”小田原のかまぼこ”を名乗っていいのはどこの誰まで!?

以前、地域団体商標「小田原かまぼこ」「小田原蒲鉾」の商標権を有する小田原蒲鉾協同組合が、食品会社「有限会社 佐藤修商店」(神奈川県南足柄市)とその関連会社「株式会社 小田原吉匠総本店」(神奈川県小田原市栢山)に対して商標権侵害訴訟を提起した件をご紹介しましたが、先週末11月24日に横浜地裁小田原支部で判決が出ました。結果は請求棄却、組合側の請求は認められませんでした。
「『小田原かまぼこ』隣接市業者もOK、『地域に歴史的つながり』 横浜地裁小田原支部判決」(産経ニュース:11月24日付)
http://www.sankei.com/affairs/news/171124/afr1711240044-n1.html
「商標出願前から使用認定 小田原かまぼこ訴訟で地裁支部判決」(東京新聞TOKYO Web:11月25日付)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201711/CK2017112502000159.html

 

被告側はいつから商標を使っていたのか?

争点は「被告側の使用に先使用権が認められるか」です。

地域団体商標における先使用権は、地域団体商標が出願される以前からその商標を不正競争の目的なく継続して使っている場合は引き続き同商標の使用を認めるというものです。つまり、(1)被告側が「小田原蒲鉾」等の商標を地域団体登録商標「小田原かまぼこ」の出願日2010年4月14日以前より継続して使用しているか、そして、(2)被告側の使用に不正競争の目的がないか、で判断されます。これら(1)(2)の要件を満たせば、被告側に先使用権が認められます。

判決では、まず(1)について2010年4月以前から被告側が「小田原かまぼこ」の表示を使用していたと認定しています。ここまでは原告側・被告側とも想定内でしょう。

 

南足柄製の蒲鉾を「小田原かまぼこ」と称することの是非

次の要件は「(2)被告側の使用に不正競争の目的がないか」ですが、こちらはどうでしょうか。

そもそも、「小田原かまぼこ」というからには小田原で製造されていると考えるのが自然です。もし内陸部の厚木で製造された蒲鉾に「小田原かまぼこ」と表示すれば産地偽装であり、小田原蒲鉾の人気・信用に便乗する行為となります。では、南足柄市で製造された蒲鉾に「小田原かまぼこ」と表示するのはどうでしょうか?「小田原」と「南足柄」を別地域と考えれば産地偽装ですが、そう簡単にはいかないようです。

というのも、実は小田原の蒲鉾製造が始まった江戸時代、両市は同じ小田原藩に属していたそうです。明治に入って足柄上郡が編成されたことで南足柄市は「小田原」から離れますが、小田原で蒲鉾の製造が盛んになってから長い間、どちらも同じ「小田原」に属していたわけです。こうした経緯を考えると、今の地理感覚で判断するわけにもいかないでしょう。

また、地域団体商標制度は2007年に施行された新しい制度で、以前はこうした「地域名+商品名」のみからなる商標の登録は認められていませんでした。そのため、制度導入前からその商標を「正しく」使用していた人(「地域内アウトサイダー」といいます)には先使用権を認めるなどして、商標権の効力範囲に制限をかけているわけです。

さて、裁判所は被告側の商標使用を認めましたが、どのような判断の元に被告側の使用を「お咎めなし」としたのでしょうか。

 

裁判所が被告側の使用を認めた理由

判決では、商品に地域名を使用できる範囲について、「商品が当該地域と歴史、文化などのつながりがあるか考慮すべき」と指摘し、(a) 関東大震災以降は山口県や静岡県などで水揚げされた魚が大量に使われるようになり、原材料の点では地域との関連性がほとんど失われたこと、(b) 江戸時代は蒲鉾製造業者が小田原市に集中していたが、昭和以降に県外に移転する者も出てきたこと、などを挙げて、「小田原かまぼこ」の「小田原」には市周辺の地域も含まれると認定しました。そして、南足柄市は江戸時代に小田原藩の支配領域であり、「かまぼことつながりのある市周辺地域」であるとしました。地域団体商標の需要な構成要素である「地域名」の意味合いを、歴史的経緯を考慮して柔軟に判断してよいことを示しました。

そして、被告側が「小田原かまぼこ」の表示を使用することに他人の信用を利用する目的はないと判断しました。逆に言えば、原告側組合の主張内容は被告側にフリーライド(信用へのただ乗り)の意図があることを立証できなかったことを意味します。

原告側はこの判決を受けて早くも控訴する意向を示しており、控訴審でどのような主張を展開するのか興味深いところです。原告側としては「いかに被告側のフリーライド(信用へのただ乗り)の意思を示すことができるか」が鍵となるでしょう。それには、被告側がいつ頃から蒲鉾の製造販売を始めたのか、いつから「小田原かまぼこ」と表示するようになったのか、原告側組合との関係はどうなのか、といった当事者同士の関係性が大きく影響することでしょう。引き続き経過を注視したいと思います。

 

<ブランドの保護は、商標専門弁理士へ!>
プライムワークス国際特許事務所 弁理士 長谷川綱樹

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