【商標制度解説・国内編】商標審査便覧の改定~家紋からなる商標登録出願の取扱い ~

商標と家紋の問題については、過去のブログでもとりあげていますが、今回、家紋からなる商標が出願された場合、審査においてどのように取り扱われるか、という点が商標審査便覧に追加されました。

「水戸徳川家の家紋」商標登録問題の結果 - 家紋の商標登録の是非について -

頂きものの使い方としてはいかがなものか。 - 家紋の商標登録の是非 -

なお、商標審査便覧とは、商標の審査等の統一性を保つため、特許庁が運用基準等を取りまとめたものです。今後は、この運用に則って統一的な判断がなされます。

背景事情

家紋と言えば、水戸黄門の「この紋所が目に入らぬか」でお馴染みの「三つ葉葵」や最近の大河ドラマで注目された真田幸村の「六文銭」のような武家の家紋を思い出す方が多いと思いますが、江戸時代に入ると武士だけでなく苗字の公称を禁止されていた庶民が家の標識として家紋を使用するようになり、一般的に使用されるようになったそうです。

人気のある家紋は多くの家や商売の屋号として使われるようになり、現在でも一定の商品に決まった家紋が一般的に使用されていることがあります(例えば、貸衣装の留袖に使われる「五三の桐」など)。このような紋はもはや特定人の独占には適さないため、商標登録を認めるべきではないでしょう。

また、皇室の「菊の御紋」や警察バッジのマークに使われている「旭日章(桜の代紋)」など、家紋が有名な公的機関・公益団体の象徴として利用されている場合もあります。こうした場合も、なんら関係のない一般私人や企業が商標登録するのは問題があります。

よくあるのが、NHKの大河ドラマなどで有名に成った武将の家紋を関係のない一般私人や企業が商標登録しようとする例です。こうした家紋は特定の商売で使用されていることが少ないので、つまり商標として使用されていることが少ないので商標登録されておらず、結局、早い者勝ちで商標登録できてしまい、話題性に乗じて地域興しなどを目論む地方自治団体とトラブルとなったケースが散見されました。

そこで、家紋の中でも上記のような問題が生じうる「伝統的な家紋等(戦国時代の武家の家紋、神紋、社紋、寺紋、宗紋等)」について、審査におけるある程度明確な判断基準を設けておこうというのが、今回の便覧記載の目的となります。具体的には、家紋に係る商標が出願された場合、ケースによって下記の条文に該当することになりました。

適用条文

家紋の類型に応じて、適用される条文が整理されています。以下、表のとおりです。

適用条文 理由
4条1項6号 公益団体の標章又は公益事業を表す標章として使用している家紋であって著名なものと同一又は類似する場合
4条1項7号 周知・著名な家紋を使用した公益的な施策等に便乗しようとする意図があるなど登録が社会的妥当性を欠くような場合
4条1項10号 他人の業務にかかる商品等を表示するものとして周知な家紋からなる商標と同一又は類似の場合
4条1項15号 他人の業務にかかる商品等を表示するものとして周知な商標と混同を生じるおそれがある場合
4条1項19号 他人の業務にかかる商品等を表示するものとして周知な家紋からなる商標と同一又は類似、かつ、不正の目的がある場合
3条1項5号 出願された家紋からなる商標が「○」や「×」などの単純な図形を表した極めて簡単、かつ、ありふれた標章と認識される場合

家紋にもいろいろあって、3条1項5号に該当する例として、「 」「」が挙げられています。これらは「極めて簡単、かつ、ありふれた」ものと判断されます。
(出所:特許庁「商標審査便覧 42.107.06 家紋からなる商標登録出願の取扱い」

真田幸村の六文銭「」も図形として単純なものですが、商標登録(登録第2647105号、商標権者:株式会社ゆたかや)されている例もありますので、このくらい単純でない家紋であれば登録の可能性があるということでしょう。

一方、軍師黒田勘兵衛が使用していた石餅紋「」もかなり単純な図形からなる家紋ですので、この規定に該当するかもしれません。

 

異議申立・審決例

参考までに、関連する事件を紹介します。今回、家紋について審査便覧に追加されるきっかけとなったであろう事件がこちらです。

【異議2016-900059】

水戸黄門で有名な「三つ葉葵」の家紋が争いの対象となった例で、水戸で伝統芸能を上演する商標権者(株式会社ヤナギヤ)の商標登録「」(登録番号第5810969号)に対し、公益財団法人徳川ミュージアムが異議を申し立て、商標法4条1項15号、6号、19号、7号の主張が全て認められ、登録が取り消された例です。結局は、申立人が徳川家のものとして著名な引用商標を使用することの正統性が認められました。

 

また、「真田丸」で有名となった家紋「六文銭」ですが、大河ドラマで話題になる前から商標出願されていたようです。

【不服2011-20371】

真田幸村の六文銭の家紋が争点となった例で、出願商標「」(商願2009-71400)が審査において4条1項7号で拒絶になったのですが、審判では、当該商標が必ずしも歴史上の人物としての「真田幸村」を指称するものとは言えない、として登録が認められました。

有名な家紋の登録例

調べてみますと、今回の審査便覧改訂前から、有名な武将の家紋が関係のなさそうな企業や個人に登録されている例は数多くあるようです。上述の異議申立事件で取り消された商標権者も他に「」「」と似たような登録を持っていますし、六文銭の家紋を含む商標も6件程それぞれ異なる商標権者が登録しています。

このような有名な武将の家紋は確かに特定の武将を思い出させるものですが、商標として、すなわち、商品やサービス、誰かの業務と関連づけて使用されるものではありません。したがって、商標としては有名ではないため、関係の無い企業や個人が結構簡単に登録できてしまう現状があるのかもしれません。

ただし、今回の審査便覧を新しく追加した特許庁の意図からすれば、今後の審査においてある程度有名な家紋の商標登録は難しくなるものと思います。

 

プライムワークス国際特許事務所 弁理士 木村純平

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