フィリピンで商標登録するとは?フィリピンで商標登録するポイントを解説

フィリピンで商標登録するとは?

フィリピンは東南アジアで急速に発展している経済大国であり、商標登録は企業やブランドの保護に欠かせません。本記事では、「フィリピンで商標登録するとは?」と題し、商標登録に関する重要な情報を提供します。フィリピンの商標登録手続きやポイント、注意事項を解説すると共に、審査プロセスや権利の保護方法についても詳しく説明します。さらに、フィリピンのビジネス環境や東南アジア市場への展開における商標登録の重要性にも触れます。フィリピンで成功するためには、適切な商標登録戦略を構築し、法的な保護を確保することが不可欠です。

フィリピンの商標登録制度の概要

フィリピンの商標に関する法規則

フィリピンの商標に関する法規則は、知的財産法、商標規則、当事者系手続に関する規則の3つが重要です。知的財産法は商標の登録や保護に関する法律を定めており、商標の権利や侵害について規定しています。商標規則は商標出願や審査の手続きに関する具体的な規定を含んでおり、商標出願者はこれに基づいて手続きを進めます。また、当事者系手続に関する規則は商標の異議申立などの当事者系のイベントに関する手続の詳細を定めています。これらの法規則は商標出願者が法的な要件を遵守し、商標登録を取得するために重要な役割を果たします。正確な法規則の理解と適切な対応は、フィリピンでの商標登録を成功させるために欠かせません。

フィリピンの商標登録の手続の概要

フィリピンでは、主な商標登録出願手続は、出願、出願日の付与、実体審査、商標登録出願の公告、登録証の発行の手順で進められます。商標登録出願の公告後30日以内に異議申立てをすることができ、異議申立てがない場合または異議申立てが却下された場合に、登録証が発行されます。商標権の存続期間は、登録日から10年であり、更新により10年間延長することが可能です。さらに、マレーシアはマドリッドプロトコルに加盟しており、国際登録出願を利用して商標登録が可能です。これにより、他の加盟国にも商標の保護を拡大することができます。

フィリピンにおける商標登録のメリットと重要性

フィリピンにおける商標登録には多くのメリットと重要性があります。まず、商標登録によって独自のブランドイメージを確立し、商品やサービスの識別力を高めることができます。これにより競争力を強化し、市場での差別化を図ることができます。また、商標登録は商標権の法的な保護を受けるため、他者による商標の不正使用や模倣品の流通を防止することができます。さらに、商標登録は事業拡大や国際展開にも重要です。フィリピンは東南アジアでのビジネス拡大の拠点として注目されており、商標登録を通じて近隣諸国にも商標権を保護することができます。総じて、フィリピンにおける商標登録は企業の信頼性や競争力を高め、ビジネスの成功に不可欠な要素となります。

商標先行調査

商標先行調査はフィリピンで商標登録を考える際に重要なステップです。aseanTMviewを利用することで簡単に先行商標を調査することができます。aseanTMViewはフィリピンを含むASEAN諸国の商標データベースであり、無料でアクセスできます。このデータベースを利用して類似商標や競合他者の商標権を調査し、自身の商標登録の可能性やリスクを把握することが重要です。先行調査を行うことで、重複や衝突を避け、商標登録の成功率を高めることができます。商標先行調査は商標登録を検討する際の基本的な手続きであり、信頼性と確実性を追求するために欠かせないものです。

フィリピンの商標登録手続きの詳細

フィリピンで商標登録するには、フィリピン知的財産庁に出願手続を行う方法(個別出願)と国際登録出願を行う方法があります。

個別出願とは

フィリピンの現地代理人(特許事務所、法律事務所)を通じて、出願を行います。直接、現地代理人に依頼することもできますが、通常は日本の特許事務所などに依頼すれば、提携する現地代理人を通じて行うことができます。

出願に必要な情報・書類

出願人の名称・住所

英語の表記が必要です。

商標

ブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。漢字や英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。

指定商品・役務(サービス)

製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。1出願で多区分にわたる商品・役務を指定することができる1出願多区分制を採用しています。

所定の商品・役務の表記で無い場合、補正を求められる場合があります。aseanTMclassで所定の商品・役務の表記を検索できます。

国際登録出願(マドプロ出願)とは

国際登録出願(マドプロ出願)とは、1つの手続で複数の国に商標登録出願を可能とする国際的な枠組み(マドリッドプロトコル)を通じた、商標登録出願のことです。日本で手続を行う場合、特許庁に出願書類を提出するか、オンラインで出願することができます。日本の特許事務所に依頼すれば、手続を行ってくれます。フィリピンを指定国の1つとすることで、フィリピンへの出願手続となります。

