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「大茶会」の開催は商標権侵害?~伊藤園の登録商標「大茶会」の影響は~

執筆者 : 木村純平

ペットボトル飲料「お~いお茶」で有名な飲料メーカー、伊藤園が商標「大茶会」を登録したことで話題になっています。

「お~いお茶」の伊藤園が「大茶会」を商標登録、お茶関係者に困惑広がるhttps://thepage.jp/detail/20170406-00000002-wordleaf (出典 THE PAGE)

登録商標「大茶会」の権利範囲、どんな行為が商標権に抵触するの?

そこで、この登録商標「大茶会」(第5918861号)を特許庁の「特許情報プラットフォームJ-Plat Pat」で確認してみました。指定商品・役務(サービス)は、

第32類茶,茶飲料
第35類茶の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
第43類飲食物の提供

ですので、簡単に言うと、他人が「大茶会」という商品名の「茶,茶飲料」を製造・販売したり、「大茶会」という店名の店舗・販売サイトで「茶,茶飲料」を販売したり、「大茶会」という店名の飲食店を営業したりすると、この伊藤園の登録商標の商標権侵害となります。

他人の「大茶会」は商標権侵害?

「大茶会」と言えば、天正15年10月1日(1587年11月1日)に京都北野天満宮境内において関白太政大臣・豊臣秀吉が主催した大規模な「北野大茶会」が有名ですが、現代においても、茶道のイベントとして、「東京大茶会」「さやま大茶会」など各地で催されているようです。

では、このような伊藤園以外の「大茶会」の開催は、伊藤園の登録商標の商標権侵害になるのでしょうか?商標権の侵害といえるには、登録商標の指定商品・役務と対象となる商品・役務が類似している必要があります。「大茶会」の開催は役務としてはどのように把握される役務なのでしょうか?特許庁の採用されている指定役務の例として「お茶会・お茶事の企画・運営又は開催」(第41類)がありますので、これが該当しそうです。そうすると、伊藤園の登録商標の指定商品・役務とは類似しない役務なので、商標権侵害にはならない、ということになります。

でも問題が無いわけではない

しかし、他人が「大茶会」の開催と関連して、「大茶会」という商品名の「茶,茶飲料」を製造・販売したり、「大茶会」という名のもとで「茶,茶飲料」を販売したり、飲食店を営業したりすると、やはり、伊藤園の登録商標の商標権侵害となるわけで、普通の「大茶会」の開催に制約が生じる、もしくは威嚇的効果で主催者が開催に及び腰になる可能性は十分にあると思います。

ただ、実際はどうでしょう。多くの「大茶会」は、例えば「東京大茶会」など、前にその開催される地名をつけています。そうすると「大茶会」と「東京大茶会」は「東京」の文字の相違があるので、両商標は非類似であると判断される可能性は高いと考えます。特に、実際に大茶会が開催され、それに付随する商品の販売、役務の提供であれば、裁判所はそのような事情を斟酌したうえで、権利侵害は生じていないとの判断を下すのではないかと思っています。したがって、地名による識別といった棲み分けがなされて、一般的に開催されている「大茶会」については、侵害事件にまで発展するような可能性は高くないのではと考えます。

ただし、自分で商標登録して権利を持っておくのが一番安心できる方法だと思いますので、各地の「大茶会」を開催している関係者の方々は、自分たちの「~大茶会」を伊藤園と同じ指定商品・役務について商標登録を試みることをお勧めいたします。

商標的価値は高い

特許庁の商標の識別性の審査において、実際にその商標が使用されているかどうかを調査し、識別性の有無(その商品・役務に関して広く一般に使用されているので誰かに独占させるに適しているのかどうか)を判断します。「大茶会」も指定役務「お茶会・お茶事の企画・運営又は開催」(第41類)については、識別性の無い語として登録は難しいでしょう。しかし、関連性は高いが直接的には関連しない指定商品・役務については登録の可能性は高くなります。

今回の事例のように広く一般的に使われている語が、直接的ではない関連する商品・役務について登録が認められる事例は多くあります。そして、このような登録は上記のような威嚇的効果があり、本来は商標権の効果が及ばない領域に影響を与えるといった意味で、強力な商標権と言えるものです。

ということは、つまり、商標採択の際、一般的に使われている語を避ける必要はないということです。ただし、登録できるか否かを見極めるには、その語と商品・サービスの関係を正しく判断しなければなりません。ご検討される際は、ぜひ我々商標弁理士にご相談ください。

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

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  • この記事を書いた人

木村純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。 経歴など詳しくはこちらを

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