オリンピックを「応援しちゃいけない」!? -アンブッシュマーケティングで商標権侵害を問うには-

いよいよリオデジャネイロオリンピックが開幕しましたね。日本選手の活躍に元気をもらいつつ、寝不足が続く毎日です。競技を終えられた選手にはねぎらいの言葉を、これから出場する選手には心からの声援を送りたいところです。

そんな中、気になるニュースを見つけました。

「オリンピック応援禁止令?–ツイート禁止通知と『アンブッシュ』規制法の足音」(CNET Japan:8月9日付)
http://japan.cnet.com/news/business/35087137/

※関連ニュース
「米国オリンピック委員会、非スポンサー企業がオリンピックについてTweetを行うことは商標権侵害」(businessnewsline:7月27日付)
http://business.newsln.jp/news/201607270501510000.html

 

内容は、米国オリンピック委員会(USOC)が、リオ五輪をめぐる企業のソーシャルメディア投稿に対して商標権侵害の警告をしたことに対する意見です。USOCは、スポンサー契約をしていない企業がツイッターで「#Rio2016」や「#TeamUSA」等のハッシュタグを使用するのは商標権侵害にあたるとして、非スポンサー企業に対して使用を控えるよう求めており、これに対して選手の一部が猛反発している、ということが伝えられています。

 

オリンピックに代表される大きなスポーツイベントの際には、こうした「アンブッシュマーケティング」(権利を保有しない企業や個人が権利者の許可を得ずにその権利を利用する「便乗広告・便乗商法」の総称)の件が話題となります。

記事にあるとおり、日本でも2020年東京オリンピックの開催が決定した3年程前に、広告審査機構(JARO)が、「東京オリンピック・パラリンピックを応援しています。」、「祝2020年開催」、「2020年にはばたく子供たちを応援」、「2020円キャンペーン」等の表現を広告上で使用すると日本オリンピック委員会(JOC)や国際オリンピック委員会(IOC)から使用差し止めや損害賠償請求を受ける可能性がある、という見解を公表して話題となりました。

「『祝!東京決定』NGの恐れのあるオリンピック広告の表現例」(JAROウェブサイト:2013年9月13日付)
http://www.jaro.or.jp/ippan/saikin_shinsa/20130913.html

 

確かに、オリンピックのスポンサーは高額な協賛金を支払うことでオリンピックロゴその他の知的財産を利用する権利を得ています。もしそれがスポンサー契約せずに利用できるとなると、オリンピックスポンサーになるメリットがなくなってしまいます。その意味で、USOCやJARO(の背後にいるであろうJOCやIOC)が上記のようなアクションをとることもわからないではありません。

 

ただ、オリンピックスポンサーではない第三者(企業)にしてみれば、「どこまでやったらダメで、どこまでだったらいいのか?」という判断基準がわかりません。はっきりと「オリンピック」と書いているわけじゃないのに「使ってはダメ」と言われることに違和感がありますし、そもそも、それって本当にオリンピック委員会の「知的財産」なの?という疑問(というか不満)を持つのも当然じゃないかと思います。

 

ここで米国特許商標庁のデータベースを確認してみると、ハッシュタグの例として挙げられた「#Rio2016」や「#TeamUSA」等はUSOC等によって商標登録されていました。全ての商品・サービスを網羅しているかどうかは確認していませんが、登録された範囲内であれば、警告に反してこれらのハッシュタグを使用した場合、商標権侵害の訴えが認められる可能性も出てくるのではないかと思います。この点、USOCのスタンスは、一応、登録商標という根拠に基づいたアクションということができます。

 

一方、JARO(というかJOC)のほうはどうでしょうか。特許庁データベースで挙げられた「表現例」についてざっと検索してみましたが、そのものズバリで登録されているものはないようです。とすれば、JAROはいったいどういう根拠に基づいて判断し、公表しているのか疑問です。

オリンピック委員会は五輪に関するあらゆる言葉を自由に規制できる権利を持っているわけではないので、JARO(そしてJOC等)の公表したような、単にオリンピックを「想起させる」だけで商標権侵害にあたるのとでもいうような主張は、やはり無理があると言わざるを得ません。もし日本で商標権侵害を問おうとするならば、せめて根拠となる登録商標を明示し、実際にと使用された言葉とそれを比較・観察して、両者が類似(混同)するものであると示したものに限定すべきではないでしょうか。

ただ、記事にあるように、日本でも時限立法で「アンブッシュマーケティング規制法」ができてしまえば、こうした議論は無駄になってしまうでしょう。ただ、今後どうなるとしても、当時のJARO(というかJOC等)のスタンスは、決して肯定されるものではないと思います。
プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

 

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