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活動紹介

「外部活動報告」その5:日本弁理士会 記者説明会に参加しました

執筆者 : 長谷川綱樹

我々弁理士が所属する日本弁理士会では、定期的に「記者説明会」を開催していて、メディアの記者の方々に向けて、日本弁理士会会長の就任挨拶や活動報告、法改正の解説など行っています。この7月13日の同説明会では、日本弁理士会内の実務系委員会(貿易円滑化委員会、特許委員会、意匠委員会、商標委員会)の各委員長をスピーカーとして、法改正やトピックスに関する説明が行われました。私は商標委員会の委員長として、商標に関する発表を担当しました。 

厚生労働省が作成した「アマビエ」を用いたアイコン

記者説明会の発表テーマ

今回の法改正において、商標法関連で最も大きなものは「増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を、日本における商標権の侵害として位置付ける」というものがあります。実務的に大きな改正であり、商標法だけでなく、意匠法にも同様の改正がされた関係で、貿易円滑化委員会(萩原賢典委員長)が発表を担当しました。特許委員会(筆宝幹夫委員長)からは、救済制度(特許権の回復制度)の大幅緩和と審判口頭審理のオンライン化等について、意匠委員会からは、画像・建物・内装の意匠登録事例の紹介がされました。 

商標関連では、「個人輸入の商標権侵害化」以外に目立った法改正がなかったので、最近何かと話題になることが多い、商標出願と「炎上」をテーマに発表を行いました。 

商標出願の「炎上」について 

発表内容は、下記のような感じです。 

最近、商標出願が「炎上」することがネットやニュースで話題となることが増えてきました。他人の商標を勝手に出願したなど、「炎上」するのもしかたない、というケースもありますが、中には、これが「炎上」するのはちょっとかわいそうだな、というものも少なくありません。 

例えば、広告代理店の電通さんが「アマビエ」という商標を出願した件などは、立場上、出願せざるを得ない事情があったのだと私は理解しています。というのも、商標制度は「先願主義」といって、「早い者勝ち」が基本です。先に出願した人に権利が与えられ、その権利は「独占排他権」という非常に強いものです。しかも、「アマビエ」のような、誰のものかもはっきりしないような言葉は、誰のものでもない分、誰が商標出願してくるかもわからず、しかも、登録が認められるかどうかも不透明です。 

電通さんは、取引先と「アマビエ」の名称を使うキャンペーンを検討していて、当時はまだ商標登録されていなかったので、第三者が商標登録をする可能性を考慮して、キャンペーン中に権利侵害が発生する可能性もあり、出願を行ったという主旨の説明を行っていますが、確かに、広告代理店という立場からすれば、リスクヘッジとして商標出願することは致し方ないかなと思います。 

もちろん、人によっては「人のものを横取りするな!」と思うかもしれませんが、現在の商標制度では、出願しないと自分達を「守れない」わけなので、「横取りする」「独占する」つもりがなければ、そこまで批判されることもないのではないかと思います。実際、電通さんの説明からは、本来の目的は商標権の取得ではなく、権利侵害のリスク回避であり、早期に出願が取り下げられました。また、「炎上」により話題となったことで、結果的として、「アマビエ」商標は登録されない方向で判断されるようになったと考えることもできます(他の「アマビエ」出願は、今のところどれも登録されていません)。 

そこで、今後、商標出願の「炎上」について報道する際は、こうした商標法の設計・事情をご理解いただき、その出願人は「権利を独占するつもりがあるのか」など、出願の奥にある「出願人の意図」を汲み取っていただければありがたいです。 

20分と短い持ち時間で、詳しい説明を省いたところも多かったですが、こうした事例を紹介する中で、商標制度の正しい理解が進めばよいかなと思っています。 

追記(7/16):この発表が記事になりました。参加された記者の方にご興味を持っていただけたようで、うれしく思います。 「電通が炎上覚悟で『アマビエ』を商標出願した理由 弁理士が分析」(ITmedia NEWS:2021年7月14日付) https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2107/14/news057.html

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プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

 

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  • この記事を書いた人

長谷川綱樹

30歳になるまで、知財とは全くの別分野におりましたが、一念発起して弁理士となり、商標専門で現在に至ります。 そのせいか、法律よりも「人の気持ち」のほうに興味があります(いいのか悪いのかわかりませんが)。 商標は事業活動と密接に関係していて、関わる人々の「気持ち」が大きく影響します。「気持ち」に寄り添い、しっかりサポートできる存在でありたいと思っています。 出願案件では「取得する権利の最大化」を目指して、商標のバリエーションや将来の事業展開の予定など、丁寧にお話を伺います。 係争案件では「いかに円満に解決するか」を重視して、目先の勝ち負けだけでなく、将来的な問題解決を意識して対応して参ります。 経歴など詳しくはこちらを

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