「日本酒」に含まれるのはどこまで? – 商標における指定商品等の範囲について –

僕は結構お酒を飲むのが好きで、定期的に高校時代の友達や大学時代の仲間、新卒時代の同期や以前勤めた職場の同僚、交流のある弁理士の方々と飲んでいますが、年齢のせいか最近は翌日に響くことが増えてきました。特に日本酒を飲むと酔っぱらってしまって、翌朝「よく帰れたな」と思うことも多いです。なので翌日に大事なことがあるときは、我慢して「ビールと酎ハイだけ」としています。でもやっぱり、お刺身やお寿司のときは日本酒を飲みたくなりますよね。お寿司をつまみながら日本酒を飲んでいると「あぁ、日本人で本当によかった」と思います。

さて、今日付で特許庁から「日本酒」に関するこんなアナウンスが出ました。

「指定商品・指定役務の表示中に「日本酒」を含む商標登録出願の取扱いについてのお知らせ」(特許庁:2018年4月13日付)
http://www.jpo.go.jp/seido/shohyo/seido/bunrui/nihonshu.html

「日本酒」の定義が狭くなる背景

要は「日本酒」という指定商品が含む範囲が狭くなりますよ、というものです。

なお、ここでいう「地理的表示」とは、いわゆる農林水産省による地理的表示保護制度とは別のもので、国税庁が「酒類の地理的表示」として認定(指定)しているものです。例えば、単式蒸留焼酎について「壱岐」「球磨」「琉球」「薩摩」が、清酒について「白山」などが登録されていて、2015年 12 月に国レベルの地理的表示として「日本酒」(清酒)が指定されています。

「酒類の地理的表示」における「日本酒」の定義は、「原料の米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒」とあり、これに該当しない清酒は「日本酒」と名乗ってはいけないことになりました。そういえば何かのテレビ番組で、とある国で現地産の米を使った「日本酒」が出てきた、というニュースを見た記憶があります。そうした商品との差別化を図る目的もあるのでしょう。外国産のものが悪いとは思いませんが、日本産のものとは違いますよ!という「区別」は必要だと思います。シャンパンとスパークリングワインと同じように考えればわかりやすいのではないでしょうか(実際、あまり美味しくないシャンパンもおいしいスパークリングワインもありますからね)。

「日本酒」の定義から外れるものは?

前置きが長くなってしまいましたが、2015年12月以前は、商標の世界で「日本酒」という言葉は広めに定義されていて、「清酒、合成清酒」だけでなく「泡盛、焼酎、日本産以外の清酒、白酒、直し(みりんに焼酎を加えたものだそうです)、みりん」等も含まれていました。これが2015年12月に「日本酒」が「酒類の地理的表示」とされたことを受けて、商標出願中に指定商品「日本酒」が含まれていた場合、その内容を明確にするよう拒絶理由が通知されるようになりました。つまり、「日本酒」の表示を認めずに、「泡盛、合成清酒、焼酎、白酒、清酒、直し、みりん」や「濁酒」のうちの必要なものを具体的に記載する補正をすることが求められていました。

しかし今回のアナウンスで、今後は「日本酒」を指定した場合、「地理的表示の表示基準を満たした日本酒」と理解しますよ、という運用になります。その結果、「日本酒」という表示は認められますが、それに「泡盛、合成清酒、焼酎、白酒、日本産以外の清酒、直し、みりん」や「濁酒」は含まれないことになり、出願後に補正することもできなくなるので注意が必要です。

商標の世界では、権利範囲は指定した商品・役務(サービス)が基準となるので、こうした権利範囲に直接影響する運用変更はとても重要です。業界の方々はぜひお気をつけください。

<ブランドの保護は、商標専門弁理士へ!>
プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

弊所へのお問い合わせはこちら→ Sodan

「弊所では弁理士(特許)を募集中です。」http://primeworks-ip.com/recruit/attorneys

この記事が気に入って頂けたら、下のボタンのクリックをお願いします!

にほんブログ村 士業ブログ 弁理士へ
にほんブログ村

お問い合わせ・ご相談はこちら

商標・意匠のことならどんなことでも、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

長谷川 綱樹

長谷川 綱樹

30歳になるまで、知財とは全くの別分野におりましたが、一念発起して弁理士となり、商標専門で現在に至ります。 そのせいか、法律よりも「人の気持ち」のほうに興味があります(いいのか悪いのかわかりませんが)。 商標は事業活動と密接に関係していて、関わる人々の「気持ち」が大きく影響します。「気持ち」に寄り添い、しっかりサポートできる存在でありたいと思っています。 出願案件では「取得する権利の最大化」を目指して、商標のバリエーションや将来の事業展開の予定など、丁寧にお話を伺います。 係争案件では「いかに円満に解決するか」を重視して、目先の勝ち負けだけでなく、将来的な問題解決を意識して対応して参ります。