大量出願人の網に自らかかってしまった枝野さん…。 – 「PPAP」出願人が「立憲民主党」を既に出願済の件 –

衆議院解散から小池都知事による希望の党立ち上げ、そして民進党の希望の党への合流を受けた左派勢力の分裂と、衆議院選挙に向けて大きな動きが連発していますが、そんな中、民進党の枝野幸男代表代行が「立憲民主党」という新党を立ち上げると表明しました。個人的には、自身の思想信条を明確にした政党が生まれることは、投票する有権者にとってもよいことだと思っていますが、知財業界+αで話題になっているのはそこではなく、「立憲民主党」という党名が既に「PPAP」商標を勝手に出願したことで有名となった”あの人”に出願されていたということです。
「枝野氏結成の『立憲民主党』…あのベストライセンス社に「商標出願」されていた!」(弁護士ドットコムNEWS:10月2日付)

https://www.bengo4.com/internet/n_6745/

「『立憲民主党』既に商標出願、今年2月『審査待ち』」(日刊スポーツ:10月3日付)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171003-00018435-nksports-soci

 

先に出願していたのはB社のようですが...

もろもろの記事によれば、そもそもこの「立憲民主党」という名称は、民主党が維新の党を吸収合併することとなった去年の2月頃、新党名の案として民主党から出ていたものだそうで、この大量出願人、B社が「立憲民主党」という商標を2件出願しています(2016年2月25日出願の商願2016-020017と2016年3月10日出願の商願2016-026256)。ただし、これらの商願は所定の出願手数料を払っておらず、所定の期間経過後に出願が却下されました。しかし、詳しい説明は省きますが、出願の分割という手続を行っていまして、今は下記2件の商標出願が特許庁に係属している状況です。

・商願2017-028975「立憲民主党」(第9,16,35,41,42,45類)

・商願2017-113468「立憲民主党」(第9,16,35,41,42,45類)

ということで、枝野さんとしては、一度不採用となった商標案を復活させて採用したところ、既に公表していたことから他人に出願されてしまっていた、という残念な事態となっています。一般企業であれば名称案が公表されないよう管理することもできますが、政党名などは本人の意を問わず公表されてしまうので、思い通りに管理することも難しいです。

今回、枝野さんが新党名を「立憲民主党」と発表したことを受けて、B社は係属中の商標出願について出願手数料を納付して、その商標出願を有効とする可能性があります。その場合、これらの出願はどうなってしまうのでしょうか(まさか、登録されてしまうのでしょうか)!?

 

枝野さんは「立憲民主党」の党名を使えなくなってしまうのか!?

私の予測では、B社の商願は特許庁に拒絶され、枝野さんによる「立憲民主党」商標出願が(もしあれば)登録されるだろうと考えています。その根拠は、特許庁が今年6月に出したアナウンスにあります。
「特許庁の『本気』を見ました。 – 他人が商標を出願している件について(続報) –」(2017年6月22日付)

https://www.primeworks-ip.com/blog/news/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E5%BA%81%E3%81%AE%E3%80%8C%E6%9C%AC%E6%B0%97%E3%80%8D%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82-%E4%BB%96%E4%BA%BA%E3%81%8C%E5%95%86%E6%A8%99%E3%82%92%E5%87%BA/

※「手続上の瑕疵のある出願の後願となる商標登録出願の審査について(お知らせ)」(特許庁:6月21日付)

http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/kashi_kougan.htm

 

上記のブログ記事で言及したように、たとえ大量出願人が出願手数料を支払ったとしても「特許庁は、商標法に基づき適切に審査する」=各拒絶理由の該当性が厳格に審査・判断されるため、出願人が他人の商標を大量に出願している者である場合には、「商標の使用意思なし」として出願が拒絶される可能性が高いです。今回はまさにそのケースに該当します。

ただし、今回のようなケースでは、B社・U氏もその判断に強く抵抗する可能性もあります。例えば「実際に出願したのはこちらが先だ」とか、「一度公表されて採用されなかった商標なのだから、枝野氏以外にも商標登録の権利があるはずだ」などと反論してくるかもしれません。しかし、B社やU氏が出願人である限りは、そうした反論が受け入れられないでしょう。枝野さんにはぜひ早めに商標出願をしていただきたいものです。

とはいえ、枝野さんが商標登録を受けたとしても、彼らが何かしらの対抗策をとる可能性もあり、場合によってはトラブルが長期化するおそれもあります。やはり新たな「名称」を決める際は、事前に商標調査やスクリーニングをしっかりやってトラブルを予防することが大事なのだな、と改めて思いました。

 

<ブランドの保護は、商標専門弁理士へ!>
プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

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この記事を書いた人

長谷川 綱樹

長谷川 綱樹

30歳になるまで、知財とは全くの別分野におりましたが、一念発起して弁理士となり、商標専門で現在に至ります。 そのせいか、法律よりも「人の気持ち」のほうに興味があります(いいのか悪いのかわかりませんが)。 商標は事業活動と密接に関係していて、関わる人々の「気持ち」が大きく影響します。「気持ち」に寄り添い、しっかりサポートできる存在でありたいと思っています。 出願案件では「取得する権利の最大化」を目指して、商標のバリエーションや将来の事業展開の予定など、丁寧にお話を伺います。 係争案件では「いかに円満に解決するか」を重視して、目先の勝ち負けだけでなく、将来的な問題解決を意識して対応して参ります。