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これも「売名」行為!?-「黒夢」バンド名の商標権がオークションに -

執筆者 : 長谷川綱樹

今回は、ちょっとした驚きと発見があったニュースをご紹介します。1990年代に一世を風靡したビジュアル系バンドの中でも異色の存在だった「黒夢」の商標権がインターネット公売にかけられているそうです。

1)「『黒夢』の商標権、ネット公売にかけられていた。税金滞納で差し押さえか」(The Huffington Post:9月14日付)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/13/kuroyume_n_12002386.html

2)「『黒夢のバンド名、商売で使えなくなる可能性も』 特許庁の担当者」(The Huffington Post:9月14日付)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/14/kuroyume-tokkyocho_n_12003638.html

live_houseビジュアル系バンドブームとは世代が違う私でも、「黒夢」というバンドは知っています。なので、このニュースには驚きました。しかも、「インターネット公売」というものがあって、商標権がその対象になるということにも同じくらい驚きました(それもヤフオクが行っていることも!)。

特許庁データベースで対象案件の情報を確認したところ、商標権者は「有限会社フルフェイスレコード」で、バンドのボーカル、清春さんが設立したレコード会社だそうです。他の記事には、この会社の電話番号にかけたが、「この電話は現在使われておりません」とアナウンスされた、との情報も出ていました。他の記事に、こうした事案のほとんどが税金滞納による差し押さえが原因と出ていましたが、実際のところはどうなのでしょうか。

話を商標に戻すと、このように、商標権には財産権としての価値があります。例えば、とある事業とともに商標権を譲渡したり、相続や会社の合併を受けて権利が承継されたりすることもあります。今回は、国税庁の差し押さえを受けて、公売という形で譲渡がされるわけです。私も以前に、商標権が「仮差押え」された場面を目にしたことがありますが、その後の公売について触れたのは、今回はじめてです。「権利」という曖昧なものが、こうやって現金化されていくわけですね。勉強になりました。

さて、「Yahoo!Japan官公庁オークション」の該当ページを見ると、特記事項として「移転登録料(登録免許税3万円)等は買受人が負担することとなります」と記載されていました。これは、商標権の移転登録申請には印紙代(登録免許税)が必要なので、その点に言及したものです。ちなみに、譲渡移転の際は商標1件につき3万円ですが、相続や合併等の場合は3千円です。

これらの商標権が、入札の結果、商標権が誰かしらに移転した場合、どうなるのでしょうか。登録第5339371号「KUROYUME」を例にとると、その指定商品・役務(権利を得ている商品やサービス)に、第9類「レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」、第25類「被服及び履物」、第41類「音楽の演奏」があります。つまり、CDやDVD、配信される音楽ファイル、さらにはライブ演奏することが権利範囲となっています。こうした権利がバンド本人(が所属するレコード会社)から他人に移ってしまう、ということです。

商標権はその商標を指定された商品・役務(サービス)について(業として)独占排他的に使用できる権利ですから、当然、自身が使用することに問題はありません。記事2)には、特許庁担当者のコメントとして、「公売で第三者が購入することになれば、その人と新たに契約を結ばない限りは、『黒夢』というバンド名をビジネスで使用できなくなります。商標権の購入者が、全く別のバンドで『黒夢』の名前を使った商品を展開することも可能です」とあります。今回、商標権が他人の手に渡ったのは、第三者に勝手に出願・登録されたことが理由ではなく、差し押さえに端を発するものです。第三者が商標権を取得したことに正当性が認められるため、商標権を行使されたら反論は難しそうです。

一方、この記事で「今回の公売で商標権を買った人は、『黒夢』の現在売られているCDを販売差し止めすることもできる」とありますが、これはどうでしょうか。ここで言う「現在売られているCD」は、正規のレコード会社が商標権者からの許諾等に基づいて製造販売した、いわゆる真正品と考えられます。であれば、それが販売された後(流通市場に出た後)に商標権が別の名義人に移ったとしても、商標権侵害として権利行使することはできないのではないでしょうか。この部分、特許庁担当者がコメントしたものなのか、それとも、この記事を書いた記者によるものなのかわかりませんが、誤解を招くところなので、指摘しておきます。

最後に、これら商標権の入札が終わって、第三者が権利を取得した場合、それをどう使う気なのかが気になります。できることなら、音源を販売しているレコード会社(東芝EMIやavex trax)や関係者など、トラブルとならなそうな人が買ってくれればいいのですが。

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

 

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  • この記事を書いた人

長谷川綱樹

2020年弁理士会商標委員会委員長。2005年弁理士試験合格。日本弁理士会(JPAA)、日本商標協会(JTA)所属。1971年生まれ。

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