商標の拒絶とは?:拒絶理由通知を受け取ったら

商標の登録出願を行った後、拒絶理由通知を受け取ることがあります。この通知は商標登録が却下される理由を示すものであり、初めて受け取った方にとっては驚きや戸惑いを感じるかもしれません。

しかし、拒絶理由通知はあくまで一時的なものです。重要なのは、それに対する適切な対応を行うことです。通知を受け取ったら、まずは通知内容を詳しく確認しましょう。どのような理由で商標登録が却下されたのか、具体的な理由は何かを把握することが重要です。

次に、専門家の助言を求めることをおすすめします。弁理士などに相談し、適切な対策を立てることで拒絶理由に対応できます。彼らは豊富な知識と経験を持ち、拒絶理由の解消に向けたアドバイスを提供してくれます。

商標登録出願後に拒絶理由通知を受け取ることは一般的です。しかし、適切な対応を行うことで商標登録を進めることができます。冷静に対応し、専門家のアドバイスを受けながら、商標登録の成功を目指しましょう。

拒絶理由通知とは

商標の拒絶理由通知とは、商標登録出願を特許庁に行った場合、その商標を登録してよいかどうか審査官が審査を行い、基準を満たさないと判断された場合、出願人に送られる「拒絶理由通知書」のことを指します。この通知は、商標登録が却下される理由や根拠を示すものであり、商標出願人が対応するにあたって重要な情報源となります。通知を受け取ったら、冷静に内容を確認し、どのような理由で商標が却下されたのかを理解する必要があります。拒絶理由通知は、商標出願人が出願を商標登録に導くために適切な対応が求められるチャンスでもあります。弁理士など専門家の助言を得ながら、適切な対策を立て、対応することが重要です。拒絶理由通知を受け取った場合は、焦らずに対応策を検討し、商標登録の成功に向けて前向きに取り組んでいきましょう。

対応①:通知内容の確認

商標の拒絶理由通知を受け取ったら、まずは冷静に対応するために通知内容を確認しましょう。重要なのは、どのような点が問題とされているのかを正確に把握することです。詳細な情報を確認することで、対応策を適切に立てることができます。また、通知の受け取り日からの期限も把握しておきましょう。通知内容を正確に理解し、次の対応に備えるためにも、できるだけ早く確認作業を行いましょう。

拒絶理由通知書

拒絶理由通知書は以下のような書面です。通知には商標の却下理由や具体的な根拠が記載されています。通知には拒絶理由のほかにも、必要な手続きや提出書類の要件などが含まれる場合もあります。それらを見逃さずに確認しましょう。

拒絶理由の解説(特許庁)https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/shohyo/kyozetsu/kaisetsu.htmlより引用

対応②:専門家への相談もしくはその検討

商標の拒絶理由通知を受け取ったら、専門家への相談を検討することが重要です。商標の登録には法的な知識や手続きが必要であり、拒絶理由に対して的確に対応するためには専門的な助言が必要です。

専門家とは、特許事務所の商標担当弁理士や知財を専門として商標案件も取り扱う弁護士などです。彼らは商標法や登録手続きに精通しており、拒絶理由に対して適切な対策を提案してくれます。弁理士や弁護士でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、特許等に関する特許庁における手続等についての代理等を業とすることができないこととされ(弁理士法第 75 条)、その違反には刑事罰が科されています(同法第 79 条第 3 号)のでご注意ください。

専門家への相談では、拒絶理由の内容や根拠を詳しく説明し、現状の商標登録の可能性を確認することができます。彼らは経験豊富な専門家であり、拒絶理由を克服するための具体的なアドバイスや戦略を提供してくれます。商標登録は重要なビジネスの一環であり、拒絶理由に適切に対応することは商標の保護と競争力の向上につながります。専門家の助けを借りることで、効果的な対応策を見つけ出し、商標登録の成功に近づけるでしょう。

対応③:対応策の検討

拒絶理由

拒絶理由は以下のようなものがあります。

商標法第6条第1項及び第2項(商品・役務の表示が不明確/区分相違)

