中国で商標登録するとは?中国で商標登録するポイントを解説

中国で商標登録するとは?

はじめに

中国市場は日本企業にとって大変魅力的な成長市場です。しかし、そこでのビジネス展開には注意が必要です。中国では模倣品の問題が深刻であり、日本企業の商標もしばしば真似されて登録される「横取り」商標問題が発生しています。これにより、企業のブランド価値や知的財産が侵害されるリスクが高まります。そのため、日本企業が中国市場で事業展開する際には、商標登録が極めて重要です。商標登録によって、自社の商標を保護し、模倣品や横取り商標に対して法的手段を持つことができます。日本企業が中国市場で成功するためには、商標登録を適切に行うことが欠かせません。

中国の商標登録制度の概要

中国では、商標登録制度が日本と同様に存在します。商標権を取得するためには、中国の商標登録の管轄官庁に出願手続を行い、審査を通過する必要があります。中国本土とは別に、香港、マカオ、台湾では独自の商標登録制度が存在するため、それらの地域で商標権を取得したい場合は、各国の商標の管轄官庁に出願手続を行い、審査を通過する必要があります。中国の商標登録は、出願から登録まで一定の手続きと時間を要するため、事前に正確な出願準備と審査に対する適切な対応が重要です。適切な商標登録手続きを行うことで、中国での商標権の保護を確立することができます。

中国の商標に関する法規則

中国では、商標登録を取得するための法規則が存在します。商標の登録手続きは、商標法や商標審査基準、審理基準に基づいて行われます。商標の登録は、商標の識別性や類似性、公序良俗に適合するかどうかなどの要件に対して審査を受けます。また、商標の出願手続きや審査に関する具体的な規定も存在します。例えば、商標の出願は中国の商標局に行い、審査の結果は公告されます。審査において異議がある場合は、審査結果に対して異議申立てを行うことも可能です。商標の登録手続きには一定の期間がかかり、日本と同様に先願主義(出願日が早い方が有利となるとの考え)がとられるため、できるだけ早い出願が重要です。中国の商標に関する法規則を遵守しながら、商標登録を取得することで、商標の保護を確立することができます。

中国の商標登録の手続の概要

中国で商標を登録するには、以下の手続きが必要です。まず、商標の出願を中国の商標局に行います。出願には、商標の画像や商品・役務の分類、出願者の情報などが必要です。出願後、商標局による形式的な審査が行われ、必要な書類や要件に適合しているか確認されます。その後、実質審査が行われ、商標の独自性や類似性、公序良俗に適合するかなどが審査されます。審査に合格した場合、商標は公告され、公示期間中に異議がなければ登録が完了します。商標登録後は、定期的な更新手続きや侵害監視なども必要です。商標登録手続きは複雑な場合もあるため、専門家の助言を受けながら進めることが重要です。

中国における商標登録のメリットと重要性

商標登録による独占的な権利の確立

商標登録は、企業やブランドにとって重要な戦略的な手段です。商標登録によって、独自の商標を保護し、他者による模倣や類似商標の登録を防ぐことができます。商標登録を行うことで、自社の商品やサービスに関連付けられた商標を独占的に使用できる権利が確立されます。これにより、顧客に対して安心感や信頼性を与えることができます。ディストリビューターなどの取引先やオンライン上のマーケットプレイスから商標権を有していることを求められることもあります。

特に中国では、商標模倣行為が顕著なため、自社の商標を保護するための登録は不可欠です。商標登録を怠ると、他者によって商標が模倣され、競合他社や偽造品の流通などのリスクが高まります。商標登録によって独占的な権利を確立することで、自社のブランド価値を守り、市場での競争力を維持することができます。したがって、中国で商標登録を行うことは、企業にとって重要かつ戦略的な一手となります。

商標登録によるブランド価値の向上と消費者の信頼獲得

商標登録は、企業やブランドのブランド価値向上と消費者の信頼獲得にも寄与します。商標登録によって、独自の商標を保護し、他者による模倣や類似商標の登録を防ぐことができます。これにより、企業のブランド価値が向上し、独自性と差別化を示すことができます。消費者は商標を通じてブランドを識別し、信頼を寄せる傾向があります。商標登録によって独占的な権利を確立することで、自社のブランド価値を守り、他社からの模倣や混同を防ぎます。消費者は正規の商標を見て、信頼性や品質の高さを認識し、偽造品や低品質商品から選ぶリスクを回避できます。したがって、商標登録はブランド価値の向上と消費者の信頼獲得につながり、企業の成長と競争力強化に不可欠です。中国で商標登録を行うことは、これらのメリットを享受する上で重要なステップとなります。

