特許無効審判の仕組みと実務対応における留意点

 ビジネス展開において、競合の持つ特許権への対応が課題となることがあります。また、自社が保有する特許に対して、他社から有効性を問われる手続きを提起される可能性も存在します。
 本記事では、日本国内の実務における「特許無効審判」の仕組みについて、他社特許への対抗手段や自社権利の防衛策としての実務上の留意点を中心に解説します。

1. 特許無効審判の概要と目的

 特許無効審判とは、特許庁の審査を通過して一度登録された特許の中に、本来登録されるべきではなかった瑕疵(無効理由)がある場合、その有効性を改めて審理し、遡及的に無効とするための行政手続です(特許法第123条)。
 本制度は、当事者間の紛争を早期かつ専門的に解決すること、および不適切な特許を是正して産業の発達を維持することを目的としています。

主な無効理由

  • 新規性・進歩性の欠如(過去の公知技術から容易に発明できたもの)
  • 記載要件違反(実施可能要件やサポート要件を満たしていないもの)
  • 冒認出願(発明者でない者が勝手に出願したもの)

2. 特許無効審判の手続きと特徴

特許無効審判は、審査官1名が行う通常の出願審査とは異なり、3名または5名の「審判官」による合議体によって審理されます。特許無効審判の特徴は以下の3点です。

  • 当事者対立構造: 無効を主張する「請求人」と、特許権を維持したい「被請求人(特許権者)」が、裁判のように互いに主張と証拠を出し合う構造をとります。
  • 原則として「口頭審理」の実施: 書面による審理だけでなく、審判官の前で双方が直接主張を述べる「口頭審理」が原則として行われます(特許法第145条)。なお、近年の法改正により、ウェブ会議システム等を利用したオンラインでの口頭審理も定着しており、遠方の企業でも迅速な対応が可能です。
  • いつでも請求が可能: 特許掲載公報の発行から6か月間に限り「誰でも」請求できる「特許異議申立」とは異なり、無効審判は特許権の存続期間中であればいつでも(さらには特許権消滅後であっても)請求が可能です。ただし、請求できるのは原則として「利害関係人」に限られます。

3. 防御側(特許権者)の対抗策:「訂正請求」

 無効審判を請求された特許権者は、単に相手の主張に反論するだけでなく、特許の文言(特許請求の範囲)を減縮する等の「訂正請求」を行うことで、無効理由を回避する防御策が認められています(特許法第134条の2)。
 ただし、実務上は以下の点に留意する必要があります。

  • 機会の制限: 訂正ができる時期(答弁書提出の指定期間など)は法律で厳格に定められています。
  • 書面提出の機会: 無効審判の手続きにおいては、審判請求書の副本送達後に最初に行う「答弁書提出時」が、特許権者にとって確実な反論および訂正の判断機会となります。

 タイミングを逃さない迅速な実務判断と、無効理由を的確に回避しつつ自社の特許権を維持する減縮ラインを見極めるアプローチが推奨されます。

4. まとめ

 特許無効審判は、自社の事業を競合他社の特許から守るための選択肢である一方、自社の重要特許が狙われた際には慎重な防御が必要となる、専門性の高い手続きです。
 審判請求にあたっては、無効理由を裏付ける強固な「先行技術文献(無効資料)」の調査・精査が不可欠であり、防御にあたっては適切なタイミングでの「訂正請求」の判断が重要となります。
 他社特許への対応を検討される場合や、審判請求を受ける可能性が想定される場合は、客観的な有効性分析や先行技術調査など、具体的な対応策の準備を進めることが重要です。


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