海外での商標登録プロセスの一般的な流れ
海外で自社商品を販売したり、海外向け店舗・オンラインショッピングサイトを作る場合、その国で似た商標が登録されていないか確認する必要があります。また、海外で商標登録する場合は、各国で登録手続きする必要があります。
商標登録は、一般的に以下のようなステップを経て行われます。
- 先行商標調査
- 出願
- 審査
- 登録
先行商標調査は、海外でのビジネス展開に際し、類似商標の登録有無を確認し、商標権侵害を未然に防ぐために極めて重要です。
そこで効率的で有効な先行商標調査のため、おすすめの海外商標の調査・検索サイトをご紹介します。
国際機関が提供する国際的な商標調査・検索サイト
グローバルブランドデータベース(Global Brand Database)
グローバルブランドデータベース(Global Brand Database)は、世界知的所有権機関(WIPO)の提供する商標調査・検索サイトです。
グローバルブランドデータベース(Global Brand Database)の主な特徴
商標データを国際的に網羅
世界中の多くの国や地域の商標データを一度に検索できるのが最大の特徴です。具体的には、以下の多様なブランドに関するデータを収録しています。
- 各国の特許庁: 米国、欧州連合知的財産庁(EUIPO)、中国、日本など、70を超える国・地域の商標庁のデータベースが含まれています。
- マドリッド制度による国際登録: WIPOが管理する国際商標登録制度(マドリッド制度)で出願・登録された商標情報。
- リスボン制度による原産地名称: 特定の地理的表示を保護するリスボン協定に基づく登録情報。
- パリ条約第6条の3に基づく記章: 国の紋章や公的記章など、保護対象となる記章類。
これにより、ユーザーは複数の国や制度にまたがるブランド情報を、一つのプラットフォームで効率的に調査することが可能です。
高度な検索機能
単なる文字列検索にとどまらず、多様な検索オプションを提供しています。
- AIを活用した画像検索: ロゴや図形商標の画像をアップロードするだけで、AIが類似する図形を自動で探し出すことができます。これにより、デザインコードの知識がなくても、直感的に類似商標の調査が可能です。
- 多様な検索条件: 商標の名称(テキスト)だけでなく、出願人・権利者名、出願・登録番号、日付、商品・役務の区分(ニース分類)など、様々な条件を組み合わせて詳細な検索ができます。
- 絞り込み機能: 検索結果を、商標のステータス(審査中、登録、却下など)や国・地域、言語などで絞り込むことができ、目的の情報を素早く見つけ出すのに役立ちます。
無料で利用可能
これほど高機能で網羅的なデータベースでありながら、利用は完全に無料です。中小企業や個人事業主、研究者など、誰でもコストを気にすることなく、国際的な商標調査を行うことができます。
最新情報へのアクセスとモニタリング
各国のデータベースと連携し、情報の更新が定期的に行われています。ただし、最新の情報が必要な場合は、各国のデータベースを直接確認することが推奨される場合もあります。
また、特定の商標をウォッチリストに登録し、そのステータスに変更があった際に通知を受け取るアラート機能も備えており、競合他社の動向監視や自社ブランドの管理に役立ちます。
多言語対応
インターフェースは英語、フランス語、スペイン語など複数の言語に対応しており、世界中のユーザーが利用しやすいように設計されています。

国や区分など各種条件で絞込が可能で広く簡単に調べたいのならお勧めのサイトです。ただし、国によってはデータの更新が遅いので、最新のデータを調べたいのであれば各国のサイトで調べる方がよいかもしれません。また、検索の精度は検索の方法によっても相違が生じるので、専門家に依頼すればより精度の高い検索結果が得られるでしょう。
- 提供機関:世界知的所有権機関(WIPO)
- 参加国・機関数:約87か国・機関(2025年7月現在)
- 特徴:
- 商標データを国際的に網羅
- 高度な検索機能
- 無料で利用可能
- 最新情報へのアクセスとモニタリング
- 多言語対応
- 利用料金:無料
- 注意点:最新の情報が反映されるまでにタイムラグが生じる場合がある。検索の精度は検索者の技量にも依る。
欧州連合知的財産庁(EUIPO)が提供する国際的な商標調査・検索サイト
TMview
TMviewは、国際的な商標調査・検索ができる欧州連合知的財産庁の提供する世界最大級の商標データベースです。EU加盟国だけでなく、約73か国および国際機関の商標データから商標の調査・検索が可能です。複数の国や地域(EUなど)の商標をまとめて検索することができます。画像検索や商標の比較機能もある高機能な商標調査・検索サイトです。商標のアラート機能もついていて、気になる他人の商標の審査状況や自分の商標の更新期限のモニタリングが可能です。しかも無料です。
TMViewの主な特徴
- 欧州主導の巨大データベース: もともとは欧州連合(EU)の商標情報を集約するために作られましたが、現在では日本の特許庁(JPO)を含む世界70以上の国や機関が参加する巨大なデータベースに成長しています。
- 多言語対応(日本語も可): インターフェースや検索機能を日本語で利用できるため、日本のユーザーにとって非常に使いやすいのが大きな利点です。
- 一括横断検索: 複数の国や機関の商標を一度の検索でまとめて調査できるため、国際的な商標調査を効率的に行うことができます。
- 多様な検索機能:
- テキスト検索: 商標の名称で検索できます。「あいまい検索」などの機能もあります。
- 画像検索: ロゴなどの図形商標を画像で検索できます。(ただし、対応している国・機関は限られます)
- 詳細検索: 出願人名、商品・役務区分(ニース分類)などで絞り込んだ高度な検索が可能です。
- 無料で利用可能: これだけの機能を持ちながら、完全に無料で利用できます。

