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「パクリ」はどこまで許される? - コメダ珈琲の店舗デザイン(トレードドレス)について

執筆者 : 長谷川綱樹

coffee皆さん、「コメダ珈琲店」ってご存じですか?愛知県周辺では超有名で、最近は日本全国に店舗を展開している大手コーヒーチェーンです。僕も出張した際に何度か入ったことがありますが、昔懐かしい感じの喫茶店、という雰囲気で、一服するサラリーマンが多かったのが印象的でした。

さて、このコメダ珈琲店を運営する株式会社コメダが、自身の店舗に外観等が似ている和歌山市の喫茶店に対して、店舗外観などの使用差し止めを求める仮処分の申立てをしていた件で、店舗の使用を禁じる仮処分命令が出た、というニュースがありました。

「『コメダそっくり店』外観使用差し止め 東京地裁が仮処分決定」(日本経済新聞:12月27日付)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFD27H07_X21C16A2000000/

「『コメダ珈琲店』そっくり、店舗使用禁じる 東京地裁」(朝日新聞DIGITAL:12月27日付)
http://www.asahi.com/articles/ASJDW4446JDWUTIL011.html

記事によれば、申立てを認めた理由として「コメダ珈琲店の外観は、他の同種店舗とは異なる顕著な特徴を持ち、消費者にもコメダ珈琲店の特徴が広く認識されている」と判断した上で、「コメダ珈琲店」と相手方喫茶店との間の類似性の有無を検討して、「余りに多くの視覚的特徴が同一又は類似しており、全体として類似を否定できない」と指摘、「提携関係など緊密な営業上の関係が存すると混同させる恐れが認められる。店舗外観の使用はコメダの営業上の利益を侵害する恐れがある」と結論付けたと書かれています。早く実際の決定書を確認したいところです。

店舗デザイン保護の現状

この件、個人的にとても興味を持っています。というのも、私は日本弁理士会の実務系組織である商標委員会で「トレードドレス」に関する調査・研究をするメンバーで、店舗デザインに関するトレードドレスの保護について検討をしています。今回の決定は、仮処分であるとはいえ、画期的なものだと思います。

今回のように、店舗デザイン等が類似するとして争われた件はこれまでもありました。例えば、居酒屋系焼鳥屋の「鳥貴族」と「鳥二郎」の事件では、鳥貴族が鳥二郎側を不正競争防止法によってロゴの使用禁止や損害賠償を求めました。「和民」と「魚民」の間で同様の問題が起こったことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。これらの件はいずれも和解となっており、「マネをした」と訴えられた側(鳥二郎・魚民)はいずれもロゴや看板等の使用を続けています。

このように、店舗デザインが「似ている」ことによるトラブル」は昔からあったのですが、店舗デザインは複数の構成要素(特徴)から生じる全体的なイメージに関するもので、商標権や不正競争防止法の適用が難しく、「似たもの」を使用する行為を効果的に規制する制度がないというのが現状でした。そのため、最終的には和解せざるを得ないことも多かったのです。

(一方、判決が出た事例として、「西松屋商品陳列デザイン」事件や「『めしや食堂』店舗外観」事件があります。ご興味のある方はぜひご覧ください。)

こうした現状からすれば、(繰り返しますが)今回のケースは、仮処分とはいえ、店舗デザインのトレードドレスについて不正競争防止法による保護の可能性を認めた画期的なものです。この仮処分とは別に本訴もあるようなので、その中で、相手方喫茶店の行為が不正競争に該当するか否か具体的に判断されることでしょう。両者の視覚的特徴の認定及びそれらの類似性、店舗デザインの周知性と商品等表示該当性、商品又は営業との混同を惹起させるか否か、などなど、論点が盛りだくさんです。興味深く経過を見守りたいと思います。

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

 

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  • この記事を書いた人

長谷川綱樹

30歳になるまで、知財とは全くの別分野におりましたが、一念発起して弁理士となり、商標専門で現在に至ります。 そのせいか、法律よりも「人の気持ち」のほうに興味があります(いいのか悪いのかわかりませんが)。 商標は事業活動と密接に関係していて、関わる人々の「気持ち」が大きく影響します。「気持ち」に寄り添い、しっかりサポートできる存在でありたいと思っています。 出願案件では「取得する権利の最大化」を目指して、商標のバリエーションや将来の事業展開の予定など、丁寧にお話を伺います。 係争案件では「いかに円満に解決するか」を重視して、目先の勝ち負けだけでなく、将来的な問題解決を意識して対応して参ります。 経歴など詳しくはこちらを

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