登録商標をどこまで変えて使用していい?

登録商標は使用していないと他人に取り消される

商標は、原則として、一度登録すれば、10年毎に更新することで半永久的にその権利を保持し続けることができます。しかし、不使用取消審判という制度があり、3年以上使用していない登録商標は誰でも取り消すことができます。

これは、商標というものが、使用し続ける(商標を付した商品を売る、商標を掲げてサービスを行う、商標を使って広告宣伝するなど)ことによってその価値を高めるものだからです。つまり、商品が売れて商品名やマーク(商標)が有名になればなるほど、又は、店が繁盛して店舗名等(商標)が有名になればなるほど、その商標の価値は高まるのです。

よって、いくら登録されていても使われていないような商標に対しては、同じもしくは似たような商標を使用したい第三者に取り消す手段を与え、より社会のニーズに見合った商標の登録を実現しようとしているのです。

登録商標と同一の商標を使用しなければいけないか?

登録している商標と全く同じ商標を使っている場合、不使用取消のリスクについて問題はありません。しかし、ロゴデザインの変更によって使用商標が変更されるということは、次々と新しい広告宣伝を行い消費者の目先を変えることで販売を促進する現代のビジネスではよくあることです。

もし、使用する商標が変更された場合に、再度商標の出願・登録を行わなければならないとすれば、商標権者にとって負担が大きいでしょう。ですので、商標制度は「社会通年上同一と認められる商標」の使用は登録商標の使用であると見なし(商標法第50条)、商標権者に一定の幅を持たせています。

社会通念上同一と認められる商標

では、「社会通念上同一と認められる商標」とはどの程度の変更をいうのでしょうか?

書体の変更(構成文字が同一)

既存書体間の変更(明朝体→ゴシック体、かい書体→草書体など)や標準文字での登録をロゴ商標とするものは社会通念上同一と認められます。過去の判断例をみますと、かなりデザインが変更となっても構成文字が同一で構成文字が文字として認識できるものであれば同一性が認められる可能性が高いでしょう。特に、標準文字で登録した場合、デザインの自由度は大きいと言えます。

登録商標 同一 使用商標
雅山  FUSHIYO01
 FUSHIYO06  FUSHIYO02
ワイン倶楽部(標準文字)  FUSHIYO03
 FUSHIYO04  FUSHIYO05

出典:特許庁

文字種の変更

文字種の変更(平仮名→片仮名、ローマ字→片仮名、ローマ字の大文字→ローマ字の小文字など)であって、称呼(読み方)及び観念(意味)が一致する一対一の関係にある場合、社会通念上同一と認められます。

ここで注意が必要なのは、特に、ローマ字と平仮名・片仮名の間の変更は観念が一対一に対応する場合に限られることです。例えば、登録商標「ECOPAC」の商標権者が片仮名「エコパック」の商標の使用を主張したのですが、審判官は『「エコパック」の片仮名文字は「経済的、環境にやさしい包装容器(ECO PACK)」という程の観念が生じるから、同一の観念を生じるということはでき』ないとして、両者を社会通念上同一とは認めませんでした。「COMPATH」と「コンパス」の同一性が認められなかった例もあるように(文房具の「コンパス」の綴りは「COMPASS」)、同じ称呼の既成語が別にあるような場合、同一性が認められない可能性が高いでしょう。

登録商標 同一 使用商標
麒麟 = KIRIN
FUSHIYO07 = FUSHIYO08
SOLUTION PARTNER = ソリューションパートナー
ECOPAC エコパック
COMPATH コンパス

出典:特許庁

段書き

ローマ字とその読みに該当する片仮名を二段で書いた登録商標のように、漢字\平仮名\片仮名\ローマ字のいずれか2つ以上を段組にした商標を登録した場合、各語の観念が一致すれば(造語であっていずれも観念が生じない場合も含む)、いずれか一つの使用は社会通念上同一と認められます。

ただし、下記の「FUSHIYO13」と「R・one」のように、登録商標内の文字と使用商標が同一とみなされなければ商標全体として社会通念上同一とは見なされないのは当然です。また、造語にその称呼の片仮名などを付けた二段書きの場合、同一の称呼を生じる既成語が存在すると同一性が認められない場合があります。下の例では、片仮名「サーパス」は「SURPASS(超える)」という他の既成語を想起するため同一性が認められませんでした。

登録商標 同一 使用商標
 FUSHIYO09 DAVIDA
 FUSHIYO10 L’ecrin
 FUSHIYO11 Mariquita
 FUSHIYO12 エンジェル・ハート
 FUSHIYO13 R・one
 FUSHIYO14 サーパス

出典:特許庁

構成要素の付加

文字等の構成要素を付加した場合、その構成要素に識別力が無ければ社会通念上同一の商標と見なされます。例えば、1文字か2文字のローマ字、数字、商品・サービスの普通名称を付加したとしても同一性が認められる可能性が高いでしょう。

しかし、その構成要素が多少なりとも識別力を有している場合、同一性が否定される可能性が高いでしょう。下の例では、比較的識別力が弱いと考えられる「ライト」や「有限会社」の文字や商品「ユニットバス」との関係で識別力が弱い「UNIT」の語を付加した場合であっても、全体として観念が相違するなどとして同一性が否定されています。結合商標を一体と捉える最近の特許庁・裁判所の傾向からも、この傾向は注意すべき点です。

登録商標 同一 使用商標
エスプレイド エスプレイドDX
FUSHIYO15 spirio3500
FUSHIYO16 VIVIセラミドクリーム
FUSHIYO17 ノーススターライト
ティーズ 有限会社ティーズ
ライン LINE UNIT

出典:特許庁

まとめ

以上のことから、登録商標から変更して商標を使用する場合、以下の点に気をつけてください。

  • 使用する際のデザインが未確定の場合、標準文字で登録する
  • 文字として認識できなくなるようなロゴデザインの変更は避ける
  • 段書きの商標の場合、それぞれの語の観念が一致すれば、そのいずれかの語の使用で登録商標を使ったことになる
  • 商標と読みが同じ既成語がないか注意する
  • そのような既成語がある場合、読みだけで使用しない
  • 他の語を付加した商標は同一性が認められない可能性がある
  • 他の語を付加した商標しか使用しないのであれば、新たに商標登録を行う

 

ご自身の商標の使用に問題が無いかご不明な場合は、我々専門家にご相談ください。また、不使用取消審判を受けた場合、お手伝いさせていただきます。ぜひ弊所までご相談ください。

 

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

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