【解説】地域団体商標制度と地理的表示保護制度とは?何が違う?

この記事のまとめ(3つの要点)

  • 地理的表示(GI)保護制度は、農林水産物の産地と結びついた品質・特性を持つ産品名称を知的財産として保護する制度です。2015年6月施行の「地理的表示法」に基づき、農林水産省(農林水産大臣)に申請します。登録するとGIマークを使用でき、国が不正使用を取り締まります。登録費用は登録免許税9万円のみで、更新手続きは不要(取り消されない限り永続)です。「但馬牛」「夕張メロン」「あおもりカシス」などが登録例として知られています。
  • 地理的表示(GI)と地域団体商標は似ていますが、フォーカスの対象と登録要件が大きく異なります。GIは「産品(農林水産物)の品質・特性」にフォーカスし、産地との結びつきや概ね25年以上の継続生産実績、団体による品質管理が必要です。一方、地域団体商標は「商標の識別性・周知性」にフォーカスし、需要者の間で広く認識されていることが要件で、全ての商品・サービスが対象となります。GIは国が取り締まり、地域団体商標は商標権者が自ら差止請求・損害賠償請求を行う点も異なります。
  • GIと地域団体商標はどちらか一方を選ぶ必要はなく、両方の登録要件を満たすなら両方登録することで保護効果が最大化されます。GIの登録要件(25年以上の生産実績・品質管理体制など)を満たせるかどうかを確認し、満たせない場合は地域団体商標のみを検討します。両者の要件をクリアできる場合は、国による取締りと商標権者による私的権利行使という異なる保護手段を重ね合わせることができ、地域ブランドの保護と価値向上に大きな効果が期待できます。

最近、地理的表示保護制度に関するご依頼に関わることがあり、弁理士会の主催で地理的表示保護制度をトピックとした研究会に参加してきました。正確には「農林水産業と知的財産」というタイトルで、兵庫県養父地区を含む但馬地域における事例研究と地理的表示保護制度の登録申請に関する研究発表でした。

地理的表示保護制度とは

地理的表示保護制度とは、品質、社会的評価その他の確立した特性が産地と結び付いている産品について、その名称を知的財産として保護する制度で、TRIPS協定などで保護が唱われ、諸外国では商標などとは別異の制度として100ヶ国以上の国で制度が設けられています。

日本においても「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」が2015年6月1日から施行され、申請の受付が開始されました。2016年5月現在「あおもりカシス」「但馬牛」「夕張メロン」など12件の地理的表示が登録されています。

背景が白の地理的表示標章(GIマーク)GIマーク(農林水産省HPより)

地域団体商標制度との違い

商標を専門とする弁理士としては、こういった農林水産物の地域ブランド名称の保護は商標の問題として非常になじみ深く、特に2006年から開始された地域団体商標制度を思い浮かべるのですが、今回は、新しく創設された地理的表示保護制度の意義と地域団体商標制度との違いについてふれてみたいと思います。

多くの場合において産品名とその産地名などからなる表示を保護する(※1)という点において、地理的表示保護制度と地域団体商標制度は非常によく似ています。しかし、地理的表示保護制度がその登録申請者である団体に農林水産物の品質管理まで求めること、地理的表示と農林水産物の特性との関連性を求めることなど、より産品(農林水産物)にフォーカスしたものであるのに対し、地域団体商標制度が対象商標の周知性を求め、形式的には識別性の無い標識のみを対象とするなど、あくまでも商標(それに付随する識別性)にフォーカスしたものである点に大きな違いがあると思います。その他、要件などの違いは以下の表のとおりです。