- 提供機関:欧州連合知的財産庁
- 参加国・機関数:約56か国・機関(2025年7月現在)
- 特徴:
- 欧州主導の巨大データベース
- 多言語対応(日本語も可)
- 一括横断検索
- 多様な検索機能
- 無料で利用可能
- 利用料金:無料
- 注意点:最新の情報が反映されるまでにタイムラグが生じる場合がある。検索の精度は検索者の技量にも依る。
ASEANが提供するASEAN各国の登録商標が調査・検索ができる国際的な商標調査・検索サイト
ASEAN Intellectual Property Portal / IP REGITER
ASEAN Intellectual Property Portal / IP REGITERは、ASEAN各国の登録商標がまとめて調査・検索ができるASEANの提供する商標データベースです。ASEANの9か国(シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ブルネイ)の商標データから商標の調査・検索が可能です。

ASEAN Intellectual Property Portal とは
- ASEAN Intellectual Property Portal はASEAN事務局が運営し、世界知的所有権機関(WIPO)が管理・維持を支援する知的所有権(特許、商標、意匠など)の情報ポータルサイトです。
- 目的は、ASEAN加盟国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の知的財産情報を、単一のプラットフォーム(ワンストップ)で提供し、ユーザーの利便性を高めることです。
IP REGISTER
IP REGISTERは、このポータルサイトの中核をなす特許、商標、意匠のデータベース検索機能です。
特徴
- 地域特化: 調査対象がASEAN地域に明確に絞られているため、この地域での事業展開を検討している企業にとっては、他のグローバルなデータベースよりも効率的に関連情報を見つけやすい場合があります。
- ワンストップアクセス: 加盟国それぞれの知財庁サイトを個別に訪問することなく、一カ所でまとめて情報を検索できるのが最大のメリットです。
- 無料: これまで紹介した他のデータベースと同様に、無料で利用できます。
まとめ
このポータルは、急成長を続けるASEAN市場で、自社の製品やサービスの名称、デザイン、技術が他者の権利を侵害しないか、また自社の権利をどう保護していくかを考える上で、最初に行うべき調査の出発点となる不可欠なツールです。
特に、TMViewやGlobal Brand Databaseと合わせて利用することで、より網羅的で精度の高いグローバルな知財調査が可能になります。
- 提供機関:ASEAN事務局
- 参加国:ASEAN加盟国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)
- 特徴:
- 地域特化
- ワンストップアクセス
- 利用料金:無料
- 注意点:最新の情報が反映されるまでにタイムラグが生じる場合がある。検索の精度は検索者の技量にも依る。
日本特許庁が提供する外国の登録商標が調査・検索ができる商標調査・検索サイト
外国特許情報サービス FOPISER
外国特許情報サービスFOPISERは、出願番号・登録番号などでロシア・台湾・欧州連合知的財産庁(EUIPO)・ベトナム・タイの商標情報を照会することができます。日本語で利用が可能です。しかも無料です。

各国特許庁などが提供する商標調査・検索サイト
このブログでも各商標調査・検索サイトの使い方などの紹介をしているので、以下の記事も参考にしてください。
専門家に依頼するには
上記の検索サイトの多くは無料ですが、自分で正しく調査できるか不安な場合はやはり専門家にお願いするのが一番です。弊所では1ヶ国あたり40,000円~(※国、商標の数・種類、商品の数・種類によって変わってきます。)で商標調査の依頼を受けています。是非お問い合わせください。
なお、商標出願・登録の費用はこれとは別に発生し、費用は国や商標の数・種類、商品の数・種類によって変動します。
これらデータベースは、国際的なブランド戦略を検討する初期段階において、非常に強力で有用な「予備調査ツール」です。しかし、最終的な出願の可否判断や、法的なリスク評価を行う際には、このデータベースの検索結果のみに頼るのではなく、弁理士や知的財産の専門家へ相談することが不可欠です。
まとめ
上記の通り、多くの海外商標を検索できるサイトが無料で提供されています。ぜひみなさんも、海外でビジネスを開始する前に商標権侵害にならないよう商標をご確認ください。