もうすぐ始まるミャンマー商標登録制度をわかりやすく解説

ミャンマーは、東南アジアのインドシナ半島西部に位置し、日本の1.8倍程度の国土と5,000万人以上の人口を保有する国で、近年、軍事政権から民主政権への移行と同時に国外に開かれた経済政策を推し進めており、高い経済成長が期待される注目の国です。

 

商標法成立の経緯

そんなミャンマーでは、今まで、商標法が存在せず、やっと、2019年1月30日に商標法が国会で成立しました。従来、商標の保護は、商標法以外の法律(刑法、登録法など)によって、限定的に守られているに過ぎず、商標を守るためには、登録所に商標の所有者宣言を登録し、それを自分で新聞に掲載して権利の主張を行う、といったことが行われていました。また、商標の争いでは、先使用主義(先に使用している方が優先されるという考え)が採用されていました。

 

しかしながら、法制度を整備し国外からの投資を呼び込むため、2017年に商標法などの知的財産法案(特許法、意匠法、商標法、著作権法)が国会に提出された後、2019年になって、ようやくこれら法律が成立にいたりました。

 

ただし、知的財産行政を担う知的財産庁は現在設立準備中で、商標法の施行もその設立に合わせて決められる方針で、具体的な施行時期は今のところ決まっていません。

 

商標法の概要

標章の定義

登録対象である標章は、文字やロゴ、図形など「視覚的に認識できる標章」に限られ、音や匂いの商標は登録の対象にはなりません。

拒絶理由

登録には実体的な審査が行われ、識別力がない・公序良俗に反する等といったいわゆる絶対的拒絶理由の審査と、先登録商標と同一又は類似する・登録又は未登録の周知商標と同一又は類似する等、といった相対的拒絶理由に関する審査が行われます。

パリ優先権

他国の出願を基礎として、パリ優先権が主張可能です。

公告・異議申立

審査を通過した出願は公告され(60日間)、だれでも異議申立を提起することができます。異議申立が無い場合、もしくは、異議申立が認められない場合に、商標は登録となります。

存続期間

登録となった商標は出願日を起算として10年間、権利保護が認められます。それ以降は10年毎の更新手続きが可能です。

移行措置

すでに現行制度で登録している商標を出願する場合、登録されている証拠を出願時に提出しなければならないとされていますが、どのような移行措置を受けることができるのかはまだ決まっていません。

 

上述のとおり、商標法が成立し、商標登録制度の基本的な仕組みは明らかになったものの、商標登録の具体的運用を管理する知的財産庁が設立されていないため、細かな規則やいつから制度の運用が開始されるかはまだ分かっていません。

 

しかしながら、近日中には新商標制度が開始されると思われますので、現行制度で登録を行っている商標権者の方々は以下の準備を行うことをお勧めします。

  1. 現在登録している商標をリストアップし、確認し、出願に備える
  2. 出願時に提出できるように、現在の登録所への登録を証明する書面を確認する
  3. 商標をミャンマーにて既に使用しているか確認する
  4. 使用している場合、使用開始日、現地の取引業者の情報など詳細を確認する
  5. 使用証拠(商品の写真、取引書類)を準備する
  6. 商標登録制度に具体的な運用に関する情報を継続的に収集する

 

また、新制度に合わせて新規にミャンマーへの商標登録を検討されている皆様も、商標をリストアップし、商標登録制度に具体的な運用に関する情報を継続的に収集することをお勧めします。

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

 

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。