧州連合における商標登録のメリットと重要性

欧州でビジネスを展開することのメリットは多岐にわたります。多数の国家で構成される欧州連合は世界的なビジネスの中心地としての地位を持ち、豊かな市場と多様なビジネス機会が存在します。欧州の政治的安定性や法的枠組みは投資環境をサポートし、イノベーションと起業に適した環境です。

よって、欧州連合における商標登録には多くのメリットと重要性があります。商標登録によって独自のブランドイメージを確立し、商品やサービスの識別力を高めることができます。これにより競争力を強化し、市場での差別化を図ることができます。また、商標登録は商標権の法的な保護を受けるため、他者による商標の不正使用や模倣品の流通を防止することができます。さらに、商標登録は事業拡大や国際展開にも重要です。

商標先行調査

商標先行調査は欧州連合商標登録を考える際に重要なステップです。商標先行調査は欧州連合知的財産庁(EUIPO)のウェブサイト「eSearch Plus」を利用することで簡単に先行商標を調査することができます。「eSearch Plus」では出願・登録番号、出願人・権利者名、キーワードなどで調べることができ、無料でアクセスできます。

また、欧州連合知的財産庁(EUIPO)は欧州連合商標だけでなく加盟国各国の登録情報、その他の協力国・機関の情報を網羅する一元的なデータベースである「TMview」を提供しています。「TMview」を利用することにより、欧州連合商標を含めた幅広い調査が可能です。

欧州連合商標の商標登録手続きの詳細

欧州連合商標登録するには、欧州連合知的財産庁(EUIPO)に出願手続を行う方法(個別出願)と国際登録出願を行う方法があります。

個別出願とは

欧州連合の現地代理人(特許事務所、法律事務所)を通じて、出願を行います。直接、現地代理人に依頼することもできますが、通常は日本の特許事務所などに依頼すれば、提携する現地代理人を通じて行うことができます。

出願に必要な情報・書類

出願人の名称・住所

現地代理人(現地の弁護士、弁理士など)に英語の表記を伝えます。

商標

ブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。

指定商品・役務(サービス)

製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。1出願で多区分にわたる商品・役務を指定することができる1出願多区分制を採用しています。

所定の商品・役務の表記で無い場合、補正を求められる場合があります。欧州連合商標で認められる商品・役務表記は欧州連合知的財産庁(EUIPO)が提供するTMclassで調べられます。TMclassは欧州連合商標だけでなく、加盟国各国、その他の協力国・機関の認められる商品・役務表記も調べることができます。

国際登録出願(マドプロ出願)とは

国際登録出願(マドプロ出願)とは、1つの手続で複数の国に商標登録出願を可能とする国際的な枠組み(マドリッドプロトコル)を通じた、商標登録出願のことです。日本で手続を行う場合、特許庁に出願書類を提出するか、オンラインで出願することができます。日本の特許事務所に依頼すれば、手続を行ってくれます。イギリスを指定国の1つとすることで、イギリスへの出願手続となります。

出願に必要な情報・書類

出願人の名称・住所

英語の表記が必須です。

商標

日本のブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。

指定商品・役務(サービス)

製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。

所定の商品・役務の表記で無い場合、補正を求められる場合があります。国際登録出願で認められる商品・役務表記はMadrid Goods & Services Managerで調べられます。

登録までの審査:審査の内容及び期間

マドプロ出願

マドプロ出願をした場合、出願書類を日本の特許庁に提出してから約6ヶ月程度で国際登録され(方式審査で補正などを指摘された場合、さらに2~3ヶ月要します。)、その後、欧州連合知的財産庁(EUIPO)で、欧州連合での商標権の効力を認めるべきかどうかの審査が行われます。この審査結果は、遅くとも国際登録の出願から1年6ヶ月までに通知されます。

直接出願

現地の代理人を通じ、各国の特許庁に出願した場合、そのまま審査が行われます。

指定商品・指定役務に関わる留意事項

国際分類を採用しており、日本と同様の商品・役務区分となります。

審査

絶対的拒絶理由:識別性が無いとの拒絶

欧州連合商標の審査では、絶対的拒絶理由、つまり、商標に識別力があるか(普通名称や記述的な表示にあたらないか)、ということが審査されます。商標に識別力があるか否かは、その表示が不特定多数に使用されているかなどの、その国での状況から判断されますので、日本では登録になっても、欧州連合では識別力が無いと判断される可能性があります。

拒絶通知に対しては通知から2ヶ月以内に意見書の提出などの応答が可能です。

相対的拒絶理由:他人の商標と抵触するとの拒絶

欧州連合商標の審査では、相対的拒絶理由、つまり、類似する他人の登録商標が存在しないか、ということが調査されます。類似する先行商標が発見された場合、審査官は先行商標の商標権者(もしくは出願人)に出願公告の事実を通知します。審査官が相対的拒絶理由で登録を拒絶することはありません。相対的拒絶理由の解決は異議申立に委ねられます。

異議申立

拒絶理由がなければ出願は公告されます。第三者は、出願公告日後 3 か月以内に、相対的拒絶理由に基づき異議申立てをすることができます。

審査期間

審査期間は出願日もしくは国際登録が欧州連合知的財産庁(EUIPO)に通知された日から3~4ヶ月程度です。その後、出願公告、異議申立期間を経て約3ヶ月後に登録になります。

拒絶決定に対する不服審判

出願者は拒絶決定に対する不服審判を、決定後2ヶ月以内に行うことができます。


※国際登録出願(マドプロ出願)の場合、国際登録(要6ヶ月程度)の後、審査が行われます。

商標権の管理

商標権の登録と更新

商標登録出願に拒絶理由が見つからず、異議が申し立てられない場合、商標は登録されます。 商標権の有効期間は出願日から10年であり、10年ごとに更新が可能です。

不使用取消

登録商標が正当な理由なく継続して5年間使用されていなかったときは、いかなる法人または個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができます。

商標侵害対策と権利の保護

EUでは、知的財産権の侵害に対して行政措置、民事措置、および刑事措置で救済を求めることができます。また、国家所管当局は適切な場合に知的財産権関連の輸入および輸出の管理措置を行う権限を持ち、行政罰が科されることもあります。

これらの機関は、知的財産権の権利者の要求に基づき、偽造品や知的財産権の侵害品に対して立入検査を行い、一時押収や没収、違反者への処罰を行います。また、偽造品や知的財産権の侵害品を廃棄処分したり、侵害部分を排除することもできます。

まとめ

EUで商標登録を行うことは、企業や個人にとって重要なステップです。商標登録によって独占的な権利を確立し、ブランド価値の向上と消費者の信頼を獲得することができます。しかし、EUでは模倣品や横取り商標の問題も存在し、これらに対処するために商標登録のメリットと重要性を理解する必要があります。商標登録手続きの詳細や出願資格、必要な書類や情報、商標先行調査の重要性など、正確な知識と適切な戦略が成功につながります。EU市場でのビジネス展開やブランド保護を考えるなら、欧州連合商標登録について詳しく理解し、専門家の助言を受けることが重要です。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。