商標の拒絶理由として、商標法第6条第1項及び第2項に基づく商品・役務の表示が不明確または区分相違であるという指摘を受けることがあります。この拒絶理由に対処するためには、以下の点に注意する必要があります。

まず、審査で認められる商品・役務の表記については、「特許情報プラットフォーム/商品・役務名検索」を活用して調査することが重要です。正確で一般的に認識される表記方法を把握しましょう。

拒絶理由を解消するためには、手続補正書を提出し、商品・役務の表記を正確かつ明確に修正することが多くの場合で有効です。修正が適切に行われれば、審査官によって拒絶理由が解消されるでしょう。

一般的でない商品・サービスの表記が困難な場合には、説明資料を提出し、審査官に対して表記について相談することも有効です。審査官から提案を受けることで、拒絶理由を解消する方法を見つけることができるかもしれません。

商標法第3条第1項柱書(使用についての疑義)

願書で指定した商品・役務(サービス)について、出願人に使用する意思があるか否かを確認するものです。商品・役務(サービス)を多く指定した場合や小売等役務(サービス)(第35類の「~の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」)を多く指定した場合に指摘されます。商品・役務(サービス)を減らす手続補正書を提出するか、自分が商標を使用している、または使用する意思があることを示す「商標の使用又は使用意思に関する証明書類等」を提出すれば解消できます。

商標法第3条第1項第1号から第6号(識別力)

商標に他人と自己の商品・サービスを識別することができない、識別力がないという拒絶理由があります。たとえば、単に商品・役務(サービス)の普通名称であったり、品質や内容を表示している商標の場合に指摘されます。最近の審決では「バストケアBra」(指定商品「ブラジャー」)、「置き配保険」(指定役務「損害保険契約の締結の代理」)といった商標がこの理由で拒絶されています。意見書を提出して反論するか、一部の指定商品・役務(サービス)についてのみであればそれらを削除する手続補正書を提出することで拒絶が解消する場合もあります。

商標法第4条第1項第11号(先願)

先に出願された他人の商標と類似する場合指摘されます。意見書を提出して反論するか、一部の指定商品・役務(サービス)だけ抵触関係にあればそれらを削除する手続補正書を提出します。

商標法第4条第1項第16号(品質等の誤認)

指定商品・役務(サービス)との関係で商標が品質誤認を生じるとの拒絶理由です。たとえば、商標が「○○ドーナツ」で指定商品が「菓子,パン」の場合、ドーナツ以外の菓子・パン(たとえばサンドイッチ)の商品名に「○○ドーナツ」を使うと消費者が混乱するため登録できない場合に指摘されます。誤認しないよう指定商品を補正することで拒絶解消できます。上の例だと指定商品を「ドーナツ」にすれば大丈夫です。

商標法第4条第1項10号,15号,第19号(他人の周知・著名商標)

商標出願時には、商標法第4条第1項10号,15号,第19号に基づく拒絶理由として、他人の周知・著名商標との類似性が指摘されることがあります。周知・著名商標と類似ではない、混同を生じないとの反論を意見書で述べることで拒絶理由が解消する場合もあります。

商標法第4条第1項第8号(他人の氏名・名称等)

他人の氏名などと同一の商標は拒絶理由となります。たとえば、服飾デザイナー本人が自分の名前を商標登録しようとする場合であっても、同姓同名の他人が存在する場合、拒絶理由になります。漢字で1文字でも異なれば拒絶理由になりませんが、ローマ字や平仮名、片仮名の場合は読みが同じであれば拒絶理由になりますので注意が必要です。

対応④:対応の流れと期限

応答期限

拒絶理由通知を受け取ったら、重要なポイントは応答期限です。通知には、どれくらいの期間内に回答をする必要があるのかが明記されています。商標出願の拒絶理由への応答期限は拒絶理由通知の発送日から40日(在外者の場合は3ヶ月)です。

出願人が国内居住者または在外者である場合、1通の請求で応答期間の1か月延長が認められます。請求のための合理的な理由は必要ありません。手数料は2,100円です。応答期間経過後でも、当該期間の末日の翌日から2か月以内に請求すれば、1通の請求で応答期間を2か月延長できます。請求の理由は必要ありませんが、延長請求には4,200円の手数料が必要です。