横取り商標対策

中国市場に進出する日本企業にとって、商標登録は効果的な横取り商標対策となります。横取り商標とは、他人の商標をそっくりそのまま自分のものとして商標登録してしまうことで、たとえば、高値で買い取らせることを目的として日本などの外国ブランドの商標を登録することが中国では横行しています。商標登録を行わない場合、横取り商標によるリスクが存在します。横取り商標の取り消しには相当なコストがかかり、高額な買収交渉に巻き込まれるリスクがあります。また、横取り商標による商標権に基づき、逆に商標権侵害で訴えられるリスクが存在し、ディストリビューターなどの取引先やオンライン上のマーケットプレイスからビジネスを拒まれる原因ともなります。先に商標登録することは横取り商標に対する有効な対策となり、中国からの撤退リスクを低下させます。日本企業が中国市場で成功するためには、商標登録の重要性を認識し、早期に適切な対策を講じることが不可欠です。

商標先行調査

商標先行調査は、中国で商標登録を行う際に重要なステップです。先行調査では、以下の方法が用いられます。

まず、中国国家知的財産局の商標データベースを検索し、類似または同一の商標が登録されていないか確認します。たとえば「中国商標網(http://wcjs.sbj.cnipa.gov.cn/)」というサイトで検索することができます。さらに、市場調査やインターネット検索を通じて、類似商標や競合他社の商標使用状況を調査します。

商標先行調査の重要性は大きく、出願手続きを行う前に行うことが推奨されます。先行調査により、既に登録されている商標との競合や類似商標の存在を把握できます。これにより、出願の可否や商標戦略の立案に役立ちます。

調査結果に基づいて出願戦略を立てることも重要です。類似商標が存在する場合は、商標の変更や訴訟リスクの回避など、適切な対策を講じる必要があります。先行調査によって得られた情報を基に、出願戦略を慎重に検討しましょう。

商標先行調査は商標登録の成功を左右する重要なプロセスです。正確かつ綿密な調査を行い、商標登録に向けた戦略を適切に立てましょう。

中国の商標登録手続きの詳細

中国で商標登録するには、中国の国家知識産権局商標局に出願手続を行う方法(個別出願)と国際登録出願を行う方法があります。

個別出願とは

中国の現地代理人(特許事務所、法律事務所)を通じて、出願を行います。直接、現地代理人に依頼することもできますが、通常は日本の特許事務所などに依頼すれば、提携する現地代理人を通じて行うことができます。

出願に必要な情報・書類

出願人の名称・住所

中国語の表記が必須です。社名に漢字以外の文字(ローマ字やカタカナなど)が入っている場合、意味や読みから当て字の名称を作成する必要があります。
【例】
Google(谷歌)、Amazon(亚马逊)・・・漢字の読みから
Apple(苹果)・・・意味(「リンゴ」)から

すでに使用している表記やこだわりの表記がなければ、特許事務所などが提案してくれるでしょう。

商標

ブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。漢字や英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。

拒絶される理由になるので、商標内に地名や原材料など品質を表示する文字を含めるのは控えましょう。

指定商品・役務(サービス)

製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。

所定の商品・役務の表記で無い場合、補正を求められる場合があります。中国商標網で所定の商品・役務の表記を検索できます。

出願人の証明書類

初めて出願する場合、法人の場合、登記簿謄本(現在事項全部証明書など)の写しが、自然人の場合、パスポートなどの写しが必要です。
※発行からの有効期限は特にありません。

委任状

現地代理人(中国の弁理士、弁護士)によって書式が異なります。捺印、権限を有する人間の署名のいずれかが必要です。

国際登録出願(マドプロ出願)とは

国際登録出願(マドプロ出願)とは、1つの手続で複数の国に商標登録出願を可能とする国際的な枠組み(マドリッドプロトコル)を通じた、商標登録出願のことです。日本で手続を行う場合、特許庁に出願書類を提出するか、オンラインで出願することができます。日本の特許事務所に依頼すれば、手続を行ってくれます。中国を指定国の1つとすることで、中国への出願手続となります。