※1:地理的表示は地域を特定できれば地名を含まなくてもよいのですが、多くの場合、産地名などである地名を含んでいます

地理的表示(GI) 地域団体商標
保護対象(物) 農林水産物、飲食料品等(酒類等を除く) 全ての商品・サービス
保護対象(名称) 地域を特定できれば、地名を含まなくてもよい 「地域名」+「商品名」等
登録主体 生産・加工業者の団体
(法人格のない団体も可)
農協等の組合、商工会、商工会議所、NPO法人
主な登録要件
  • 生産地と結び付いた品質等の特性を有すること
  • 一定期間(概ね25年)継続して生産された実績があること
  • 地域の名称と商品が関連性を有すること(商品の産地等)
  • 商標が需要者の間に広く認識されていること
使用方法 地理的表示は登録標章(GIマーク)と共に使用(義務) 登録商標である旨を表示(努力義務)
品質管理
  • 生産地と結びついた品質基準の策定・登録・公開
  • 生産・加工業者が品質基準を守るよう団体が管理し、それを国がチェック
商品の品質等は商標権者の自主管理
効力 地理的表示及びこれに類似する表示の不正使用を禁止 登録商標及びこれに類似する商標の不正使用を禁止
効力範囲 登録された農林水産物等が属する区分に属する農林水産物等及びこれを主な原料とする加工品 出願時に指定する商品若しくはサービス又はこれと類似する商品若しくはサービス
規制手段 国による不正使用の取締り 商標権者による差止請求、損害賠償請求
費用・保護期間 登録:9万円(登録免許税)
更新手続なし(取り消されない限り登録存続)
出願・登録:40,200円(10年間)
更新:38,800円(10年間)
※それぞれ1区分で計算
申請先 農林水産大臣(農林水産省) 特許庁長官(特許庁)

出典:特許庁

じゃあ、どちらで登録すればいいの?

そうすると、農林水産物の生産者団体さんにとって、地理的表示と地域団体商標のどちらを登録すればよいのか、それともどちらも登録するべきなのか、といった疑問が出てくると思いますが、どちらも今まで培ってきた産品の信用を模倣から守り、広告・宣伝的価値を高めるといった効果・目的を持ち、非常に似たものなので、自分たちがどちらの登録要件に合致するかを判断して決めるのが一番ではないでしょうか。たとえば、地理的表示(GI)は一定期間(概ね25年)継続して生産された実績が求められますし、地域団体商標と異なって商品の品質管理も求められます。もちろん、どちらかのみを選ぶ必要はなく、もし両者に合致するようであれば両方登録することによって大きな効果が見込まれるでしょう。

自分たちがどちらの登録要件に合致するか不明な場合は、我々専門家にご相談ください。登録まで、お手伝いさせていただきます!!

商標登録の費用

商標の出願、登録(10年)には44,900円~の印紙代(国に支払う額)と特許事務所などを通じて行う場合その手数料が発生します。手数料は事務所によって異なりますので見積りをとるとよいかもしれません。弊所の費用はお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q. 地理的表示(GI)保護制度と地域団体商標制度は何が違いますか?どちらに登録すべきですか?

両制度の主な違いは以下の通りです。申請先はGIが農林水産省(農林水産大臣)、地域団体商標が特許庁(特許庁長官)です。保護対象はGIが農林水産物・飲食料品等に限定されるのに対し、地域団体商標は全ての商品・サービスが対象です。登録要件はGIが産地との品質的結びつきと概ね25年以上の継続生産実績・品質管理体制が必要で、地域団体商標は需要者の間での商標の周知性が必要です。費用と保護期間はGIが登録免許税9万円のみで更新不要(永続)、地域団体商標は出願・登録で40,200円(10年分)+10年ごとに38,800円の更新費用がかかります(各1区分の場合)。どちらに登録すべきかは、産品の種類・生産実績・組織体制によって異なります。両方の要件を満たす場合はGIと地域団体商標の両方を登録することで、国による公的保護と私的権利行使の二重の保護が得られるため、両方の取得を検討することをおすすめします。

Q. 地理的表示(GI)に登録するための主な要件と手続きを教えてください。

地理的表示(GI)の登録申請は農林水産省に対して行い、主に以下の要件を満たす必要があります。①産地と結びついた品質等の特性を有すること:産品の品質・特性が特定の産地(地域)と関連していることが必要です。地理的表示は地名を含まなくても地域を特定できれば認められます。②継続生産の実績があること:概ね25年以上、継続して生産された実績が必要です。③品質基準の策定と管理体制があること:生産・加工業者の団体が品質基準を定め、メンバーがその基準を守るよう管理し、それを国がチェックする体制が求められます。法人格のない団体でも申請できます。登録後は、GIマーク(GI標章)と共に地理的表示を使用することが義務付けられます。登録費用は登録免許税9万円で、更新手続きは不要です。申請手続きは複雑なため、弁理士などの専門家への相談をおすすめします。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。