お前はどこの「きのこ」じゃ? – 「きのこの山」立体商標の登録を(個人的に)お祝いします –

去年は「カ~ル」が東日本で販売されなくなるという衝撃のニュースのせいでしばらく仕事に手がつきませんでしたが、その後通販でチーズあじ(昔は「チーズがけ」でしたよね)とうすあじの5個ずつパックが販売されているのを見つけてひと安心。お陰様で我が家には常にカ~ルがストックされていています。

さて本題ですが、ついに「きのこの山」の“あの形”が立体商標として登録されたというニュースが飛び込んできました!断然きのこ派の僕としてはうれしい限りです。(たけのこ?なにそれおいしいの?)

「『きのこの山』が立体商標に 『登録拒絶』乗り越え」(ITmediaビジネスオンライン:2018年5月10付)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180510-00000047-zdn_mkt-bus_all

記事によれば、2015年に一度出願したものの拒絶されてしまい、再チャレンジした結果だそうです。なんといっても発売から40年以上の大ロングセラーですから、この結果も当然ではないかと思います。

立体商標を登録する難しさ

本来、商標は文字や図形など平面的なものを対象としていましたが、立体物を商標として登録できるのが同制度の特徴です。立体物の表面に文字や図形などの「識別要素」があれば登録は簡単ですが、今回のような「形そのもの」を登録したい場合は一気にハードルが上がります。商標は物やサービスの出所を表す「識別標識」なので、識別できるものでないとダメなわけです。例えば、「どら焼き」といえば誰でも「丸く茶色いカステラ風生地の間にあんこが挟まっている形」をイメージすると思いますが、この形だけを手がかりとしてどこの商品か「識別」することは困難です。でも、表面に文字や図形の焼き印があれば、どこの商品なのかわかるようになるでしょう。

逆に言えば、焼き印のような「マーク」がないものを商標として登録するには、その形を見ただけでどこの商品だかわかる程度に知られていることが必要です(これを「周知性」といいます)。今回であれば、あの形を見て人々が「あ、きのこの山ね」とわかるかどうか、というハードルがあったわけです。

“知られている”ことをどう証明するか

記事には、明治さんが「きのこの山」の生産数、販売数、広告宣伝量などをとりまとめた意見書や首都圏と関西圏での認知度が90%以上であるという調査結果を提出したとあります。この「調査結果」(立体商標の周知性を証明するアンケート調査結果)が登録の成否を左右する重要なものといわれています。

それも、単に調査結果を出せばいいというものではなく、客観性が担保されているか非常に厳しい基準があります。過去に、ヤクルトの容器が形状のみの立体商標として登録されていますが、こちらも2度の商標出願を経て登録されていて、最初に出願したアンケートは質問内容に誘導する要素があったとして証拠採用されていません。2回目のアンケートでは誘導と考え得る要素が排除され、かつ、大学教授の鑑定意見(アンケート内容が適切である旨)も提出して、ようやく証拠採用されています。

こういった話を聞くと、よく選挙のときに投票所の前でやっているようなアンケートにどれだけ意味があるのか、ちょっと笑ってしまいます。僕も昨年の衆議院選挙でとある新聞社のアンケートを受けましたが、あまりに偏向した質問ばかりで驚きました。もしこんなアンケートを提出したらあっさり却下されるでしょう、笑。

さて、登録までのハードルは高いとしても、こうした登録事例が増えていくことで有名な商品がしっかりと保護を受けられるようになるのはよいことだと思います。個人的に「きのこの山」は定番としてずっと売っていてほしいものなので、メーカーさんが権利維持に頑張ってくれているのはうれしい限りです。No Moreカ~ル!

<ブランドの保護は、商標専門弁理士へ!>
プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

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この記事を書いた人

長谷川 綱樹

長谷川 綱樹

30歳になるまで、知財とは全くの別分野におりましたが、一念発起して弁理士となり、商標専門で現在に至ります。 そのせいか、法律よりも「人の気持ち」のほうに興味があります(いいのか悪いのかわかりませんが)。 商標は事業活動と密接に関係していて、関わる人々の「気持ち」が大きく影響します。「気持ち」に寄り添い、しっかりサポートできる存在でありたいと思っています。 出願案件では「取得する権利の最大化」を目指して、商標のバリエーションや将来の事業展開の予定など、丁寧にお話を伺います。 係争案件では「いかに円満に解決するか」を重視して、目先の勝ち負けだけでなく、将来的な問題解決を意識して対応して参ります。