【解説】中国における商標審査フローとタイムライン

商標登録出願の審査とは、出願された商標が登録の要件を満たすか否かを審査官が判断することをいいます。中国でも、日本と同様に商標登録には審査を経る必要があります。

中国における商標登録出願と審査の流れと期間について、以下に解説します。

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早期審査の有無

商標の早期審査とは、一定の要件を満たす商標登録出願について、通常の審査よりも早期に審査を実施することを認める制度です。日本などの商標制度では認められています。残念ながら、中国では商標の早期審査制度はありません。

審査のフローチャート

中国の商標登録出願の審査は以下のフローチャートのように行われます。出願は、個別出願の場合、国家知識産権局商標局に行われます。国際登録出願(マドプロ出願)の場合、国際知的財産権機構(WIPO)から国家知識産権局商標局に国際出願の内容が通知され、審査が開始されます。個別出願と国際登録出願(マドプロ出願)の違いは以下の記事を参考にして下さい。

上記フローチャートに基づいて、それぞれの工程と期間について説明します。

中国商標審査のフローチャート

方式審査とは

方式審査とは、出願の内容が定められた方式規定に従って行われているかを審査することです。

書式に関する方式審査

出願の書式や記載事項、署名・捺印等の確認などの方式審査が行われます。一つでも不備があると、不受理通知書が発行されます。この期間は通常、1週間程度です。

指定商品・役務、商標見本に関する方式審査

商品・役務表記と商標見本等に不備があるかどうか審査が行われます。不備がない場合、出願費用の納付通知書が発行されます。納付後、当該商標出願は正式に受理され、受理通知書が発行されます。この期間は通常、1~2ヶ月です。

方式審査で不備があった場合には、補正通知書が発行されます。補正応答期間は30日間で、オンライン出願の場合は更に15日の送達期間が与えられます。

実体審査とは

実体審査とは、出願商標が先行商標と抵触するものでないか、識別力を有するものであるか、といった拒絶理由の有無を判断する審査のことをいいます。

商標局(審査官)は、商標登録出願書類を受領してから9ヶ月以内に審査を完了するべきことが定められています。現在のところ、平均審査期間(商標登録出願書類の受領から初歩登録査定もしくは拒絶査定が通知されるまでの期間)は約4ヶ月程度です。

初歩査定公告とは

初歩登録査定公告とは、審査官が拒絶理由が無いと判断した場合に行われる公告をいいます。初歩登録査定は同時に、出願人に通知されます。

異議申立期間とは

異議申立期間とは、初歩登録査定後3ヶ月間の期間で、第三者が当該商標登録出願に対して、異議申立を行える期間をいいます。審査で登録が認められていますが、異議申立によってその判断が覆される場合もあります。

設定登録公告とは

設定登録公告とは、異議申立期間経過後、商標登録出願が登録されることを公告するものです。ここで有効な商標権が発生することとなります。

登録証とは

設定登録後、同時に商標登録証が電子的に発行されます。出願人は商標登録証発行通知書を受け取り、それに記載された情報(URLとQRコード)に従って、中国商標網にログインして電子商標登録証を取得します。

拒絶査定と再審とは

実体審査で拒絶査定が通知された場合、出願人は通知を受け取った日から15日以内に再審を請求することができます。15日は短い期間ですが、再審請求してから3ヶ月間の証拠補充期間がありますので、再審をとりあえず行ってから提出証拠の準備を行うことも可能です。また、オンライン出願もしくは国際登録出願(マドプロ出願)の場合、さらに15日のみなし送達期間があたえられます。再審の審理期間は、現在のところ、6~8ヶ月となっています。

他人の先行商標、特に「横取り」商標、を理由とする拒絶理由への対抗策については、以下の記事を参考にして下さい。

行政訴訟とは

再審を行ってもなお、否定的な決定が出た場合に不服であれば裁判所に行政訴訟を提起することができます。

まとめ

中国で商標登録を行おうとすると、問題無くいけば、商標登録出願後7~9ヶ月後で商標権を取得することが可能です。中国でのビジネスを開始するスケジュールから逆算し、早めに商標登録出願手続を進めることをお勧めいたします。

費用は?

直接出願の場合、現地費用(現地の特許事務所・法律事務所、特許庁に支払う費用)と日本の特許事務所の費用で15万円~、マドプロ出願の場合、トータルで17万円~の費用が発生します。
※上記費用はあくまで弊所を通じて行う場合の参考費用で、区分数、商標の種類、為替レートなどで変動します。是非お見積もりのお問い合わせをください。マドプロ出願の場合、同時に出願する国が多いほど割安になります。

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この記事を書いた人

木村 純平

木村 純平

2人目の子供の誕生をきっかけに弁理士を目指してから、早くも20年が経過しそうです。商標から始まり、意匠、著作権、現在の事務所に来てからは特許、実用新案も手がけるようになり、それぞれの分野でクオリティを上げ、ユーティリティプレイヤーとして重宝されるよう精進しています。