ブランド戦略からみる品種登録と商標登録

最近の報道で、政府が農産物の輸出力強化に向け、日本で新しい品種を開発した地方自治体や農家などに対し、海外での品種登録を支援する方針を決めたとの報道がありました。農林水産省所管の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発したブドウ「シャインマスカット」が中国で無断増殖されていることが発覚したことが契機となったようです。

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シャインマスカット【出所:農林水産省 登録品種データベース】

政府は、貿易が一段と自由化する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の発効を前に、農産物や関連食料品の年間輸出額を1兆円に引き上げる戦略を描いているとのことですが、輸送技術や保存技術の発達によって農産物食料品もますますグローバル化していく中で、農産物食料品の模倣に対する国際的な対策が必要となってきています。

種苗法によって定められる育成者権は、農業分野において、商標権、地理的表示とともに重要な知的財産権です。国内外の模倣対策には商標権を武器とした対応が主ですが、品種登録を行う品種の名称と商標には密接な関係があります。したがって、品種登録は商標と同じく、属地主義、つまり、それぞれの国で登録しないと権利行使できないという点も踏まえ、両者をうまく使い分けるグローバルなブランド戦略が必要となってくるのです。

  • 種苗法・・・品種登録、育成者権を定めた法律
  • 品種登録・・・新規な植物品種を農林水産省に登録すること
  • 育成者権・・・品種登録することにより得られる権利

 

登録商標と品種登録の関係

育成者権は植物の新品種を独占利用できる権利で、新規な種苗の品種を保護する目的で設けられている権利です。また、保護期間は登録から25年(もしくは30年)となっています。それに対して、商標権は更新することにより半永久的にその権利を維持することが出来ます。なぜなら、商標は営業の信用を守るためのもので、その商標を長年使用すればするほど信用は蓄積され、保護する必要性が出てくると考えられているからです。

このように商標権と育成者権では全く違う権利のように見えますが、品種登録において品種の名称を定めるうえで、その名称が他人の登録商標と抵触する場合、その名称を商品ブランド名として使用する場合など、両者の整合性を図る必要性が出てきます。
それぞれの法律は整合性を図る目的で、商標法は種苗法による品種登録された品種の名称と同一、類似する商標は登録できないと規定し、種苗法は商標法による登録商標と同一、類似の品種の名称は登録出来ないと規定しています。権利者・出願人が同一であってもこれは同じです。

「あまおう」の例

商標と品種登録をうまく使い分けたブランド戦略としてよく挙げられるのが、福岡県が「とよのか」の後継種として新しく開発した、いちごの「あまおう」の例です。2001年、「福岡S6号」の名称で品種登録された後、2002年、「あかい」「まるい」「おおきい」「うまい」の頭文字をとった「あまおう」の名称で商品販売、及び、商標登録を行いました。
いちごに関連する加工品や菓子などの商品への「あまおう」ブランドの展開を考えれば、商標権を一括して取得、管理できるメリットがあります。また、商標登録の方が品種登録より海外での権利取得・権利行使も容易で、商標であれば半永久的にこのブランド名を独占することも可能です。さらに、品種登録した品種と「あまおう」のブランド名は完全に一対一の関係である必要はないので、品種改良を行った別の品種を「あまおう」のブランド名で売り出すこともできるでしょう。実際に「あまおう」はこれらのメリットを十分に活用し、成功を納めています。
※ただし、種苗を販売する場合には、その種苗の名称として、品種登録した名称を使用することが義務づけられています。

もちろん、品種登録は、その優れた特性を有する品種の無断増殖を防止する意味で大変重要です。しかし、安易に品種登録の名称を商品名として使用するのではなく、品種登録の名称とブランド名(商標)を分けて考えることが、農産物のブランド戦略では大きなポイントとなってきます。
プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

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カテゴリー: 商標制度 タグ: パーマリンク

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