キャラクターの商標登録の重要性
ゆるキャラブームが定着し、ご当地キャラクターは地域おこしに不可欠な存在となりました。キャラクターは視覚的な印象と親しみやすさを与え、商品・サービスのトレードマークとして非常に価値があります。本記事では、キャラクターを商標登録する際に知っておくべき重要なポイントをまとめました。
キャラクターの名称と図形の保護
キャラクターの保護には、名称とビジュアル表現のそれぞれに対応した方法があります。
- キャラクターのビジュアル表現(絵や図形): 著作権法による保護が可能です
- キャラクターの名称: 著作権法の保護対象外となるため、商標登録による保護が推奨されます
商標登録の方法と費用
キャラクターの商標登録には、以下の選択肢があります。
- キャラクター図形と名称をまとめて1件で登録:
- メリット: とりあえず登録したい場合に費用を抑えられます
- デメリット: 名称のみで権利を行使する場合など、権利範囲が制限される可能性があります
- キャラクター図形と名称を分けて登録:
- メリット: より広く保護できる強い商標権を取得できます
- デメリット: それぞれに費用がかかります
商標登録と著作権法の違い
キャラクターの絵やビジュアル表現は著作権法でも保護されますが、商標登録には費用をかけてでも行うべき重要な意味があります。
著作権の不明確さと商標権の明確性
- 著作権:
- 創作した時点で自然発生するため、誰がいつ創作したかという事実が第三者には不明確です
- 紛争発生時、著作権者がこれらの事実を証明する責任があり、客観的証拠の提出が困難な場合があります
- 商標権:
- 権利者、権利の内容、権利発生日などが特許庁に登録されており、非常に客観的で明確です
- 紛争発生時、侵害者は商標登録を知っていたとみなされ、権利者にとって有利です
- 商品化契約やライセンス契約を結ぶ際にも、その存在が明確な商標権が根拠として好まれます
権利の存続期間
商標権は半永久的に存続可能です。10年ごとの更新により、権利を維持できます。
他人の商標登録防止
商標法上、他人の著作権に抵触する商標は登録できませんが、特許庁の審査では、ある程度有名なキャラクターでなければ著作権の存在を理由に登録が拒絶されることはありません。
商標登録をしておけば、同じキャラクターだけでなく、類似するキャラクターの登録も排除できます。
キャラクターの商標的価値の保護
著作権は表現物の創作的価値を守るためのものです。
商標権は、その商標に付随する業務の信用を守るためのものです。
「ペコちゃん」(不二家)やソフトバンクの「白戸家の犬のお父さん」のように、特定の商品やサービスに付随するキャラクターは、所有者の業務の社会的信用性を象徴し、商標としての顧客吸引力を発揮します。
この価値はライセンス料などに反映されるため、キャラクターの価値を高めるためにも商標登録は有効です。
類似キャラクターの商標検索の重要性
商標登録出願をする前に、商標検索を必ず行うことをお勧めします。
拒絶理由: 類似する商標が先行して登録されている場合、出願は審査で拒絶されます。
侵害のリスク: 先行商標が存在する場合、自分が作ったキャラクターであっても他人・他社の先行商標が類似していると商標権侵害となる可能性があります。
商標検索の方法
特許庁の商標データベースや商標情報サービスを活用します。
これらのデータベースで、自社の商標が他の商標と類似していないか、登録状況などを確認できます。
特許情報プラットフォーム:J-PlatPatを活用した検索
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat:Japan Platform for Patent Information)は、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する、特許、実用新案、意匠、商標などの産業財産権関連公報を無料で検索・照会できるデータベースです。
図形商標の検索手順

- J-PlatPatにアクセスします。
- 「商標検索」ページを開きます。
- 検索項目「図形等分類」を選択します。これは図形要素を含む商標を検索する際に使用します。
- 調べたい図形要素に対応するコードを入力して検索します。
- 図形要素にどのようなコードが割り当てられているかは、トップメニューの「図形等分類表」をクリックし、「図形等分類表」ページで確認できます5。
- 例:
- 大分類:「1. 天体、自然現象、地図」
- 中分類:「1.7 月」
- 小分類:「1.7.1 満月、いくつかの月」
どのポーズを商標登録すべきか
キャラクターには様々なポーズや動きがあるため、どの図柄で商標登録すべきか迷うことがあります 。
- 代表的な図柄の登録: 実際に商品パッケージなどで使用する代表的な図柄を登録するのが良いでしょう 。
- 模倣からの保護: 他人が異なるポーズを模倣する場合でも、キャラクターの特徴が一致していれば商標権で保護が可能です 。
- 立体商標: キャラクターを立体看板や着ぐるみとして使用する場合は、立体商標として登録できます。
- 動きの商標: TVCMやウェブサイト上の動画で特定の動きを行う場合は、動きの商標として登録することも可能です 。
キャラクター商標登録の具体例
キャラクター | 権利者 | 登録情報 |
---|---|---|
![]() | 熊本県 | 第5387805号(第16類)、第5540074号(28区分)、第5544489号(第24類) |
くまモン | 熊本県 | 第5387806号(第16類)、第5540075号(28区分)、第5544490号(第24類) |
![]() | 株式会社不二家 | 第2057240号(5区分)、第2060972号(5区分)、第2162938号(6区分)、第2079378号(第30類)他14件 |
![]() | 株式会社不二家 | 第2420200号(14区分)、第3339508号(第16類)、第5796207号(第9類) |
ペコちゃん | 株式会社不二家 | 第1744659号(第30類)、第1894303号(第30,32類)、第4258892号(第29類)、第5575547号(第3,5類) |
![]() | 任天堂株式会社他2社の共有 | 第4247910号(6区分)、第4331938号(6区分)、第4534057号(13区分) |
ピカチュウ PIKACHU | 任天堂株式会社他2社の共有 | 第4288312号(第9,28,38類) |
【出所:特許庁】
商品化契約と「商品化権」の定義
キャラクタービジネスを多くの商品やサービスに拡大していく場合、権利者は第三者とライセンス契約を結び、そのキャラクターの使用に応じてライセンス料を得ることが一般的です。この契約は一般に「商品化許諾契約」と呼ばれます。
- 「商品化権」とは: どの法律にも明記されている用語ではありませんが、キャラクターの商品化に関連する著作権、商標権、意匠権、不正競争防止法上の権利などを総称して「商品化権」と呼んでいます 。
契約における重要事項
紛争を防止するためにも、キャラクタービジネスにおける契約では以下の点を明確に書面で定めておくことが重要です 。
- 対象となるキャラクターの定義
- 使用期間
- 使用の地理的範囲
- ライセンス料
商標登録の費用
商標の出願および登録(10年分)には、最低44,900円からの印紙代(国に支払う金額)が発生します 。加えて、特許事務所などを通じて手続きを行う場合は、その手数料がかかります 。手数料は事務所によって異なるため、複数の事務所から見積もりを取ることをお勧めします 。
キャラクターに関する権利は複雑であり、保護方法の検討が必要です 。弁理士などの専門家によく相談し、賢くキャラクターの保護を行いましょう !