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【商標制度解説・国内編】商標審査基準の改定2017年(1)~商標法制定の趣旨に反するという拒絶~

執筆者 : 木村純平

以前のブログ記事にも書いたように、今年も商標審査基準が大きく改定され、4月1日からの審査に適用されています。

今年も商標審査基準が大幅に見直されます ~ 結合商標の類否 ~

本ブログではこの改訂を何回かに分けて、今回の改訂の内容、趣旨、留意点などを説明していきたいと思います。

商標法制定の趣旨に反するという拒絶

今回の改訂前には、「商標法制定の趣旨に反する」という拒絶理由(以下「趣旨違反」とします。)が審査基準には規定されていました。かなりざっくりした文言で、この文言だけでは何が拒絶の理由なのかよくわからないのですが、要は、同一人が同一の商標について同一の商品又は役務を指定して重複して出願したとき、この拒絶理由が通知されるというものです(「商標審査基準(第12版) 第18 6.」)。

重複した出願の問題点と背景、及び運用の変更

確かに、このような重複した出願には、①審査の重複が生じること、②重複の一方が登録後移転された場合互いに排斥しあう専有権が発生してしまうこと、③第三者が無効審判・取消審判をする際、二重に手続が必要であること、といった問題があります。

しかし、一方で、最初の商標登録から時間が経過し、実際に使用する商品・役務が増えてきた場合、現行の制度では指定商品・役務(サービス)を既存の登録に追加することは認められていないため、新たな商標登録出願を行う必要があります。ここで、更新などの管理上のコストを考えると、古い登録の内容を含め全ての指定商品・役務(サービス)を新しい1件の登録にして一元管理をしたいというニーズがでてきます。

改訂前の特許庁の運用では、双方または一方の指定商品・役務(サービス)の全部が同一の場合だけでなく、下記のケースのように指定商品・役務(サービス)の一部が同一の場合も「趣旨違反」の規定が適用されるとしていました。

「趣旨違反」の例

 先願後願
被服被服,履物
被服,履物被服
洋服,靴類洋服,仮装用衣服

今回、審査基準の改定の議論のなかでこの運用を上記の実務的なニーズを配慮して緩めることとし、一部の指定商品・役務(サービス)だけが重複する場合は拒絶されないとの運用が確認されました(「商標審査便覧 41.01 商標法第3条の趣旨に反する場合の審査運用について」)。

※但し、上記②のケースのような先願の指定商品・役務を削除だけすればよいような出願は同様に拒絶されます。

では、審査基準上の何が改訂されたのか?

上記の変更は運用上の変更が確認されただけであり、審査基準の文言に影響を与えるものではありません。では、何が変わったか大まかに言うと、「商標法制定の趣旨に反する。」との文言が「商標法第3条の趣旨に反する。」に変更され、根拠条文が明記されることとなりました(「商標審査基準(第13版) 第18 2.」)。

「商標法制定の趣旨に反する。」のどこが問題視されたかというと、審査における拒絶理由は商標法第15条に限定列挙されていて、逐条解説(いわゆる「青本」)にも「商標登録出願が本条各号に該当しない以上、これ以外の理由で拒絶されることはあり得ない。」とされているわけで、それが「商標法制定の趣旨に反する。」で拒絶されるのはまずいでしょ、という認識です。そこで、文言が「商標法第3条の趣旨に反する。」に変更される事となったわけです。

まとめ

  • 審査基準の改訂前は既に自分が登録・出願した同一の商標について、指定商品・役務(サービス)が重複する出願をすると拒絶されたが、改訂により、拒絶されなくなった。
  • これにより、指定商品・役務(サービス)を追加して再出願することがやりやすくなった。
  • 更新のタイミングなどに合わせて使用する指定商品・役務(サービス)を確認しましょう。範囲を広げて再登録すれば、新規出願と更新のトータルコストを抑えることが可能です。
  • 登録を持っていない分野の商標の使用は大変危険です。他人に既に登録されているかもしれません。そんなトラブルの際は弁理士など専門家に相談しましょう。

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

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  • この記事を書いた人

木村純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。 経歴など詳しくはこちらを

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