出願に必要な情報・書類

出願人の名称・住所

英語の表記が必須です。

商標

日本のブランド名や商品名、サービス名といった文字や、ロゴ、図形マークといった登録したい商標を決めます。漢字や英語(ローマ字)だけでなく日本語の登録も可能です。

拒絶される理由になるので、商標内に地名や原材料など品質を表示する文字を含めるのは控えましょう。

指定商品・役務(サービス)

製造・販売する商品や提供するサービスを指定商品・役務として決めます。商品・役務は国際的に決められた45の区分に分類されます。指定商品・役務がきまれば自然に区分も決まります。区分の数によって費用が変わってきます。依頼する特許事務所などに商品・役務の情報を伝え、費用を確認しましょう。

審査

商標出願の流れ:以下のようなフローで審査が行われます。


※国際登録出願(マドプロ出願)の場合、国際登録(要6ヶ月程度)の後、審査が行われます。

拒絶査定

商標登録を申請する際には、拒絶査定のリスクも考慮する必要があります。中国での商標登録において、拒絶される理由の多くは、①識別力がない、②他人の商標との類似、③公衆に誤認を与える、などです。日本の商標制度にも類似の拒絶理由が存在しますが、中国の審査基準はより厳格です。商標の独自性や識別力の強化、他の商標との差異化など、拒絶査定を回避するための適切な戦略が求められます。そのためには、出願前に商標先行調査を行うことが重要となります。

中国の商標登録手続きでは、日本の商標制度とは異なり、査定前に拒絶理由通知を受けて意見書で反論する機会はありません。審査結果がそのまま査定となるため、慎重な出願準備が重要です。拒絶査定を回避するためには、商標の独自性と識別力の強化、他の商標との類似性の回避、公衆に誤認を与えない設計などが求められます。また、専門家の助言や経験豊富な代理人の支援を受けることで、商標登録の成功確率を高めることができます。適切な戦略を立て、商標登録に向けて進めましょう。

不服審判

審査で拒絶になった場合、不服を申し立てる(反論する)ことができ、審査官とは別の審判官により再審理されます。拒絶査定の受領から15日以内に申立を行わなければならないので、迅速な判断が必要となります。

異議申立

登録査定公告後3ヶ月間、登録に不服があれば、誰でも異議申立を行うことができます。勝手に自分の商標を登録された場合の主な対応手段の一つです。

審査の流れと期間については、以下の記事を参考にして下さい。

商標権の管理

商標権の更新

存続期間・更新手続:商標権の存続期間は、登録日から10年です。存続期間が経過する10年毎に、商標権を更新することができます。

不使用取消

3年間以上登録商標を中国国内(香港、マカオ除く)で使用していない場合、他人から登録の取消を請求される可能性があります。
自分の商標登録の障害となる他人の登録を取り消すための手段としても有効です。

商標侵害対策と権利の保護

中国で商標登録する際に重要な課題となるのが商標侵害対策と権利の保護です。まず、オンラインマーケットプレイスや実際の市場での定期的な模倣品のウォッチングが必要です。これにより、侵害行為を早期に発見し対処することができます。また、現地の営業やディストリビュータとの密な連携を図り、模倣品の情報を収集する体制を整えることが重要です。彼らからの情報は貴重であり、侵害行為の追跡や証拠収集に役立ちます。

さらに、現地代理人や日本の弁理士、専門家との継続的な協力関係を築くことも大切です。彼らは現地の法律や規制に詳しく、商標侵害対策の助言や訴訟手続きのサポートをしてくれます。継続的な情報交換や相談を通じて、権利の保護を強化しましょう。経験豊富な専門家のアドバイスを受けながら、商標侵害対策に積極的に取り組むことが重要です。

まとめ

中国で商標登録を行うことは、企業や個人にとって重要なステップです。商標登録によって独占的な権利を確立し、ブランド価値の向上と消費者の信頼を獲得することができます。しかし、中国では模倣品や横取り商標の問題も存在し、これらに対処するために商標登録のメリットと重要性を理解する必要があります。商標登録手続きの詳細や出願資格、必要な書類や情報、商標先行調査の重要性など、正確な知識と適切な戦略が成功につながります。中国市場でのビジネス展開やブランド保護を考えるなら、中国での商標登録について詳しく理解し、専門家の助言を受けることが重要です。

詳細な費用は以下の海外商標お見積もりフォームから弊所にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。