出願に必要な情報・書類

出願人の名称・住所

英語の表記が必須です。

商標

日本のブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。

指定商品・役務(サービス)

製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。

所定の商品・役務の表記で無い場合、補正を求められる場合があります。国際登録出願で認められる商品・役務表記はMadrid Goods & Services Managerで調べられます。フィリピンの審査で認められる商品・役務表記はaseanTMclassで検索できます。

審査

商標出願の流れ:以下のようなフローで審査が行われます。

審査フロー図


※国際登録出願(マドプロ出願)の場合、国際登録(要6ヶ月程度)の後、審査が行われます。

拒絶理由通知

商標登録を申請する際には、拒絶査定のリスクも考慮する必要があります。フィリピンでの商標登録において、拒絶される理由の多くは、①識別力がない、②他人の商標との類似、などです。日本の商標制度にも類似の拒絶理由が存在し、捉え方はほぼ同じと考えてよいでしょう。商標の独自性や識別力の強化、他の商標との差異化など、拒絶査定を回避するための適切な戦略が求められます。そのためには、出願前に商標先行調査を行うことが重要となります。

フィリピンの商標登録手続きでは、日本の商標制度と同じく、拒絶理由通知を受けて反論する機会が与えられます。出願人は拒絶理由通知書の日付から4ヶ月以内で、商品・役務の補正書や反論を述べる意見書を提出する機会が与えられます。

上訴

審査官は、拒絶理由が解消されていないと決定する場合、出願人に対し拒絶査定書を送達します。審査官による拒絶査定に対しては、局長に不服申立をすることができます。局長の決定に対しては、長官に上訴することができます。さらに、長官の決定に対しては、裁判所に上訴することも可能です。

異議申立

公告された商標が登録されることにより損害を受けるおそれがあると考える者は、 当該商標登録出願が公告されてから 30 日以内に書面で異議申立てをすることができます。

商標権の管理

商標の実際の使用に関する宣誓書

商標の実際の使用に関する宣誓書(DAU)とフィリピンにおける当該商標の商業的使用の証拠を提出することが義務づけられています。DAUは以下の期間内に提出する必要があります。

(a)出願日から3年以内
(b)商標登録日から5年を経過した日から1年以内
(c)商標の更新日から1年以内
(d)商標の更新日から5年を経過した日から1年以内

出願者または登録権者は、(a)のDAU提出期限の前に、1回だけ6ヶ月の延長を申請することができます。ただし、(b)、(c)、(d)のDAU提出期限の延長はできません。

DAUが提出されない場合、商標出願は自動的に拒絶されるか、登録が取り消されます。

日本の出願人・権利者の場合、宣誓書を公証役場などで認証手続する必要があります。

商標権の登録と更新

異議申立期間内に異議が申立てられなかった場合、または異議申立てが却下された場合には、登録証が発行されます。登録証が発行された場合、その旨が公報に掲載されます。

商標登録の存続期間は登録日から10年です。 商標登録の存続期間は、フィリピン語または英語で記載した願書を提出することにより、10年間更新できます。 更新手続は、手数料の納付を条件に、存続期間満了前6か月以内に行うことができます。

商標の不使用取消制度

商標の使用が3年以上続かず、正当な理由もない場合やフィリピンでの使用がライセンスにより許されていない場合、商標の取消しを請求することができます。 また、法律では、商標を使わない場合についても規定があります。商標の不使用が商標権者の意志に関係なく起きた場合は、取消しを免れることができます。また、形状は変更されていても、識別できる特徴が保たれている限り、商標の使用は認められ、取消しや登録簿からの除去の理由とはならず、商標の保護も受けられます。

商標侵害対策と権利の保護

商標登録を行った後も、商標侵害には注意が必要です。フィリピンでは商標侵害に対して法的な保護措置があります。侵害が発生した場合は、民事訴訟や刑事訴訟を通じて権利を主張することができます。差止命令や損害賠償の請求などの対策を取ることで、商標権の保護が可能です。また、商標監視や定期的な商標調査を行うことも重要です。適切な対策を講じることで、商標の権利を確実に守ることができます。

まとめ

フィリピンで商標登録を行うことは、企業や個人にとって重要なステップです。商標登録によって独占的な権利を確立し、ブランド価値の向上と消費者の信頼を獲得することができます。しかし、フィリピンでは模倣品や横取り商標の問題も存在し、これらに対処するために商標登録のメリットと重要性を理解する必要があります。商標登録手続きの詳細や出願資格、必要な書類や情報、商標先行調査の重要性など、正確な知識と適切な戦略が成功につながります。フィリピン市場でのビジネス展開やブランド保護を考えるなら、フィリピンでの商標登録について詳しく理解し、専門家の助言を受けることが重要です。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。