Brexit-欧州連合商標は大丈夫?

先月23日、イギリスで行われたEUからの離脱の是非を問う国民投票で、離脱派が過半数の票を取得したことは大いに報道されているところです。

UK_flag加盟国の離脱について定めた欧州連合(EU)についての基本条約「リスボン条約」50条では、英国が欧州理事会に離脱を通告してから2年でEU法が適用されなくなる旨を規定していますので、早ければ2年以内にイギリスのEU離脱が現実のものとなる可能性があります。

欧州連合商標とイギリス

イギリスの欧州離脱で大きな影響を受けるのが欧州連合商標制度です。現状では、欧州連合商標として登録されれば、自動的にその効力がイギリス域内に及びますが、離脱後にどうなるかは不明です。今回は、あり得るシナリオとその対応策を検討してみました。

 

今後のシナリオ

イギリスは、欧州連合登録商標制度とは別途、独自の商標登録制度を有しており、そこに登録された商標はイギリス域内のみを範囲にして保護されています。その点を踏まえますと、可能性としては以下のようなシナリオが考えられます。

  1. 登録済みの欧州連合商標は、離脱後もイギリスの領域に効力が及ぶと見なされる
  2. 欧州連合商標の商標権者に対してイギリス国内商標として再出願する手続を要求する
  3. 簡易な申請で欧州連合商標からイギリス国内商標へ移行できる制度を設ける

 

それぞれの解決策の問題点

欧州連合商標は離脱後もイギリスの領域に効力が及ぶと見なされるケース

欧州連合商標の商標権者にとって負担のない最も望ましいシナリオです。イギリスと欧州が商標に関する多国間協定を結べば、十分に可能性があります。しかし、商標の使用及び商標権の効力と商業活動とは密接に結びつけられるものですので、通商貿易の分野でイギリスと欧州が制限的な取り決めしか出来ない場合、商標だけが統一的な制度を維持するのは困難であると思われます。

イギリス国内商標として再出願する手続しなければならないケース

欧州連合商標の商標権者にとって最も面倒なシナリオです。この場合は、欧州各国の商標登録から欧州連合商標登録に移行する際に認められる先行権(シニオリティ)が認められ、先願の利益などが守られるかもしれません。しかし、再審査となると商標権者だけでなくイギリス特許庁の行政事務的な負担を考えると実現的ではないかもしれません。

簡易な申請でイギリス国内商標への移行が行われるケース

最も可能性が高いシナリオと思われます。法的な権利関係をそのまま移行することで先後願の問題も生じにくく、イギリス領域内に商標権を主張したい権利だけを移行することでイギリス特許庁の取り扱う範囲が明確になります。

 

対応策-チェックポイント-

しかし、イギリスの離脱に伴う今後のシナリオはまだまだ不透明です。今後の交渉の進展を注意深く見守りつつ、早めにイギリス、欧州における商標戦略を練っておくことが重要です。

例えば、以下のチェックポイントについて検討してみてください(マドプロ国際登録出願で欧州・イギリスを指定している場合も同様です)。

  1. 現在イギリス国内商標もしくは欧州連合商標の出願がありますか?
  1. もしあるなら、それらは登録になるよう維持しましょう。
  1. 現在イギリス国内商標もしくは欧州連合商標の登録がありますか?
  1. もしあるなら、そのまま更新をして維持しましょう。
  1. 現在6か月以内に欧州連合商標出願をしましたか?
  1. それが重要な商標なら、もしものために(離脱の際に先願権が認められないような場合に備えて)、優先権を主張してイギリス国内商標としても出願することを検討してみてください。

新しく商標を採択するのなら欧州連合商標だけでなく、イギリス国内商標としても出願を検討してみてください。

出願以外の留意点

  1. 商標の使用
  1. 欧州連合商標の登録は5年以上欧州で使用していない場合、取り消される可能性が生じます。商標をイギリスでしか使用していない場合、イギリスが離脱した後は欧州連合商標で不使用と見なされてしまうのか?といった問題が生じます。そのような場合、欧州連合商標を維持したいのであれば、欧州の他国で商標を使用できるよう検討してください。
  1. ドメイン名
  1. 「.eu」のドメイン名しか持っていない場合、「.co.uk」「.com」のドメイン名の取得も検討してください。
  1. ライセンス契約
  1. ライセンス契約において、商標の使用地域について、「欧州」と記載されている場合、離脱した場合のイギリスも領域に含める旨の表示を明確にした方がいいかもしれません。

イギリスの欧州離脱の時期はまだまだ先ですが、備えあれば憂いなしです。特にハウスマークなど重要な商標は、どのようなことになっても対応できるよう十分に検討しておきましょう!!

 

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

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