意見書

商標出願時に拒絶理由通知を受け取った場合、適切な対応をすることが重要です。拒絶理由への応答には、意見書を提出する方法があります。

意見書は、商標出願者が審査官に対して自身の商標の識別性や類似性に関する主張や証拠を述べる文書です。意見書を通じて、拒絶理由の解消や商標の登録を求めるための根拠や説明を提供することができます。

意見書の作成には専門的な知識と経験が必要です。商標出願者自身が意見書を作成することも可能ですが、多くの場合は商標の専門家や弁理士の助言や支援を受けることがおすすめです。彼らは適切な論拠や法的な観点から商標の強みや独自性を主張するための意見書を作成することができます。

意見書の提出は、商標出願者が拒絶理由に対して自らの立場を主張する貴重な機会です。適切な根拠や説明を提供し、商標の登録を目指しましょう。意見書を通じて審査官に商標の価値や独自性を伝えることで、拒絶理由を解消し商標登録を得る可能性を高めることができます。

特許庁では簡単な意見書のサンプルを参考に公開しています。

手続補正書

拒絶理由通知を受け取った場合、拒絶理由への応答として手続補正書を提出することがあります。

手続補正書は、商標出願者が審査官に対して商標出願書や関連書類の内容を修正・補完するための文書です。拒絶理由を解消するために必要な修正を手続補正書に記載し、商標の登録を目指します。指定商品・役務の表記を訂正する場合や、他人の先行商標と一部の商品役務が抵触する場合でそれらを削除する場合、手続補正書を活用して拒絶理由を解消することができます。

特許庁では簡単な手続補正書のサンプルを参考に公開しています。

拒絶といっても多くは適切な対応をとることで登録に導くことができます。誤った対応でみすみす登録を逃してしまうこともありますので対応は慎重にしましょう。

発生する費用

商標出願時に拒絶理由通知を受け取った場合、拒絶理由への応答には一定の費用が発生することを知っておく必要があります。

まず、意見書や手続補正書の提出に際して、特許庁への支払いは発生しません。これらの書類は商標出願者自身が作成し、提出することができます。ただし、専門的な知識や経験が必要な場合は、弁理士などの専門家に相談することがおすすめです。専門家に手続を依頼する場合、手数料や費用が発生します。手続補正書や意見書の作成、代理人としての対応などに関連する費用が該当します。弁理士や専門家に依頼する場合、費用の詳細や料金体系は事前に確認することが重要です。料金は依頼内容や手続の複雑さによって異なる場合がありますので、明確な見積もりや契約内容を確認しておくことが大切です。

商標の拒絶理由に対する適切な応答は商標登録を得るために重要です。費用の発生に関しては、自身で対応する場合や専門家に依頼する場合ともに、事前に費用の範囲や料金について理解しておくことが必要です。

弊所では中途受任であっても中途受任費用は発生せず、意見書費用(60,000円~)や手続補正書費用(30,000円~)のみで依頼を請け負っています。

まとめ:商標登録の成功への道

商標の拒絶理由を受け取った場合、焦らずに適切な対応をすることが重要です。最初に拒絶理由通知を確認し、内容を理解しましょう。拒絶理由が明確でない場合や疑問点がある場合は、専門家へ相談することも検討しましょう。

拒絶理由に対する適切な応答方法は、意見書や手続補正書の提出です。必要な修正や訂正を行い、商標登録に必要な要件を満たすようにしましょう。他人の先行商標や商品・役務の表記との抵触が問題となる場合、それらを削除または変更することも考慮しましょう。

専門家の助言や支援を受けることも推奨されます。弁理士や商標エージェントに相談し、適切な手続を進めることで、成功への道を歩むことができます。ただし、専門家に依頼する場合は、手数料や費用の詳細を事前に確認しましょう。

商標登録のプロセスは時間がかかることを覚えておきましょう。忍耐と継続が求められます。拒絶理由への適切な応答を行いながら、商標登録の成功に向けて前進しましょう。

商標登録はビジネスのブランド保護にとって重要な一歩です。正確な情報の把握と適切な対応を行い、商標の強固な保護を目指しましょう。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。